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Prevalence of neuropathic pain in terminally ill patients with cancer admitted to a general ward: a prospective observational study

柳泉 亮太 横浜市立大学

2021.04.30

概要

【序論】
 多くのがん患者が神経障害性疼痛に苦しんでいるがその有病割合の報告は少ない.特に終末期がん患者において国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain: 以下IASP)の診断基準に厳密に基づいて神経障害性疼痛の有病割合を調査した研究は, 我が国の緩和ケア病棟に入院した終末期がん患者において18.6%であったという報告のみである(Harada et al., 2016).本研究は緩和ケア病棟という特殊な施設ではなく, 対象患者が最も多い一般病棟に入院した終末期がん患者における神経障害性疼痛の有病割合を調査することを目的とした.一般病棟に入院後, 緩和ケアチームに紹介された終末期がん患者の神経障害性疼痛の有無をIASP診断基準に基づいて診断して, その有病割合を調査した.また神経障害性疼痛の有無での予後等を比較検討した.

【方法】
 2018年9月から2019年9月までの13か月間に横浜市立大学附属市民総合医療センターに入院後, 同院の緩和ケアチームに紹介された終末期がん患者に対して前向き観察研究を実施した.20歳以上の終末期がん患者に対し, 緩和ケアチームに紹介された時点での神経障害性疼痛の有無, 疼痛強度(numerical rating scale: 以下NRS)等を評価した.神経障害性疼痛の診断はIASPの診断基準に基づいた(Treede et al., 2008).先行研究と同様にこの診断基準で少なくとも「Probable neuropathic pain」以上と診断した場合に神経障害疼痛患者とした(Harada et al., 2016).除外基準は, 意識障害, 認知機能障害, 精神機能障害, 本研究参加への同意取得不可, 追跡不能, 調査開始日より181日以上の生存とした.
 以上より主要エンドポイントとして, 一般病棟における終末期がん患者の神経障害性疼痛の有病割合を算出した.
 本研究に登録された患者は, 年齢, 性別, 原疾患の原発部位, 生存期間, NRSも記録した.これらから副次的エンドポイントとして, 神経障害性疼痛の有無による年齢, 生存期間, 経口モルヒネに換算したオピオイド一日使用量, NRSの比較を実施した.

【結果】
 108例の患者が本研究に登録された.患者の年齢は中央値69(四分位範囲58.3-76.8)歳, 72例(66.7%)が男性だった.原疾患は大腸がんが14例(13.0%)と最多であった.予後日数は33(14.3-62)日であった.有痛割合は93.5%(101例)であった.
 神経障害性疼痛と診断された患者は33例であり, 有病割合は30.6%だった.神経障害性疼痛がある患者33例と無い患者68例では, 年齢(中央値69歳 vs 68.5歳; P=0.622、Wilcoxon符号順位検定), 予後(40日 vs 32.5日; P=0.377)に有意差を認めなかった.同様にオピオイド一日使用量も有意差はなかった(23mg vs 15mg; P=0.897).しかしNRSは神経障害性疼痛患者で有意に高かった(NRS score中央値7 vs 5; P=0.025).

【考察】
 本研究は, 我が国の一般病棟に入院した終末期がん患者に対してIASPの診断基準に沿って神経障害性疼痛の有病割合を調査した初めての観察研究である.その結果である一般病棟に入院した終末期がん患者の神経障害性疼痛の有病割合は30.6%だった.
 がん患者の神経障害性疼痛の正確な診断には本研究のようにIASPの診断基準に沿って行うことが重要であり, これが本研究の強みである.神経障害性疼痛のスクリーニングツールもすでにいくつかは実用化されている.しかしそれらのスクリーニングツールは良性疾患の神経障害性疼痛を対象にして開発されたこと, またがん患者は神経障害性疼痛に侵害受容性疼痛が混在した混合性疼痛が多く, 純粋な神経障害性疼痛のみを持つケースが少ない.このためがん患者ではスクリーニングツールの診断精度が不十分との報告もある(Tzamakou et al., 2018; Higashibata et al., 2019).
 IASPの診断基準に基づき終末期がん患者の神経障害性疼痛の有病割合を調査した先行研究では, 我が国の緩和ケア病棟に入院した終末期がん患者において18.6%だった(Harada et al., 2016).一方で予後3カ月以上を見込め, ペインクリニック外来に紹介された外来有痛がん患者をIASP診断基準に沿って診断したところ, 185例中76例が神経障害性疼痛であり, その有病割合は41.4%と非常に高値だったというギリシアからの報告もある(Tzamakou et al., 2018).本研究での終末期がん患者の神経障害性疼痛の有病割合とは差異があるが、これは研究ごとの対象患者の背景が異なっているためと考える.
 本研究では神経障害性疼痛の有無でNRSは有意差を認めたが, 年齢, 予後, 経口モルヒネ換算量は有意差を認めなかった.神経障害性疼痛の有無が予後に影響しないことはこれまでも示されており.実際, 現時点で緩和ケア領域における予後予測因子として, 疼痛を評価項目に含むものは報告されていない(Harada et al., 2016).以上より神経障害性疼痛の有無が予後に影響しなかった結果は妥当であると考える.
 本研究において神経障害性疼痛患者ではNRSが有意に増強しているのにも関わらず, 経口モルヒネ換算量の有意差は認めなかった.この要因として, 緩和ケアチームに紹介される症例はそもそもNRSに見合った量のオピオイドを主治医が適切に使用できていなかったことが考えられる.
 本研究のlimitationとして, 症例数が相対的に少なく単施設研究であることが挙げられる.また診断のタイミングが緩和ケアチームにコンサルトされた時点に限定されるため, 病期の進行にともなって神経障害性疼痛がその後, 新たに出現していた可能性がある.
結論として, 我が国での一般病棟に入院した終末期がん患者の神経障害性疼痛の有病割合は30.6%だった.神経障害性疼痛の有無でNRSの増強は認めたが, 年齢, 予後, 経口モルヒネ換算量には有意差を認めなかった.

参考文献

Harada S., Tamura F., & Ota S. (2016) The prevalence of neuropathic pain in terminally ill patients with cancer admitted to a palliative care unit: A prospective observational study. Am J Hosp Palliat Care, 33, 594-598.

Higashibata T., Tagami K., Miura T., Okizaki A., Watanabe YS., Matsumoto Y., MoritaT.,& Kinoshita, H. (2019) Usefulness of painDETECT and S-LANSS in identifying the neuropathic component of mixed pain among patients with tumor-related cancer pain. Support Care Cancer, 28, 279-285.

Treede RD., Jensen TS., Campbell JN., Cruccu G., Dostrovsky JO., Griffin JW., Hansson P., Hughes R., Nurmikko T. & Serra J. (2008) Neuropathic pain: redefinition and a grading system for clinical and research purposes. Neurology, 70, 1630-1635.

Tzamakou E., Petrou A., Tefa L., Siafaka V., Laou E., Tzimas P., Pentheroudakis G., & Papadopoulos G. (2018) Detection of neuropathic pain in end-stage cancer patients: Diagnostic accuracy of two questionnaires. Pain Pract, 18, 768-776.

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