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大学・研究所にある論文を検索できる 「Relationship between psoas muscle index and long-term survival in older patients aged ≥ 80 years after endoscopic submucosal dissection for gastric cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Relationship between psoas muscle index and long-term survival in older patients aged ≥ 80 years after endoscopic submucosal dissection for gastric cancer

伊藤, 信仁 名古屋大学

2022.07.26

概要

【緒言】
日本では早期胃癌に対し、内視鏡的粘膜下層剝離術(Endoscopic submucosal dissection; ESD)が幅広く行われている。高齢化の進行に伴い、高齢者の早期胃癌患者に対し、ESDを行う機会が増えている。しかしながら、高齢早期胃癌患者では治療後に他病死される患者も多く、早期胃癌に対する ESD 後の予後に関連する因子についてはほとんど分かっていない。psoas muscle index(PMI)は第 3 腰椎の CT 画像の腸腰筋面積から算出される値で、サルコペニアの指標とされており、いくつかの疾患の予後に関連することが報告されている。今回、PMI を含めた患者因子において、80 歳以上の早期胃癌患者に対する ESD 後の長期生存に関連する因子を調べることを目的とした。

【対象と方法】
2006 年 1 月から 2016 年 12 月までに当院で ESD を施行した 80 歳以上の早期胃癌患者のうち、治療前に腹部 CT を撮影した 88 例を対象として後方視的に検討した(Figure 1)。治療後の転帰を 2019 年 12 月に調査し、Kaplan-Meier 曲線により生存曲線を求めた。胃癌の ESD 適応、根治性は胃癌治療ガイドライン第 4 版(2014 年)に従った。PMIは既報を基に、治療前の腹部 CT における第 3 腰椎の CT 画像の腸腰筋面積を測定し算出した。
年齢、性別、全身状態(performance status [PS]、body mass index [BMI]、内服数、栄養数(Prognostic Nutritional Index [PNI])、腫瘍の根治性、PMI、チャールソン併存疾患数(Charlson Comorbidity Index [CCI])の各因子を既報の基準値を基に 2 群に分けて、COX 回帰分析による多変量解析により、ESD 後長期予後に関連する因子を検証した。さらに、多変量解析で同定された ESD 後予後予測因子を用いて、3 年・5 年生存率を比較検討した。

【結果】
患者背景を Table 1 に示す。年齢中央値は 82 歳で約 7 割が男性であった。PNI の中央値は 46 で、CCI の中央値は 1 であった。治癒切除が 71 例で、非治癒切除が 17 例であった。全患者の生存曲線を Figure 2 に示す。ESD 後経過観察期間中央値は 5.4 年であり、3 年・5 年生存率は 88.3%、73.9%であり、観察期間中の死亡者数は 34 例あった。主な死因は肺炎 9 例、他臓器癌 9 例、悪性リンパ腫 2 例であり、現病死は 1 例であった。疾患特異 5 年生存率は治癒切除例で 100%、非治癒切除例で 90%であった。 PMI の中央値は男性 4.89(cm2/m2)、女性 3.85(cm2/m2)であった。また、PMI と年齢の有意な相関は認めなかった(Figure 3a、b)。
COX 回帰分析による多変量解析により予後予測因子として、PMI 低値(hazard ratio [HR]、2.891; 95% confidence interval [CI]、1.109-7.535; P = 0.030)および CCI 高値(HR、 1.873; 95% CI、1.136-3.088; P = 0.014)が同定された(Table 2)。
PMI 値により 2 群(Low PMI、High PMI)に分けた患者背景を Table 3 に示す。年齢、CCI、PNI 値は有意差を認めなかった。Kaplan-Meier 曲線を作成し log-rank test で検定すると ESD 後長期予後に有意差を認めた(Figure 4a)。
CCI 値により 2 群(Low CCI、High CCI)に分けると、Low CCI 81 例で、High CCI 7例であった。Kaplan-Meier 曲線を作成し log-rank test で検定するとこちらも ESD 後長期予後に有意差を認めた(Figure 4b)。更に Low CCI81 例のみを PMI 値により 2 群(Low PMI、High PMI)に分けた患者背景を Table 4 に示す。Low CCI 81 例を対象にした場合でも PMI により分けた 2 群間で長期予後に有意差を認めた(Figure 4c)。

【考察】
本報告では、80 歳以上の早期胃癌患者を対象に ESD 後の長期予後に関連する因子を調べた。ESD 後の 5 年全生存率は 73.9%であった。観察期間内に死亡した 34 例のうち、胃癌死は 1 例であり、他病死が 33 例であった。COX 回帰分析による単変量解析では腫瘍の根治性は早期胃癌 ESD 後の死亡に関連する独立した因子として同定されなかった。COX 回帰分析による単変量解析、多変量解析により、PMI 低値と CCI 高値が、早期胃癌 ESD 後の死亡に関係する独立した因子であった Kaplan-Meier 曲線を作成し log-rank test で検定すると、PMI 高値群は PMI 低値群に比べて有意に予後が良く (P=0.026)、CCI 高値群は CCI 低値群に比べて有意に予後が悪かった(P=0.002)。
80 歳以上の早期胃癌患者では、治療が生存に寄与するかどうかを評価することが特に重要である。ESD は手術よりも侵襲の低い治療であるため、PMI が低い高齢者でも ESD を施行することもあるだろう。今回の研究では、既報と同様に早期胃癌 ESD の根治性は、高齢患者の ESD 後の長期生存には関連していなかった。PMI が低い患者の 30%、及び CCI の高い患者の 3 分の 2 が 5 年以内に死亡した本検討の結果を考慮すると、これらの患者が ESD 後に非治癒切除であっても、追加手術を選択しないことは許容できるかもしれない。CCI が低い患者の早期胃癌 ESD 後の予後が良好であるとの結果は既報と同様であった。また、PMI の高い患者の早期胃癌 ESD 後の予後が良好なのは他疾患における報告と同様であった。今回の研究では既報とは異なり、PNI は早期胃癌に対する ESD 後の生存に関連する独立した因子として同定されなかった。これは、既報と年齢や CCI などの患者コホートの違いによるものと考える。CCI の高い患者の割合は 10-20%と多くないため、実臨床においては本報告の PMI の方がより多くの患者に適用できるかもしれない。本研究は 80 歳以上の高齢者における PMI と早期胃癌 ESD 後の長期生存率の関係を調べた初めての報告である。
本検討は単施設の後方視的な検討であり、比較的症例数も少なかった。また、ESDを行っていない患者が含まれていないため、選択バイアスが存在する可能性がある。最後に、サルコペニアの厳密な診断に不可欠な筋力の直接的な評価を行っていないため、筋力の測定を含めて、多施設での前向き観察研究を行う必要がある。

【結語】
本研究では、80 歳以上の早期胃癌患者において、従来の CCI 低値に加えて、PMI 高値(男性 6.36 以上、女性 3.92 以上)が、早期胃癌に対する ESD 後の長期生存に関連する新たな予測因子であることが示された。

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