関節リウマチの免疫細胞プロファイリングによる治療予後関連遺伝子ネットワークの探索
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 山田 紗依子
本研究は関節リウマチ(RA)の治療抵抗性に関与する細胞とその経路の特定を目的とした。
末梢血単核細胞を 18 種の免疫細胞種 (サブセット) 別に分離し、各細胞サブセットで RNAsequencing (RNA-seq) を行うことで、トランスクリプトームを包括的に評価したものであ
り、下記の結果を得ている。
1. 新規治療前の RA の症例の末梢血免疫細胞 18 サブセットの RNA-seq データの
differentially expressed genes (DEGs)解析の結果、T 細胞選択的共刺激阻害薬である
Abatacept 治療による発現変動遺伝子は、治療反応群で多く見られた。特に Unswitched
memory B cells (USM B cells)や T 細胞の各サブセットに多く見られることが示された。
2. 同じく RNA-seq データの weighted correlation network analysis (WGCNA)の結果、
治療抵抗性 RA 患者の治療前末梢血では、USM B cells のミトコンドリア関連遺伝子の
発現亢進、治療前の dendritic cells precursors (pre DC)が増加しており、これらから治療
抵抗性を予測し得ることが示唆された。
3. 同じく RNA-seq データの B 細胞受容体(BCR)レパトア解析の結果、plasmablasts の
polyclonal な活性化から治療抵抗性を予測し得ることが示された。
以上、本論文は RA において、pre DC の増加、USM B cells のミトコンドリア関連遺伝子
の発現亢進、plasmablasts の polyclonal な活性化から治療抵抗性を予測し得ることを示した。
本研究の結果は、RA の層別化治療を可能にし得る。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。