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大学・研究所にある論文を検索できる 「Clinical significance of anti-NOR90 antibodies in systemic sclerosis and idiopathic interstitial pneumonia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Clinical significance of anti-NOR90 antibodies in systemic sclerosis and idiopathic interstitial pneumonia

山下, 雄太 名古屋大学

2022.07.04

概要

【緒言】
抗NOR90抗体は1987年にはじめて報告された、主に全身性強皮症において検出されるHEp-2細胞を基質とした間接蛍光抗体法で核小体パターンを呈する自己抗体である。しかし、全身性強皮症においても抗NOR90抗体の検出頻度は低く、他の全身性自己免疫性リウマチ性疾患(systemic autoimmune rheumatic disease: SARDs)でも検出されるため、抗NOR90抗体の臨床的意義は確立していない。また、特発性間質性肺炎の中にはIPAF(interstitial pneumonia with autoimmune features)と呼ばれるSARDsの性質をもつがSARDsの各疾患の診断基準を満たさない症例も見られ、抗NOR90抗体陽性の特発性間質性肺炎の報告もない。我々は、抗NOR90抗体を有する患者の臨床的特徴を明確にするために、同抗体を測定するためのELISAシステムを確立し、同抗体と臨床症状および合併症についての関連性を調査した。

【対象及び方法】
1994年から2020年にかけて名古屋大学医学部附属病院を受診した1252例の様々な疾患を有する患者(名古屋コホート)の血清と、2007年から2015年にかけて公立陶生病院を受診した244例の特発性間質性肺炎を有する患者(陶生コホート)の血清を対象とした後ろ向き研究を実施した。名古屋コホートの年齢の中央値は51歳で、全身性強皮症223例、オーバーラップ症候群38例(26例は全身性強皮症を含む)、混合性結合組織病21例、レイノー病23例、限局性強皮症23例、全身性エリテマトーデス141例、皮膚エリテマトーデス21例、多発性筋炎/皮膚筋炎187例、関節リウマチ38例、シェーグレン症候群134例、その他の疾患408例であった。全身性強皮症を含むオーバーラップ症候群26例を合算した249例の全身性強皮症は、観察期間不明、もしくはびまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型に分類不能であった46例の全身性強皮症患者を除外し、びまん皮膚硬化型55例、限局皮膚硬化型148例に大別された。陶生コホートの年齢の中央値は63歳であった。

NOR90抗体を次のような手順で検出した。まず両コホートの血清について、間接蛍光抗体法を施行し、核小体パターンを呈する血清を抽出した。次に、invitro転写翻訳系によって合成されたリコンビナント抗原を使用したELISAにより抗NOR90抗体を測定した。ELISAにて抗NOR90抗体陽性となった血清を、NOR90リコンビナント抗原を使用した免疫沈降法、K562細胞核タンパク抽出液を使用したウエスタンブロット法によって、ELISAの結果について確認した。上記方法で得られた最終的な結果についてフィッシャーの正確検定、独立したサンプルのt検定を用いて統計学的に評価した。P値はP<0.05で有意とした。

【結果】
間接蛍光抗体法により名古屋コホートから128例(10.2%)、陶生コホートから24例(9.8%)の核小体パターンを呈する血清を抽出した。陶生コホートのうち11例は血清を使用できなかったため除外され、名古屋コホート128例、陶生コホート13例に対してELISAを施行した。その結果、名古屋コホートにおいて5例、陶生コホートにおいて3例で抗NOR90抗体のELISAユニット値がカットオフ値を超えていた。これらの血清と、ELISA陰性血清のうちもっともユニット値が高かった血清、健常人血清に対して、免疫沈降法、ウエスタンブロット法を施行したところ、ELISA陽性だった血清のみ免疫沈降法、ウエスタンブロット法でともに抗NOR90抗体陽性となった。

名古屋コホートの抗NOR90抗体陽性症例は、びまん皮膚硬化型の全身性強皮症が1例、限局皮膚硬化型の全身性強皮症が3例(1例は関節リウマチとのオーバーラップ症候群)、レイノー病が1例であった。抗NOR90抗体陽性のびまん皮膚硬化型の全身性強皮症症例では抗RNAポリメラーゼIII抗体を併存していた。全症例中のSARDs症例とnon-SARDs症例の間では抗NOR90抗体保有に関して有意差は出なかったが(P<0.656)、全症例中の強皮症関連病態症例(P<0.656)、全症例中の強皮症関連病態症例(P<0.00101)、SARDs症例中の全身性強皮症症例(P<0.0104)において抗NOR90抗体が有意差をもって高頻度に検出された。また、抗NOR90抗体陽性の全身性強皮症4例中3例で間質性肺疾患を、2例で悪性腫瘍を合併していた。一方、陶生コホートにおいて、抗NOR90抗体陽性の特発性間質性肺炎3例中全例で消化管病変を、2例で全身性強皮症においてみられる皮膚病変を、2例で悪性腫瘍を合併していた。

【考察】
抗NOR90抗体陽性例はSARDs群、non-SARDs群間において有意差は認めなかったが、強皮症関連病態群では有意に非強皮症関連病態群より陽性例が多く、またSARDs群において、全身性強皮症群で有意に非全身性強皮症群より陽性例を多く認めた。また、抗NOR90抗体陽性全身性強皮症4例のうち3例は限局皮膚硬化型であり、残る1例も共存する抗RNAポリメラーゼIII抗体を反映して、びまん皮膚硬化型を呈していたと考えられるため、抗NOR90抗体は全身性強皮症、特に限局皮膚硬化型全身性強皮症を疑った際のバイオマーカーになる可能性がある。また、抗NOR90抗体陽性全身性強皮症4例のうち3例は間質性肺疾患を合併しており、抗NOR90抗体陽性特発性間質性肺炎3例のうち2例は全身性強皮症でみられる皮膚所見を合併していたため、抗NOR90抗体の存在は全身性強皮症と特発性間質性肺炎にオーバーラップする病態を示唆し、全身性強皮症の特徴をもつ特発性間質性肺炎のバイオマーカーにもなる可能性がある。

また有意差はつかなかったが、抗NOR90抗体陽性例8例のうち4例で悪性腫瘍を合併しており、NOR90が発がん性シグナル伝達の標的で、がん細胞内で過剰発現しているという報告もあることから、抗NOR90抗体陽性例では悪性腫瘍の合併に留意する必要があると考えた。

【結語】
以上の結果により、抗NOR90抗体は強皮症関連病態、およびSARDsにおいて全身性強皮症を疑う際のバイオマーカーになる可能性が示唆され、全身性強皮症の特徴をもつ特発性間質性肺炎のバイオマーカーにもなる可能性がある。また、抗NOR90抗体は全身性強皮症および特発性間質性肺炎において悪性腫瘍発生と関連している可能性もある。抗NOR90抗体は検出頻度の低い抗体であるため、陽性症例の集積には困難を伴うが、今後、同抗体陽性症例のさらなる集積と研究が必要である。また、我々が開発したELISAシステムは、これまで抗NOR90抗体検出のために用いられてきた免疫沈降法、ウエスタンブロット法と同等の結果を示し、同抗体検出のための簡便な検査法として有用である。

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