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大学・研究所にある論文を検索できる 「Oncologic Reappraisal of Bile Duct Resection for Middle-Third Cholangiocarcinoma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Oncologic Reappraisal of Bile Duct Resection for Middle-Third Cholangiocarcinoma

寺境, 宏介 名古屋大学

2021.07.15

概要

【緒言】
 胆管癌は局在に応じて肝内、肝門部領域、遠位に大別され、さらに遠位胆管癌は中部および下部胆管癌に分類される。遠位胆管癌に対する標準術式は膵頭十二指腸切除術だが、中部胆管癌に対する代替術式として胆管切除術が挙げられる。胆管切除術は安全な術式とされ、重度の併存疾患を有する場合や高齢である場合など、高リスク患者において検討される。過去の研究によると中部胆管癌の 94%に胆管切除術を施行されていたが、近年は 1.5〜2.7%まで頻度が低下している。
 中部胆管癌は全胆管癌の約 13%を占めるに過ぎず、壁内あるいは壁外浸潤しやすい特徴からも、上部あるいは下部胆管癌に合わせた術式が選択されてきた。そのため中部胆管癌に対する胆管切除術の臨床的意義は、依然として不明瞭なままである。これまでにも胆管切除術と膵頭十二指腸切除術を比較検討する研究が散見されてきたが、臨床的意義や術式選択に関する基準は明示されていない。本研究の目的は中部胆管癌に関して臨床病理学的な評価を行い、胆管切除術のための指標を示すことである。

【対象及び方法】
 2001 年 1 月から 2010 年 12 月までの期間に、腫瘍外科学講座関連 32 施設において、中部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術もしくは胆管切除術を施行した症例を後方視的に収集した。中部胆管は肝外胆管のうち、膵臓上縁から胆嚢管合流部までと定義した。上部胆管癌は肝切除術が選択されるため本研究には含めず、また膵内胆管や左右肝管合流部に浸潤を認める症例も除外した。
 術式選択は施設毎のガイドラインに従って決定し、いずれの手技も標準的な手順で行った。胆管肝臓側の切離は右肝動脈の高さ、もしくは必要に応じて肝門側を追加した。また胆管切除術では膵上縁にて胆管を切離し、こちらも同様に膵内胆管まで切離を追加した。肝十二指腸間膜および総肝動脈周辺のリンパ節郭清に加え、膵頭十二指腸切除術では、膵臓周囲および上腸間膜動脈周辺を郭清した。
 摘出標本の胆管を長軸方向に開放し、腫瘍長径と腫瘍から断端までの距離を計測した。病理組織スライドはすべて再評価し、また所見は胆道癌取扱い規約および米国がん合同委員会の病期マニュアルに従って分類した。胆管断端に浸潤癌を認めた場合を断端陽性と定義し、一方で上皮内癌を認めた場合は予後に影響しないため陰性とした。

【結果】
 対象期間内に、中部胆管癌の診断で 110 例に対し根治術が施行された。情報が不十分であった 2 例、また局所進展度 T3 であった 16 例を除外し、残る 92 例を対象とした。T3 は膵臓、十二指腸など周囲臓器への浸潤を認めるものであり、合併切除が必要となるため除外とした。年齢中央値が 70 歳、男性 68 人、女性 24 人であった。また 2例が迅速病理検査にて断端陽性と診断され、術中に術式変更となった。最終的に胆管切除術群は 38 例(41.3%)であった。

臨床病理学的背景
 胆管切除術群で年齢中央値が 6 歳高い結果となった(P=0.007)(表 1)。ただし全身状態の評価は両群間で差を認めなかった。また胆管切除術群は手術時間(P<0.001)、出血量(P<0.001)、合併症頻度(P=0.001)、術後在院日数(P<0.001)で良好な結果となった。有意差は認めなかったものの、術後 90 日死亡は膵頭十二指腸切除術群のみに認めた(P=0.265)。また病理学組織学的には、リンパ節郭清個数(P<0.001)および断端陽性率(P=0.007)で有意差を認めた(表 2)。胆管切除術群での断端陽性率は肝臓側13.2%、十二指腸側 10.5%、剥離面 21.1%であった。

生存分析と再発率
 両群含む生存率は 1 年で 86.9%、3 年 61.6%、5 年 48.2%であり、生存期間中央値は4.7 年であった。また胆管切除術群と膵頭十二指腸切除術群の 3 年生存率が 52.6%対68.1%、5 年で 38.8%対 54.8%、生存期間中央値は 5.4 年に対し 3.6 年であり(P=0.035)、胆管切除術群が予後不良であった(図 1)。また多変量解析にて術式、顕微鏡的静脈浸潤、リンパ節転移が独立した予後不良因子であった(表 3)。胆管切除術群と膵頭十二指腸切除術群の腫瘍再発率は、73.7%対 48.1%であった(P=0.018)。また同様に遠隔転移が 6.3%対 22.2%(P = 0.804)、局所再発が 44.7%対27.8%であった(P=0.121)。

胆管切除術群におけるサブグループ解析
 胆管切除術群においては腫瘍長径と断端距離が独立した予後予測因子であった(表 4)。断端距離が不明であった 1 例を除く 37 例を、腫瘍長径が 15mm 未満であること、両側断端ともに 10mm 以上確保できたこと、の 2 項目を用いて分類した。いずれか 1 項目を満たす 22 例は膵頭十二指腸切除術と比較して同等の予後であったが(P=0.722)、一方で 1 項目も満たさなかった 15 例は術後 7 年以内に全例が死亡、また 5 年生存率はわずか 6.7%と予後不良であった(P<0.001)(図 2)。

【考察】
 これまでにも胆管切除術と膵頭十二指腸切除術に関する研究は散見されてきたが、遠位胆管癌に対する研究では胆管切除術が予後不良であった。しかし中部胆管に限局した研究ではその逆を唱えるものもあり統一した見解はなかった。中部胆管癌の罹患率が低いことが一因であり、本研究では多施設共同研究にて症例を集積した。本研究における論点は、胆管切除術は安全性の高い手術であること、胆管切除術は膵頭十二指腸切除術と比較して予後不良であること、ただし腫瘍長径あるいは断端距離など条件を満たすことで胆管切除術が選択肢となりうることである。
 胆管切除術は手術成績から安全性の高い術式と考えられ、一方で膵頭十二指腸切除術は術後膵液漏の発生頻度も高く侵襲が大きいとされている。そのため胆管切除術は高リスク症例において選択される傾向があり、本研究でも胆管切除術群がやや高齢であった。本研究では胆管切除術後の生存率は膵頭十二指腸切除術後と比較して有意に不良であり、これにより中部胆管癌に対する標準術式は膵頭十二指腸切除術が推奨される。リンパ節郭清の範囲は切除範囲に依存するため、胆管切除術群の郭清リンパ節個数が少ない結果となった。しかし両群ともにリンパ節転移例は約 20%と有意差なく、郭清不良である可能性は低いと考える。
 また胆管切除術群では断端陽性率が 26.3%であり、剥離面陽性率が高い結果となった。胆管癌では胆管周囲組織に癌の浸潤を認める場合があり、膵上縁での胆管周囲の剥離による影響が考えられる。剥離面は術中迅速病理検査での判別が困難なため、可能な限り周囲組織とともに切除する必要がある。
 胆管切除術群でも腫瘍長径 15mm 未満、または両側断端距離が 10mm 以上確保できた症例は予後良好であった。腫瘍が限局していること、あるいは断端距離の十分な確保が長期生存のために必要であった。この選択基準は比較的簡潔であり、術式選択の一助となる可能性がある。腫瘍長径は胆管造影検査または MRCP にて容易に測定が可能であるが、断端距離を 10mm 以上確保するためには膵内胆管を切除する技術が必要である。また過去に、胆管癌の根治目的に断端距離が最低 10mm 以上必要と報告しており、これに矛盾しない。
 本研究は多施設研究であるにもかかわらず、中部胆管癌に限定したことで症例数が少なくなった。今後肝切除術との比較など、さらなる検討が必要である。

【結語】
 胆管切除術は断端陽性となりやすい手技であり、中部胆管癌に対しては膵頭十二指腸切除術が推奨される。しかし腫瘍長径が 15mm 未満である、あるいは断端距離が10mm 以上確保できる症例においては胆管切除術が選択肢となりうる。

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