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大学・研究所にある論文を検索できる 「スピンポンピングを用いたスピン流生成効率およびスピン流伝送現象の結晶配向依存性の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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スピンポンピングを用いたスピン流生成効率およびスピン流伝送現象の結晶配向依存性の評価

池渕, 徹也 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23716

2022.03.23

概要

電子は「電荷」と「スピン」の 2 つの自由度を持つ。「電荷」は電圧で制御することが可能でありエレクトロニクスに利用されてきた。一方、「スピン」は磁場で制御可能であり、永久磁石やハードディスクなど磁気工学に利用されてきた。1988 年の巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見を発端として、電子の「電荷」と「スピン」の両自由度を複合的に利用するスピントロニクスと呼ばれる研究分野が発展してきた。

スピントロニクスの分野ではスピン流が重要な役割を担っている。スピン流は保存せずスピン拡散長のスケールで情報を喪失するため、長いスピン拡散長をもつ材料および機構が求められる。また、スピン流を利用するためには、そもそもスピン流を発生させなければならない。このスピン流を発生させる手段として、磁化ダイナミクスからスピン流を生成するスピンポンピングという現象がある。スピンポンピングは、強磁性体/非磁性体が接合した素子において強磁性体の磁化が運動しているとき、隣接した非磁性層に強磁性体の角運動量が受け渡された結果、非磁性層内でスピン流が発生する現象である。スピンポンピングの利点は隣接層で生じたスピン流の拡散や伝搬を強磁性体の歳差運動の磁気緩和を用いて評価できる点にある。

本研究の目的は、非磁性層や反強磁性層におけるスピン流物性を調査することである。本論文では、「エピタキシャルPt/FeNi系におけるスピンホール角の結晶配向依存性」、「単結晶NiO薄膜における長距離スピン流伝送」2つの研究が報告されている。

(1) エピタキシャルPt/FeNi系におけるスピンホール角の結晶配向依存性
本研究では、スピントルク強磁性共鳴法を用いて、Pt / FeNi 系のエピタキシャル Pt薄膜のスピンホール角の結晶方位依存性を調査した。スピンホール効果を定量的に評価するために、ダンピングトルク効率、Pt/FeNi 界面におけるミキシングコンダクタンス、Pt 層におけるスピン拡散長を見積もった。これら一連の測定によって、Pt におけるスピンホール効果の大きさは、電流の方向ではなく、スピン流の方向に強く依存することが定性的に示された。

(2) 単結晶NiO薄膜における長距離スピン流伝送
反強磁性体におけるスピン流の伝送は、スピン超流動の発現が期待されるなど反強磁性スピントロニクスにおける最も興味深いテーマの一つである。本研究では、単結晶NiOの(111)方向および(001)方向へのスピン拡散長を調査した。NiO/FeNiエピタキ シャル膜において、スピンポンピングによるFeNi層のダンピング増大からNiO中のスピン拡散長を見積もった。NiO(111)面試料についてはスピン拡散長が50 nmであると見積もることができた。一方、NiO(001)面試料に関しては、ダンピング定数の試料厚さ依存性が得られなかった。この結果の解釈として、(1)NiO/FeNi界面においてスピン伝達が全く行われない、(2)NiOにおけるスピン拡散長が異常に長く作製試料の厚さ(<10 0nm)では変化が見られない、の2つの可能性がある。どちらが正しいのかを検証す るために、Pt/NiO/FeNiについてスピン流伝送を調べた。1つ目の解釈が正しい場合、Ni Oにてスピン流は伝搬しないのでPtの有無で結果に相違がないはずである。2つ目の解釈が正しい場合、NiO中を伝搬するスピン流がPt層で拡散するため、Ptの有無で大きく影響が出るはずである。その結果、Pt層の追加によってFeNiのダンピング増大が確認 された。この実験結果は2つ目の解釈を支持しており、スピン流がPt層まで到達したことを意味する。すなわち、エピタキシャルNiO膜の(001)方向へのスピン拡散長が100nmより十分に長いことが明らかとなった。

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