リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「斜面の降雨浸潤過程の簡易予測モデルの開発と表層崩壊に対する危険度評価に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

斜面の降雨浸潤過程の簡易予測モデルの開発と表層崩壊に対する危険度評価に関する研究

尾崎, 昂嗣 オザキ, タカツグ 群馬大学

2021.09.30

概要

温暖湿潤な気候下にあり、かつ国土の広い面積が山地で構成される日本では、表層崩壊に伴う土砂災害が問題となっている。豪雨下における土砂災害のリアルタイム早期警戒判断システムを国外も含めて広域かつ迅速に展開するためには、降雨時における土中の水分移動を簡易に予測することが必要となる。本研究では、細砂質の斜面における降雨浸潤過程を予測する簡易式を提案し、その提案手法を用いて、現地試験および室内試験から得られた土の特性を基に、過去に表層崩壊が発生した現場を対象に斜面の安全率を面的に評価した。

第 1 章では、本研究の序論として、本国における近年の雨の降り方と土砂災害など、本研究の背景を整理した。また、実際に表層崩壊が発生した山地斜面を対象として、土砂災害に対する危険度評価を試みた本研究の目的を述べた。

第 2 章では、先行研究において提案された中砂質の斜面浅部における地下水位上昇量の簡易予測式について概説した。これは、第 3 章で示す細砂質の斜面における降雨浸潤過程の移動機構、およびそれに対して提案された簡易予測式と対比する意図がある。また、不圧帯水層に沿う地下水の流れに関する解析を先行研究における簡易予測式と組合わせ、平成 29 年 7 月九州北部豪雨に対する斜面の安定度を評価した。本研究で示す評価結果は実現象との整合性については改善の余地があるが、精度の向上に対しては同じ研究室の他の研究者の論文を参照していただきたい。

第 3 章では、第 2 章で示した中砂よりも透水性の低い細砂質の斜面における地中の雨水の移動機構を明確にした。また、その異なる浸透機構(斜面浅部の降雨浸潤過程)を予測する簡易式を提案した。半無限斜面仮定の下で実施した一連の有限要素解析のパラメトリック・スタディの結果、細砂質の斜面に対して提案した降雨浸潤過程の簡易予測式の有用性を示した。また、提案手法の妥当性を示すため、実際の降雨履歴(不規則降雨)に対し、浸潤前線の経時的な変化を評価した。降雨継続時間や降雨強度が異なる 6 種類の実降雨に対して評価した結果、不規則な実降雨を入力した場合でも、提案した降雨浸潤過程の簡易予測式が浸潤前線の下降傾向を評価するのに有効であることが確認された。

第 4 章では、第 3 章で提案した簡易予測式を用いて、実際に崩壊が発生した現場の情報に基づき、表層崩壊に対する安全率を面的に評価した。試験サイトは平成 30 年 7 月豪雨においてインフラ施設等が破壊される被害が生じた愛媛県松山市興居島とした。土の特性の把握にあたっては、簡易な現地試験を採用し、斜面地における作業性の向上を図った。令和 2 年 8 月に現地踏査を行い、崩壊地の滑落崖にて土層強度検査棒を用いたベーンコーンせん断試験、および METER 社製携帯型ミニディスクインフィルトロメータを用いた現地変水位試験を実施した。また、不かく乱試料およびかく乱試料を採取し、土質試験と X線回折を行った。その結果、採取した試料は花崗閃緑岩の風化生成マサ土であると判断し、現地変水位試験から得られた飽和透水係数の評価結果も踏まえ、細砂質の斜面に対して提案した降雨浸潤過程の簡易予測式を適用することとした。また、斜面の安定性を評価するうえで必要な土のせん断強度を、土層強度検査棒を用いた試験結果に基づき設定し、平成 30 年 7 月豪雨における表層崩壊に対する安全率を面的に評価した。その結果、開析谷上流部の谷頭および谷壁斜面での安全率が低下しており、平成 30 年 7 月豪雨の崩壊範囲と一致する結果が得られ、評価手法の有用性が示された。

第 5 章では、本研究の総括として、中砂質の斜面とは浸透特性が異なる、飽和透水係数が比較的に小さな細砂質の斜面浅部の降雨浸潤過程に関する簡易な予測式の有用性について述べた。また、提案した簡易予測式は降雨パターンによる表層崩壊に対する安全率の経時的な変化傾向を把握することに適しており、リアルタイム予測情報に基づいて、表層崩壊の発生源、および今後崩壊の危険がある場所を推定することが可能であることに言及した。そして最後に、今後の課題と将来研究への示唆を記した。

本研究は興居島を対象としたが、各島の成り立ちから、瀬戸内海の島嶼部には風化の進行が同程度の花崗閃緑岩を有する箇所が存在すると推察される。島嶼部は有事の際の救助体制が整っていない場所も多いため、土砂災害のリアルタイム早期警戒判断システムの構築により人的災害を極力抑えることは重要であり、周囲の島嶼部に対して同様の評価手法を展開することは意義深いものであると考えられる。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る