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大学・研究所にある論文を検索できる 「関節リウマチにおけるエフェクターメモリーCD4陽性T細胞の機能解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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関節リウマチにおけるエフェクターメモリーCD4陽性T細胞の機能解析

吉田, 良知 東京大学 DOI:10.15083/0002007035

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 吉田 良知
本研究は、関節リウマチ (Rheumatoid arthritis: RA) のさらなる病態解明を目的として、RA
患者と健常人 (Healthy control: HC) の末梢血を採取し、フローサイトメトリーを用いた詳細
な検討を行い、RA の病態形成に関わる Th サブセットの同定と、次世代シークエンサーを
用いた網羅的遺伝子発現解析(RNA sequencing: RNA-seq)による機能推定およびその in vitro
における機能解析を行い、下記の知見を得た。
1.

RA 群と HC 群の末梢血フローサイトメトリー解析によって、エフェクターメモリーT
細胞

(CD3+CD4+CD8-CD45RA-CCR7-CD25-T 細 胞 ) の 中 に お い て 、 既 報 の

Th1/Th2/Th17/Tfh (T follicular helper) 細胞といった細胞とは異なる、ケモカイン受容体
CXCR3 を 中 程 度 (CXCR3mid) 発 現 す る 新 規 細 胞 サ ブ セ ッ ト で あ る ” ThA 細 胞 :
Autoimmune-associated helper T cell”を同定した。
1.

ThA 細胞を Flowcytometry を用いて分取し、RNA-seq を行った結果、UMAP (Uniform
Manifold Approximation and Projection) 法を用いた遺伝子発現データの次元圧縮では、
ThA 細胞は、Th1/Th2/Th17/Tfh 細胞を含む既知の Th サブセットとは明確に区別される
クラスターとして描出され、ThA 細胞が従来の Th サブセットとは異なる遺伝子プロフ
ァイルを有することが示唆された。また、RA 由来の ThA 細胞と HC 由来の ThA 細胞
との間で発現変動遺伝子解析を行ったところ、
発現変動の上位 20 遺伝子の中に CXCL13
や IL-21 といった、RA の ThA 細胞において液性免疫応答を正に制御する特徴的な遺伝
子の発現増加を認めた。さらに発現変動遺伝子に関する遺伝子オントロジー (Gene
ontology: GO) 解析では、細胞分裂に関連する GO term がエンリッチされ、この上位 13
の GO term によってアノテートされた遺伝子に関する Network 解析 (Category gene net
plot) では、上述の CXCL13 が endothelial cell chemotaxis という GO タームに関連して遺
伝子 network に含まれることが確認された。このことから ThA 細胞が Tfh 細胞とは異
なる、液性免疫応答を促進する独自のサブセットであることが想定された。

2.

臨床情報と ThA 細胞比率の関連につき解析を行ったところ、ThA 細胞は RA において
HC よりも有意に増加しており、ThA 細胞の割合は疾患活動性 (DAS28) と負に相関す
る傾向が認められ、リウマトイド因子 (RF) とは正の相関を示すという結果を得た。ま
た RA 群における多変量解析では RF のみ ThA 細胞の割合に対する独立した規定因子

であるという結果を得た。さらに、年齢と ThA 細胞割合との間に有意な正相関を認め
たことより RA 群と HC 群の全症例を含めた多変量解析を行ったところ、RA の有無の
みならず年齢も ThA 細胞比率に影響を与える独立した因子であることが示唆された。
これらの結果より、RA 群において有意に増加する ThA 細胞が抗体産生を介して RA 病
態と関与しつつ、疾患活動性の上昇と共に局所へ遊走する可能性や、ThA 細胞が疾患
のみならず加齢によっても増加することから age-associated T 細胞としての一面を有す
る可能性が考えられた。
3.

ThA 細胞が実際に B 細胞の抗体産生を直接促進するか否かにつき、ヒト末梢血細胞を
用いて T 細胞と B 細胞の共培養を行ったところ、B 細胞単独培養条件と比して、ThA
細胞の共培養において有意に B 細胞からの IgG 産生が亢進し、その抗体産生誘導能は
Tfh 細胞と同程度で、T 細胞受容体刺激依存性であった。

4.

RNA-seq データを用いて T 細胞受容体 (T cell receptor: TCR) レパトア解析を行ったと
ころ、ThA 細胞は Gini index 0.80 と他の T 細胞サブセットと比して高く、その他の Th
細胞サブセットよりも高い TCR クローナリティを有するサブセットであると考えられ
た。また ThA 細胞の TCR レパトアは一部が Th1 細胞と重複を認めることより ThA 細
胞が Th1 細胞と同一の対応抗原を認識する細胞集団であることが想定され、Th1 細胞
を由来とする液性免疫促進性のエフェクターメモリーCD4+ T 細胞集団である可能性も
示唆された。

以上、本論文は、RA における新規細胞サブセットとしての ThA 細胞を同定し、RNA-seq に
よる網羅的遺伝子発現解析により同サブセットが既報の各 Th 細胞とは異なる遺伝子発現プ
ロファイルを取ること、またその機能解析により実際に抗体産生誘導促進能を有すること、
TCR 解析により Th1 細胞を由来とする可能性が示唆されることを示した。このことは RA
患者層別化や、病態形成メカニズムに即した個別化医療の実現、新規創薬ターゲットの同定
に繋がる可能性を内包していると考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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