Experimental Study on Tertiary Creep Behavior of Soils in Ring-shear Tests and Its Implication for the Failure-time Forecast of Landslides
概要
これまで斜面の三次クリープ変形における速度と加速度がべき乗則の関係にあることが見いだされており,この関係に基づいた地すべり崩壊時刻の予測方法は世界的に広く応用されている.しかし,三次クリープの発現機構は未だに明確になっていない.そこで本研究では,降雨や斜面の地形改変に伴う応力変化による斜面のクリープ挙動に注目し,室内実験によって土層のクリープ変動メカニズムを検討した.論文は 5章より構成され,1章では研究の背景と目的,2章では対象の試料及び実験手法,3章では実験結果,4章では実験結果に基づくクリープ挙動の解釈及び今後の課題,5章では結論について述べられている.
実験材料は,地すべり地から採取した粘性土,珪砂,及び珪砂とベントナイトの混合物を用いた.これらを大型リング試験装置の供試体とし,飽和状態で一定の初期垂直応力とせん断応力状態下で圧密した後で,水圧を上昇させる,垂直応力を低下させる,及びせん断応力を上昇させる試験方法でせん断試験を行った.そして,せん断破壊に至るまでのクリープ変形,及びそれに基づいて解析した変位速度と加速度との関係について検討を行った.その結果,いずれの実験において,三次クリープ変形時の速度と加速度の間のべき乗則が確認された.しかし,べき数αと比例係数Aは,試料,せん断方法及びせん断履歴によって異なり,以下の特徴がある事が判明した.
1. 水圧を上昇させる,あるいは垂直応力を低下させる条件下における実験では,三次クリープ変形において,速度の増加に伴って,加速度がゆっくりと増大する(ステージ I),小さくなる(ステージ II),及び急速に大きくなる(ステージ III)と三つのステージに分けられる.ステージ I と III における速度と加速度の間のべき乗則が確認された.そして,ステージ I と III におけるべき数 α と比例係数 A が異なり,ステージ III におけるべき数 α が大きいことが分かった.また,試料の粘土含有率が多くなると, このような複数ステージ現象がなくなる.
2. せん断応力を上昇させる実験,及びすべり面やせん断ゾーンがすでに形成されている試料を対象にした実験では,複数ステージ現象が生じず,安定した速度-加速度のべき乗則を示す.
3. べき数 α と比例係数 A には,明確な依存関係がある.
水圧を上昇させる,あるいは垂直応力を低下させる条件下でのせん断実験で認められたα値の変化は,有効応力の低下によって,土層全体内での体積変化からせん断ゾーンの形成に伴う局所的せん断変形への変形メカニズムの変遷を示唆する.破壊直前における試料の体積変化が少ないことから,試料においてせん断変形がより局所的に生じていることと,形成されたせん断面の粗度がより少なくなったことが推測される.また,せん断履歴がある試料において,観測された体積の変化が少ないことより,せん断に伴う変形が,集中的に既存のせん断ゾーンにおいて生じていると推測される.これによって,α値の変化はなかったと考えられる.さらに,本研究で得られたα値及びその変化機構の解明により,より信頼性の高い地すべり崩壊時刻の予測手法を開発する可能性を論じた.