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書き出し

布の賦形性と曲面形成技術を考慮したなめらかな曲面を持つ衣服設計と評価に関する研究

金, キョンオク 信州大学

2021.03.01

概要

4版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 14 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 若手研究(B)
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16K16255
研究課題名(和文)布の賦形性と曲面形成技術を考慮したなめらかな曲面を持つ衣服設計と評価に関する研究

研究課題名(英文)Design of clothing considering fabric surface fitting ability

研究代表者
金 キョンオク(Kim, KyoungOk)
信州大学・学術研究院繊維学系・准教授

研究者番号:30724885
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

1,600,000 円

研究成果の概要(和文):しわなくなめらかな曲面を持つ衣服の合理的な設計技術の構築を目的とする.織物の
賦形性(しわなく曲面を形成する能力)と衣服の曲面形成技術の関係を調べる.織物の賦形性の評価方法とし
て,織物の曲面形成能の評価法として球面をしわがないように包める布の面積を測定する方法を新たに考案し
た.また,なめらかな曲面を持つ衣服身頃モデルの構築を行い,曲面造形する際にくせとり(伸ばし,いせ込
み)で操作する局所的変形を定量的に示す作業指針の構築方法を検討した.構築した衣服身頃モデルを多様なサ
イズに3次元変形させ,パターンを構築し,くせとり指示指標を求めた.賦形性の異なる布で製作実験を行い、
提案手法の妥当性を検証した.
研究成果の学術的意義や社会的意義
本研究の結果として,なめらかな曲面をもつ衣服のモデル化が行われ,これを用いた美しい衣服の設計が効率的
に行なわれる.これまで熟練縫製者の技能に依存していた曲面形成法に対して定量的な設計が可能となった.被
服材料学的には衣服の部位ごとに必要な織物の賦形性が明らかになり,また,その評価法が確立された.
本研究によりこれまで経験に頼ってきた高付加価値衣服製作技術が工学的検証と理論的理解を通じて,再構築さ
れる点で,学術的な意義がある.また,成果を実際の生産現場での設計製作や自動化に応用することで,高付加
価値衣料の設計・生産技術の進歩に貢献できると考えられる.
研究成果の概要(英文):The purpose of this research is to construct design technology of clothing
without wrinkles. We investigated the relationship between the fabric surface fitting ability (the
ability to form an undevelopable surface without wrinkles or darts) and the sewing and ironing
technology to make a three-dimensional clothing shape. A new measurement method for the fabric area
that curves the spherical surface without wrinkles was proposed. A pattern constructing method was
developed taking into account the shear angle which quantitatively indicates the local deformation
of the clothing. Moreover, guidelines for sewing and ironing to make clothing was suggested. An
A-line dress model was constructed and was transformed into various sizes of model. The patterns and
the constructing guidelines were obtained using the developed method. The clothing was successfully
made with the patterns and guidelines. Therefore, it was able to make clothing without wrinkles
using the proposed methods.

研究分野: 衣服学
キーワード: 布の賦形性 曲面形成技術 なめらかな曲面を持つ衣服設計 せん断角度



式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)

1.研究開始当初の背景
1)国内衣料品の輸入浸透率は 95%を超え,国内アパレル産業は縫製品質の向上や,日本製の
テキスタイル、染色、縫製を行なう純国産,オーダーメイドなど高付加価値製品の生産に力を
入れている.縫製品質の向上にはシームパッカリング(縫い目しわ)や,生地に合わせた縫製
技術,形態保持性の評価などの研究が行なわれている.オーダーメイドに関しては,体型に適
合したパターン原型(シンプルな人体型成型衣服)の設計や着心地の評価に関する研究が多数
行われ,近年は3次元 CAD を用いた設計技術も国際的に研究が進んでいる.一方,衣服の基
本価値である美しさは,仕立て映えとして評価され,その要因として,衣服の曲面がなめらか
であることが指摘されている.仕立て映えする生地の評価,芯地による布物性の制御や被服心
理学的には,日本が中心的に研究を進めているが,なめらかな曲面を持つ衣服の設計理論は確
立されていない.特に,衣服設計と生地の性能を統合的にとらえた研究は国際的にも行なわれ
ていない.
2)国内外のジャケットの外観比較を行い,欧州製品が日本製品に比較して,なめらかな曲面
を有し,エレガントと評価されることを示した.また,ジャケット外観評価の研究において,
なめらかなウエストのくびれとしわのない曲面が高評価の要因であることを明らかにした.こ
れらの設計・製作過程を詳細に調査・観察した結果,パターン設計は,布の変形を考慮して行
なわれており,熟練縫製者は造形意図を理解した上でアイロン処理と縫製を行なっていた.し
かしながらその造形意図は設計図であるパターン上には明示されておらず,なめらかな曲面を
持つ衣服の設計・製作は,良いパターンの模倣や技能者の裁量に依存している.なめらかな曲
面を持つ衣服の設計技術の構築により,デザインに合わせた高付加価値の衣服を合理的に設計
することが可能になる.衣服の曲面形成にはせん断,引張,圧縮など,布の物性が大きく影響
しており,特に布の賦形性や異方性を考慮した上で,縫製時の曲面化方法をパターン上に定量
的に示す必要があり,これまでに実現されていないことから本研究の発想に至った.
2.研究の目的
本研究では 1)なめらかな衣服曲面を3次元モデル化し,2)織物のせん断および伸長・圧縮ひず
みの造形上の限界を織物の賦形性として定義し,その評価法を提案する.3)衣服形状と織物の
賦形性,曲面形成の関係を理論的・実験的に明確にする.4)なめらかな曲面を形成するための
衣服設計技術を構築することを目的にする.これにより,パターンと曲面化に必要な変形が定
量的に設計でき,衣服の設計技術が格段に進歩する.
1) なめらかな曲面を持つ衣服形状のモデル化を行う.モデル化とは一般に抽象化のことである
が,本研究では基準となる衣服の曲面をモデルとし,これをサイズやデザインの異なる衣服に
変形可能とする.なめらかな曲面を持つ衣服には,ジャケット,ドレス,コート,パンツなど
がある.本研究では,なめらかで複雑な曲面を持つ女性用のジャケットを対象とする.ジャケ
ットの身頃,衿とラペル,袖をパーツに分け,それぞれモデル化する.モデル化において物体
の形状を決定する方法には,
線のみで表すワイヤフレームモデル,
面で表すサーフェスモデル,
中身が詰まったものとして表すソリッドモデルがあるが,パターン作成に適する三角形ポリゴ
ンサーフェスモデルを用いる.作成したモデルのパーツを,異なるサイズやデザインの衣服に
変形する方法と,パーツをしわなく接合するモデルの境界形状を明らかにする.
2)織物のせん断および伸長・圧縮ひずみの造形上の限界を織物の賦形性として定義し,その評
価法を提案する.ジャケットにおけるなめらかな曲面は,主として身頃,袖,衿とラペルに分
けられる.円筒や円錐などの可展面であれば,織物を伸縮せずに曲面を形成できる.たとえば,
身頃は肩部,胸部,腰部からなるが,いずれも非可展面である.非可展面を形成するためには
織物の伸縮が必要である.曲面を形成する際には,アイロンにより織物の伸縮とその固定を行
なう.これを「くせとり」という.織物はたて・よこ糸方向には伸縮しにくく,斜め方向には
伸びやすい異方性材料である.斜め方向に伸びる際には伸びと直交する方向に縮む.縮む方向
においてはしわが発生する.その限界が織物の賦形性である.衣服設計においては,織物の賦
形性をあらかじめ求めておく必要がある.しかしながら,仕立て映えと物性の関係を統計的に
結び付けられているのみで,その幾何学的・物理的意味は明確でなく,評価法も確立されてい
ない.本研究では衣服設計に必要な織物の賦形性の材料力学的な定義を行い,その測定・評価
法を提案する.
3)衣服形状と織物の賦形性,曲面形成の関係を理論的に明確にする.基準となるジャケットに
おける布の変形を定量測定し,各パーツにおける,糸方向およびバイアス方向の最大・最小ひ
ずみおよびその分布を求める.各種織物に対して,それらの変形を与える実験方法を検討し,
変形を与えた際のしわ発生および型くずれの有無を評価し,賦形性の指標となる物性を検討す
る.しわの発生した織物を用いて,同じ型紙でジャケットを製作した場合に,なめらかな曲面
が形成できるかどうかを確認し,賦形性の指標の妥当性を明らかにし,評価法を確立する.
4)なめらかな曲面を形成するための衣服設計技術を構築する.必要な賦形性は衣服の曲面と裁
断線および布目線(衣服上での織物の糸方向)に依存すると考えられる.これを確認する.衣
服の型紙が与えられた場合,縫製技能者のくせとりは,経験的に裁断線の長さの変化または,
裁断線の曲線を直線化することを指標として行なわれている.しかし,なめらかな曲面を持つ
衣服のパターンを異なるサイズや,デザインに対して展開する際には,試作の繰り返しによる
確認が必要である.衣服の曲面と裁断線および布目線が与えられた場合に,必要な織物の賦形

性を定量的に得ること,得られたパターンの織物を縫製時に変形させるための定量的な指示を
与えることが必要である.これらを可能とする新たな衣服設計法を提案する.提案方法を用い
て,衣服モデルを作成し,パターンおよび衣服を製作し,手法の妥当性を検討する.
3.研究の方法
1)織物の賦形性の評価方法として,織物のせん断および伸長・圧縮ひずみ,しわなく曲面が形
成できるせん断変形の限界量,面内圧縮限界を計測する.新しい測定法を用いて,低張力下で
の織物の表面適合性を調べた.せん断座屈の限界角,最大せん断角は,表面のフィッティング
能力として定義される.最大せん断角を推定するために,しわなく球面を覆っている織物の球
冠の半径を測定した.最大せん断角と半径との関係を数値的に計算した.ファブリックの表面
適合能力を決定するための新しい試験装置を構築した.実験用ジャッキにアルミ半球をセット
し,中央に様々なサイズの穴を有するアクリル板を備えた表面適合性を測定する(Figure 1)

19 種類の織物試料と 3 種類の異なる半径の半球を使用した.最大せん断角と機械的および構造
的性質との関係を調べた.
a
b
d
a

b

e

c
f

a : sample
b : acrylic board
c : frame
d : hemisphere
e : stand
f : laboratory jack

Figure 1. Schematic diagram of the experimental equipment[論文発表①].
2)なめらかな曲面をもつ A ラインのドレスを選択し,身頃,衿,袖をパーツに分け,それぞれ
の形状とシームラインを 3 次元スキャナにより,取得し,3D 基準モデルを作製する.A ライン
のドレスとドレスの形状を対象として選択した.各3次元形状は,3次元スキャナ(ボディラ
インスキャナー、浜松ホトニクス)を使用して得た.スキャンしたドレスデータのボタンと襟
を削除した.スキャンした 3D データから,等間隔の断面寸法(ポリラインモデル)を求め,元
のボディとドレスの間の原点からの横断面における前面、背面および幅の最大距離を倍率とし
て求めた.別の服装形態を標的体として選択した.ターゲットボディは,バスト,ウエスト,
ヒップラインの位置が元のボディの位置に合うように垂直方向に変形され,新しいドレスモデ
ルを構築するために倍率を用いて変形した.倍率を適用した後,ターゲット本体は垂直方向に
初期状態に変形した.ポリラインモデルをポリゴンモデルに変換した.新しいドレスモデルを
使用して、3D パターン作成システムを使用してドレスパターンを開発した.経糸方向と緯糸方
向の布目線は,ドレスと同じ位置に設定した.同様の切断線も設定した.仕上がりのパターン
と綿 100%の生地を使って,ドレスを作成した.異なるサイズの衣服に変形し,パーツをしわ
なく縫製するモデルの境界形状を調べた.
3) 衣服曲面の布の変形を定量測定し,
パターンを立体化するために必要な織物変形量を計測す
る.衣服モデルを織物でカバーするシミュレーションプログラムを用いて,織物のせん断

変形角度を求めた.また,パターン上の仕上がり線の長さの違いを求め,縫製指示書を作
成し,ドレスを製作した.
4)衣服形状と織物の賦形性,曲面形成の関係を理論的・実験的に明確にし,なめらかな曲面を
形成するための衣服設計技術を構築する.構築手法を用いて衣服を設計・製作し,手法の妥当
性と有効性を検討した.
4.研究成果
1) 新しい測定法を用いて,最大せん断角(θmax)と機械的および構造的性質との関係を調べた
結果,厚さ,交絡点密度およびせん断剛性は,表面適合能力と高い相関を示した.これらの特
性を用いて,表面フィッティング能力のための新しい予測式(1)を提案した.

θmax = 7.89+ 6.95 (Thickness / G) –0.45(interlacing point density) (1)
予測値は測定値と良好な一致を示した(Figure 2)
.したがって,提案手法と予測式は,織物の
表面適合性を評価するのに有用である.また,球面半径が表面フィッティング能力に及ぼす影
響についても明らかにした.

30

Predicted θmax(°)

25
20
15
10
5
0
0

5

10

15

20

25

30

Measured θmax(°)

Figure 2. Comparison between predicted and measured θmax

[論文発表①].

2) なめらかな曲面を持つ衣服身頃モデルの構築を行い,曲面造形する際にくせとり(伸ば

し,いせ込み)で操作する局所的変形を定量的に示す作業指針の構築方法を検討した.な
めらかな曲面を持つ衣服として,曲面造形に優れたフォーマルドレスを設定・購入し,基
準ドレスとした.基準ボディを定めてドレスをしわがないように着用させて,3D スキャ
ンを行い,着用形状の3D モデル化を行った.3D モデルにおける布の変形を定量測定す
るため,布目線を与えると,曲面形成に必要なせん断変形を算出するソフトウェアを作成
し,モデルの3D 曲面全体にわたり,曲面形成に必要なせん断角度の大きさの分布,曲面
および裁断線上での最大値等を求めることができた.また,3D モデルに,裁断線,布目
線を与えドレスのパターンを再現することもできた.せん断角度の分布と平面パターン上
での長さと3D モデル上での長さの差を用いて,必要な局所的変形を造形するための縫製
時の作業指針を定量的に示すことができた.シーチングを用いて,作業指針に従ってくせ
とり操作と縫製を行った結果,なめらかな曲面を持つドレスを再現することができた.構
築した基準ボディのなめらかな曲面を持つ衣服身頃モデルを変形し,多様なサイズの衣服身頃
モデルの構築を行った.基準ボディと基準衣服のモデルの水平断面間の倍率を用いて,
バスト,
ウエスト,ヒップをそれぞれ大小に変形した 3 次元衣服モデルを構築した.モデルに裁断線,
布目線を与えパターンを作成した.裁断線と布目線は元のドレスのものを参考に曲面を平面で
切断した線を用いた.作成したソフトウェアを用いて曲面形成に必要なせん断変形を算出し,
サイズ変化時のせん断変形とパターンの仕上がり線の変化を確認した.バスト周辺と肩甲骨周
辺,脇下で大きいせん断変形と仕上がり線の差が生じることが確認された.せん断変形角度と
各パターンパーツの仕上がり線の差を,織物を縫製時に変形させるための定量的な指示(縫製
指示書)として用いた.せん断変形はくせとりにおける伸ばし,仕上がり線の差はいせ込みの
指標になる.得られたパターンと縫製指示書を用いて,2 種類の生地でドレスを製作した.な
めらかな曲面を持つドレスを製作することができ,提案した手法の妥当性が検証できた.
5.主な発表論文等
〔雑誌論文〕
(計 1 件)
①KyoungOk Kim, Tomoya Suzuki, Masayuki Takatera, Measurements and prediction of fabric
surface fitting
ability
under
low
tension, Textile
Research
Journal,
88(12),1413-1425,2018, 査読有
https://doi.org/10.1177/0040517517700201
〔学会発表〕
(計 3 件)
①KyoungOk Kim, Koichi Hirabayashi, Masayuki Takatera, Patternmaking of individualized
A-line dress using computerized 3D draping method, International Society of Affective
Science and Engineering 2019(ISASE 2019),1-B-4, 2019.03.17-18, KOGAKUIN University
Shinjuku Campus, Tokyo
②平林 晃、金 炅屋、高寺 政行,個人対応ワンピースの 3D 設計,14 回日本感性工学会春季大
会, 1S04,2019 年 3 月 7 日∼8日,信州大学繊維学部,上田
③物部 愛,
金 炅屋,
高寺政行,ゆとりの変化に伴うジャケットのひずみ計測,
平成 29 年度 繊
維学会秋季研究発表会,2017 年 11 月 1 日(水) ∼ 2 日(木),フェニックス・シーガイア・リゾ
ート,宮崎県
6.研究組織
(1)研究分担者
なし

(2)研究協力者
研究協力者氏名:高寺 政行
ローマ字氏名:Takatera Masayuki
※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

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