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Clinical value of additional resection of a margin-positive distal bile duct in perihilar cholangiocarcinoma

Otsuka, S. 大塚, 新平 名古屋大学

2020.04.02

概要

【背景】
肝門部領域胆管癌は予後不良疾患であり、長期生存には腫瘍の完全切除(R0 切除)が欠かせない。R0 切除を規定する因子として胆管断端があり、術中迅速診断にて断端が陽性になると、外科医は胆管の追加切除を行うことによって R0 切除目指している。これまでの研究で近位側胆管断端(PM)の追加切除意義については明らかにされてきたが、遠位側胆管断端(DM)に対する追加切除の意義は明らかになっていない。

【方法】
2001 年から 2015 年の間に当科で根治切除術を行った肝門部領域胆管癌症例を後方視的に検討した。手術は肝葉切除を伴う肝外胆管切除を基本術式として行い、必要に応じて肝切除兼膵頭十二指腸切除(HPD)を行った。総胆管は膵上縁で切離し、DMは術中迅速病理診断によって評価した。DM が陽性であった際に、可能であれば追加で膵内胆管切除(BDR)あるいは膵頭十二指腸切除(PD)を術者の判断で行った。

切除標本と術中迅速標本は通常の方法でホルマリン固定およびパラフィン包埋・薄切後にヘマトキシリン・エオジン染色を行い、熟練した病理医が診断を行った。最終的な胆管断端の評価は切除標本と、術中迅速検体の再評価によって行った。DM を陰性、上皮内癌、浸潤癌の 3 群に分類し、上皮内癌と浸潤癌を陽性と判定した。

肝門部領域胆管癌における、膵上縁胆管周囲の癌浸潤を評価するために、予定 HPD が行われた症例の病理標本を再検討した。

【結果】
対象期間の間に 644 例の肝門部領域胆管癌に対して切除術が行われた。予定 HPDが行われた 72 例は対象から除外した。14 例では、DM に対する術中迅速診断が行われなかった。残る 558 例のうち 484 例(86.7%)が術中迅速診断で DM 陰性、74 例(13.3%)が DM 陽性であった。

迅速診断 DM 陽性例に行われた追加切除の概要を示す(Figure 1)。他の術中迅速で PM が陽性であったことや、多発リンパ節転移があったことなどから 21 例には追加切除を行わなかった。残る 53 例に追加切除を行い(BDR 50 例、PD 3 例)、DM 陰性を 34 例で達成した。2 回目の迅速診断で陽性だった 19 例のうち 10 例に対して 2 回目の追加切除を行った(BDR 4 例、PD 6 例)。最終的には 53 例に対して何らかの追加切除を行い(BDR 44 例、PD 9 例)、30 例(57%)で R0 切除を達成した。

BDR によって追加切除された胆管の長さの中央値は 19(3‐34)mm であった。
術中迅速 DM 陰性であった 484 例のうち 10 例が最終的な病理診断で DM 陽性と診断された。一方、術中迅速 DM 陽性の 74 例には最終診断で陰性であった症例はなく、偽陰性率 2.1%、偽陽性率 0%だった。

術中迅速 DM 陽性 74 例の臨床病理学的特徴を Table 1 に示す。追加 PD が行われた 9 例は全例 R0 切除が達成されたが、BDR 例では 44 例中 21 例で DM、PM、剥離面断端などによって R1 切除となった。

迅速 DM 陽性 74 例のうち追加切除例に在院死亡はなく、非追加切除の 1 例が肝不全により術後 86 日に死亡した。追加 PD 例 (n=9) の予後は 10 年生存率 67%と良好であった。非追加切除例 (n=21) に 5 年生存症例はなく予後不良であった。追加 BDR例 (n=44) は 5 年生存率 31%で非追加切除例よりも良好であった(BDR vs 非追加切除, p<0.001; BDR vs PD, p=0.009)(Figure 2)。多変量解析によってリンパ節転移の有無と追加切除の有無が独立予後規定因子であることが判明した(BDR vs 非追加切除, hazard ratio = 0.40 [0.19-0.74]; PD vs 非追加切除, hazard ratio = 0.11 [0.03- 0.48])(Table 2)。追加 BDR 例では R0 切除の達成の有無にかかわらず長期予後に有意な差はなかった(R0 (n=21) vs R1 (n=23), 5y-OS 38% vs 24%, p=0.254)。

肝門部領域胆管癌に対する HPD 症例の検討では 60 例で膵上縁よりも遠位の胆管まで進展する腫瘍が確認された。これらの症例ではしばしば膵上縁胆管周囲の間質内に、胆管から連続せず BDR では切除不能と考えられる神経浸潤や脈管浸潤を認めた(Figure 3)。

【考察】
術中迅速 DM 陽性肝門部胆管癌に対する追加胆管切除は、安全施行可能で、R0 切除率を向上させ、長期予後の改善にも寄与しうることが今回の研究で示された。多変量解析では、追加 BDR、追加 PD ともに独立した予後規定因子であった。

これまで、我々は術中迅速 PM 陽性例に対する追加切除は 5mm を超えることが難しく、断端陰性を達成しても長期予後の改善に寄与しないことを報告してきた。一方、今回の研究では術中迅速 DM 陽性例に対する追加切除長は中央値 19mm と、PM に比べて長かった。この切除長の違いが、今回の研究において追加切除が予後を改善したことの理由の一つと考えられた。

通常、術中迅速 DM 陽性例に対する追加切除は BDR が第一選択である。今回の研究でも 53 例中 50 例(94%)に対して、まずは BDR が行われた。BDR を行って R0切除となった症例群と R1 切除となった症例群の予後が変わらず、PD 群よりも有意に悪かったことは注目すべき点である。HPD 症例に対する病理学的検討では胆管壁から連続しない間質内の神経浸潤や脈管浸潤の存在が明らかになった。このことを加味すると、胆管壁のみを追加切除する BDR だけでは腫瘍の完全切除が難しい症例が存在することが示唆される。言い換えるならば BDR で病理診断上 R0 切除を達成したとしても、“真の R0 切除“とは言えない症例があり得るということである。しかし、 BDR そのものは PD と同様に単独の予後規定因子であり、BDR を行う価値自体はある。

今回の研究では追加 PD は合計 9 例に施行され、全員が周術期を乗り越えて無事に退院した。9 例の長期予後は良く、特に pN0 の 5 例は全例が 5 年生存を達成した。ただし、追加 PD の腫瘍学的な優位性を論じるには、症例数が少ないことに留意する必要がある。HPD に関してこれまでに多くの施設から高い合併症率と死亡率が報告されている。追加 PD は限られた施設で行われるべきであり、対象となるすべての症例に推奨されるものではないが、選択された症例に対して安全に行われることで長期予後を改善しうると考えられる。

今回の研究の限界は、後方視的研究であること、症例数が少なく単施設であることであり、予期しないバイアスを完全に除外することはできない。また、追加切除術式の選択が術者に委ねられていることによる患者選択バイアスも除外しきれない。しかし、研究期間において 2 人の指導的外科医が常に手術に参加し、術者あるいは第一助手を担当してきた。このため、術式選択においてそれ程の差異は生じていないと考えられる。本研究の統計学的な力は十分ではなく、さらなる大規模な多施設研究が必要と考えられる。

【結語】
肝門部領域胆管癌において術中迅速診断陽性の遠位側胆管断端に対する追加切除は、R0 切除率を向上させ、長期予後に寄与する。

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