リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「人工反強磁性体におけるスピン波の研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

人工反強磁性体におけるスピン波の研究

石橋, 未央 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23019

2021.03.23

概要

スピン波を用いた情報伝達、論理演算素子の実現は、スピン波の応用研究の目指すところの一つであり、強磁性膜中を伝播するスピン波を用いた実証実験が、これまでに数多く報告されている。近年では、強磁性体のスピン波だけでなく、隣り合う磁化が反平行に結合した反強磁性体中を伝播する反強磁性スピン波の研究が盛んに行われている。しかしながら、反強磁性体は、全体として磁化が補償するため、磁化方向の制御、検出に課題があり、また、THz の高い共鳴周波数のために実験的にスピンダイナミクスを研究する手法が限定されている。そこで、本研究では、層間交換結合により、二つの強磁性層の磁化が薄い非磁性層を介して反平行に結合した人工反強磁性体に着目した。人工反強磁性体の層間交換結合は反強磁性体の交換相互作用よりも弱く、磁化方向を外部磁場によって容易に制御することが可能である。また、人工反強磁性体の共鳴周波数は、数十 GHz 程度であり、電気回路を用いたマイクロ波測定によってスピン波を測定することが可能である。さらには、強磁性層や非磁性層の材料や膜厚を変えることで、自由な物性制御が可能である。本学位論文の研究では、人工反強磁性体を用いた反強磁性スピン波の利用、制御を目指し、人工反強磁性体におけるコヒーレントなスピン波について調査を行った。

一つ目の研究課題は、「人工反強磁性面内磁化膜中を伝播するスピン波の共鳴周波数の非相反性とその電気的制御」である。スピン波の非相反性とは、ある方向に伝播するスピン波と180度反対方向に伝播するスピン波の性質が異なることであり、スピン波の伝播を用いた論理演算素子などの研究においては、特に重要な性質である。本研究では、アンテナの作るマイクロ波により、ある波数のスピン波を選択的に励起し、伝播したスピン波の信号をもう一方のアンテナで検出することで、人工反強磁性面内磁化膜中を伝播するコヒーレントなスピン波を調査した。面内方向に印加した外部磁場とスピン波の伝播方向が垂直の場合、反対方向に伝播するスピン波の共鳴周波数は変わらないのに対して、外部磁場とスピン波の伝播方向が平行の場合、反対方向に伝播するスピン波の共鳴周波数が異なるという結果が得られた。人工反強磁性面内磁化膜のスピン波の共鳴周波数の非相反性は、磁気双極子相互作用に由来しており、反対方向に伝播するスピン波の共鳴周波数の差は、人工反強磁性体の二つの磁化の相対角に依存していることが理論的に報告されている。そこで、本研究では、二つの磁化の相対角を反転させて、反対方向に伝播するスピン波の共鳴周波数の大きさを入れ替えられないかと考え、さらに実験を行った。人工反強磁性面内磁化膜細線の長手方向にパルス電流を印加し、スピン波の測定を行った。得られた測定結果は、パルス電流の印加方向に依存して、反対方向に伝播するスピン波の共鳴周波数が入れ替わっており、パルス電流が作るエルステッド磁場が二つの磁化の相対角を反転させたと考えられる。本研究において、人工反強磁性体におけるスピン波の共鳴周波数の非相反性の電気的制御実証がなされた。

二つ目の研究課題は、「人工反強磁性垂直磁化膜におけるスピン波共鳴」である。一軸異方性を有した反強磁性体において、磁化容易軸方向に外部磁場を印加したとき、反平行に結合した二つの磁化が共に外部磁場に対して右回りに回転する右回りの共鳴モードと、二つの磁化が共に外部磁場に対して左回りに回転する左回りの共鳴モード、外部磁場に対する回転方向の異なる二つの共鳴モードが観測される。これらの回転方向が異なる二つのモードがあることで、直交した二つの直線偏光など、二つの共鳴モードが作り出される。このスピン波の磁化の歳差運動の軌道を偏光と呼び、近年、偏光を既存の振幅、位相に加えた新たなスピン波の自由度として用いようという考えや理論提案が注目を集めているが、反強磁性体を用いたスピン波の偏光制御は未だ実証には至っていない。そこで、一軸異方性を有した人工反強磁性垂直磁化膜を用いて、スピン波の偏光を制御できないかと考えた。その第一歩として、本研究では、アンテナによってコヒーレントなスピン波を人工反強磁性垂直磁化膜に励起し、励起したスピン波の磁気共鳴を反射波測定によって調査した。二つの磁化が反平行となる磁場範囲で、二つの共鳴ピークが観測された。観測された二つの共鳴モードは、外部磁場の増加に対して、共鳴周波数が増加、または減少と、異なる傾向を示しており、外部磁場に対して右回り、左回り、回転方向の異なる二つの共鳴モードに対応していると考えられる。さらに、磁化の運動方程式から、人工反強磁性垂直磁化膜におけるスピン波の磁化ダイナミクスの詳細を理論的に明らかにした。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る