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大学・研究所にある論文を検索できる 「角層機能維持のための保湿剤周囲の水和・水素結合状態評価と角層含水率計測に関する分光学的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

角層機能維持のための保湿剤周囲の水和・水素結合状態評価と角層含水率計測に関する分光学的研究

森田, 美穂 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24819

2023.05.23

概要

氏名

森田 美穂

論文題目

角層機能維持のための
保湿剤周囲の水和・水素結合状態評価と角層含水率計測に関する分光学的研究
<論文の要約>

身体の最外層である角層では、ヒトの生命機能に必須の水を体内に維持するという重要な役割を果たすた
めに、その含水率 (角層含水率) が適切な値に維持される必要がある。しかし、低湿度環境や加齢などが角層
含水率を低下させるため、化粧品や医薬部外品といった皮膚外用剤を塗布することにより、角層含水率の維
持や向上が図られる。そのような皮膚外用剤研究を推進するには、有用な材料のin vitroでの探索と、材料を皮
膚外用剤に配合し、皮膚に塗布した際の角層含水率をin vivoで評価する方法の2種類が必要である。そこで本
研究では、in vitroでの材料探索における評価指標になりうると考えられた保湿剤周囲の水分子やその水素結
合の状態評価、in vivoでの皮膚外用剤を塗布した角層の含水率計測を目指し、マイクロ波帯の誘電分光法・
中赤外帯でのフーリエ変換分光法・テラヘルツ波帯での全反射減衰分光法により研究を行った。
本論文は全 6 章から構成されており、第 1 章では本研究の背景および目的、第 2 章では電磁波に対する物
質応答と本研究で用いた分光法についてまとめた。
第 3 章では、皮膚外用剤に使用される代表的な保湿剤である多価アルコール (グリセリン、ブチレングリコー
ル、プロピレングリコール) の 70 wt%水溶液について、多価アルコールを取り巻く水分子の水和状態を観測す
るために、これまで保湿剤の水和水研究に用いられてこなかったマイクロ波帯の誘電分光を行った。マイクロ
波帯の誘電分光では、交流電場の下で生じる水の配向分極の様子が観測され、溶質との水素結合などにより
純水の場合よりも水分子の配向が遅れた水が水和水として通常の水 (バルク水) と区別できる。解析の結果、
試験した 3 つの多価アルコールのうち、水分保持作用が最も高いグリセリンで水和水量が最も少なく、多くの
バルク水を含むことが示された。従来、保湿剤の水分保持作用は、保湿剤による水和が重要な役割を果たすと
考えられてきたが、本章の結果は、従来の解釈に疑問を投げかけると同時に、水分保持作用に対し、バルク水
の存在が重要である可能性を提示した。
第 4 章では、保湿剤周囲の水和水の水素結合状態の観測を目指し、マイクロ波帯の誘電分光と中赤外帯で
のフーリエ変換分光を行った。ここでは、第 3 章で示された、グリセリン水溶液に試験した他の多価アルコール
よりも多くのバルク水が存在するという結果に、水和水の水素結合の特徴が関係する可能性を考え、グリセリ
ン周囲の水和水の水素結合様式 (水分子がドナー、アクセプターそれぞれの水素結合をいくつずつ持つか)
に着目した。従来、中赤外帯の HOH 変角振動および OH 伸縮振動バンドが水素結合を知るための重要な手
がかりとして利用されてきたが、本章の対象であるグリセリン水溶液では、これを構成するグリセリン・水和水・
バルク水がそれぞれのバンドでオーバーラップを生じるため、中赤外帯のスペクトルをそのまま解析しても水
和水の水素結合様式を求めることができないという問題があった。そこで、本研究では第 3 章でも用いたマイ
クロ波帯の誘電分光を行って、純水、純グリセリンに加えて 36–92 wt% の広い濃度域のグリセリン水溶液の
スペクトルを取得し、各構成成分のモル濃度を求め、それを基に、グリセリン水溶液の中赤外帯のフーリエ変
換分光スペクトルから水和水のみのスペクトルを抽出した。まず、誘電分光によって求められた各構成成分の
モル濃度に基づく水和数の解析では、グリセリンの水和作用が、低濃度ではグリセリンと直接の水素結合を持
たない第二水和層にまで及ぶが、約 70 wt%を超えると第二水和層はなくなり、隣接するグリセリン分子間で
第一水和層の共有が進行して水和数が減少することが示された。また、水和水の HOH 変角振動バンドの解析
では、スペクトル形状がバルク水に比べて狭く、高波数にシフトする変化が、D2O に取り囲まれた H2O のスペク
トルと同じ傾向にあったことから、グリセリン濃度が高いほど、水分子間の変角振動カップリングが減少するこ

とが示唆された。さらに、純水の OH 伸縮振動バンドは 1 つのピークを示すのに対し、水和水の OH 伸縮振動
バンドはグリセリン濃度が高いほど 2 つのピークへの分岐が顕著になった。解析の結果、このスペクトル形状の
変化は純水に多いドナー水素結合とアクセプター水素結合をそれぞれ 2 つ、計 4 つの水素結合を有する水素
結合様式が、グリセリン周囲の水和水ではドナー水素結合 2 つとアクセプター水素結合 1 つという水素結合様
式に変化することを反映したものであることが示された。グリセリン周囲の水和水に関する水和数・HOH 変角
振動・OH 伸縮振動についての本章の結果は、グリセリン周囲の水和水はドナー水素結合 2 つとアクセプター
水素結合 1 つという水素結合様式での水素結合を水分子ではなくグリセリンとの間に形成し、他の水分子との
相互作用が減少した状態になることを示し、第 3 章で示されたグリセリン水溶液における多くのバルク水の存
在は、一つの水分子を複数のグリセリン分子が取り囲むことで、グリセリン 1 分子が水和作用を及ぼす水分子
が少ないことによることが示唆された。
第 5 章では、皮膚外用剤を塗布した状態での角層含水率の in vivo での評価を目指し、THz 波減反射減衰
分光法の利用検討を行った。5.1 では THz 波全反射減衰分光法による所望の評価の実現可能性について検
討した。まず、ヒトから収集した角層の含水率変化が ATR 信号の変化として計測できることを確認し、両者の
関係を表す式を得た。この式を検量線として用いることで、ATR 信号の計測から、角層含水率を求めることが
可能になった。また、THz 波全反射減衰分光法について、ヒト皮膚での計測から、評価深さが角層の含水率を
反映していること、水と皮膚外用剤成分の透過性の違いから、皮膚外用剤の影響が小さいことが確認された。
そして、皮膚外用剤を塗布した皮膚の角層含水率計測を行ったところ、THz 波全反射減衰分光法を用いれば、
皮膚外用剤の有無や処方の違いによる角層含水率への影響の差異を評価できることがわかった。さらに 5.2
では、研究者と被験者のもとに持ち運ぶためのポータブル化、被験部位に密着させる部分の可動化を図った。
本節のシステムで得られる ATR 信号も 5.1 のシステムと同様にヒトから収集した角層の含水率と相関すること
を確認後、53 名の被験者を対象に角層含水率計測を実施した結果、本節のシステムが従来多用されてきた角
層水分計である SKICON 200-EX、Corneometer CM-825 の計測値と中程度の相関を示し、THz 波全反射減衰
分光法による角層含水率計測が信頼できるものであることが示された。相関が中程度であって強くない点に
ついては、前記 2 つの従来装置が原理的に角層中の電解質の影響を受けることによるものであると考えられ、
角層含水率の計測については、THz 波全反射減衰分光法の有用性が高い可能性が示された。
以上の通り、本論文では、3 つの分光法の利用により、角層含水率の維持・向上のための皮膚外用剤を研究
する上での課題となっていた、in vitro での材料探索に向けた保湿剤水溶液の水和および水素結合の評価、お
よび in vivo での評価に向けた皮膚外用剤を塗布した角層の含水率評価を行うことができることを示した。第 6
章では本論文の結論として、本論文の目的に対する研究の成果とを総括し、皮膚外用剤研究の推進や含水率
計測装置の用途拡大のための将来展望を記載している。 ...

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