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大学・研究所にある論文を検索できる 「歯科用コーンビームCT画像を用いた下顎骨皮質骨の自動解析に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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歯科用コーンビームCT画像を用いた下顎骨皮質骨の自動解析に関する研究

水口, 貴詞 名古屋大学

2021.06.02

概要

1. 緒言
歯科用Cone Beam Computed Tomography(CBCT)は,歯科領域において,幅広く利用されている.歯科用CBCTでは,医科用CTよりも照射範囲を絞ることで,低被ばく・高分解能だが,不完全投影となり,散乱線や線質効果などの影響も受け,CT値に信頼性がないと言われている.下顎皮質骨における客観的な指標として,panoramic mandibular index (PMI),mandibular cortical width (MCW),omputed tomography mandibular index(CTMI)とcomputed tomography index(inferior)[CTI(I)]などが知られている.これらは腰椎骨密度と強い相関があり,女性における骨粗鬆症のスクリーニングに有用であるという報告がこれまでに数多くされている.しかしながら,手作業による計測を必要とし,計測に必要な断面の生成にも手間がかかる.また,CTMIやCTI(I)は下顎骨下端のみの計測のため,限局した皮質骨粗造化を評価できず,視覚的な骨質評価との不一致が生じるという問題もある.そこで,オトガイ孔近傍の下顎骨解析断面の生成,皮質骨厚計測,及び,皮質骨の骨質の解析を自動化し,視覚的評価と一致する。

2-1オトガイ孔付近の下顎骨解析断面の自動生成アルゴリズム
本研究では,下顎に沿った環状断様の断面(以下,解析断面)で,特にオトガイ孔を基準にその近傍のみに着目し,解析断面の自動生成を行った.歯科用CBCTで撮影された横断像を入力画像とし,ボクセル値800での2値化,3次元的ラベリング処理から下顎骨を抽出し,オトガイ孔の検出を行った.続いて,オトガイ孔を基準とし,横断像における顎骨の傾きに合わせた矢状断様画像を厚さ9mmのslab maximum intensity projection(MIP)画像として生成した.次いで,入力画像の横断像と上述の矢状断像と直行する,オトガイ孔基準点を含む顎骨の環状断様の断面を厚さ2mmのslab MIPとして生成し,この断面上の顎骨軸の傾きを算出した.3軸断面上での傾きからロドリゲスの公式用いて,撮影した空間座標系から,解析断面における空間座標系へと変換をする回転行列を算出した.この回転行列を用いて,オトガイ孔から前後4mmの範囲をボクセルサイズ0.2mmとし,解析断面(40枚)を自動生成した.

2-2下顎骨皮質骨厚の自動計測
生成された解析断面において,ボクセル値800で2値化,下顎骨の抽出を行った.次いで,抽出された頬側の下顎骨辺縁を下端から頭側に追跡を行い,オトガイ孔の検出を行った.オトガイ孔開口長が最大となる断面を解析基準断面とし,解析基準断面から前後2mmの範囲を解析範囲と定めた.解析範囲内の断面において,顎骨辺縁座標ごとに,顎骨辺縁に対する法線方向へのプロファイルを取得し,その半値幅を計測することで,皮質骨厚の計測を行った.法線ベクトルは,顎骨辺縁における周囲10pixel分の座標群から最小二乗法より算出した接線ベクトルから算出した.この時,解析断面内縦軸に対する法線ベクトルの角度αを皮質骨厚と同時に記録した.

2-3下顎骨皮質骨の自動解析
皮質骨―海面骨境界が不明瞭な場合においても,前項で得られた,FY群における正常皮質骨厚のデータを元に,推定される境界候補点をプロットし,候補点の連結を行うことで,境界線を推定した.推定では,正常皮質骨厚の平均±1標準偏差内におさまるよう半値幅,20%値幅を利用した.推定された点から,皮質骨辺縁座標との距離が2mm未満の点,皮質骨幅がα±30度における中央値の8割未満の点は除外した.皮質骨辺縁と,推定された境界線とで囲まれた領域に対して,縮小処理を行い,皮質骨解析領域とした.さらに解析領域を4つに分割し,各解析領域内の,平均ボクセル値,標準偏差,coefficient of variation(CV),interquartile range(IQR)tomedian(Med)ratioの計測をした.

2-4手動計測・主観的評価
Koh等によってCBCTに適応した下顎骨皮質骨の骨質評価指標を以下に示した.CTCIは,Kelmetti index(KI)をCBCTに適応した指標で,以下の3つのタイプに分類される.
C1:皮質骨内膜縁は均一で規則的,
C2:皮質骨内膜縁の半月状の欠損,または,皮質骨内膜が1〜2層認められる,
C3:皮質骨の層が3層以上認められる明らかな粗造化.
CTMIは,Ledgerton等によって提唱された下顎骨下端の皮質骨厚の計測をCBCTに適応させた指標で,CTI(I)はBuenson等によって提唱された下顎骨下端の皮質骨厚を下顎骨下端からオトガイ孔までの長さで除した指標をCBCTに適応させた指標である.これらの指標について,開発したプログラムにより自動生成された解析断面にて,臨床経験5年以上の歯科放射線科医が主観的評価(CTCI),及び,手動計測[CTMI,CTI(I)]を行なった.主観的評価(CTCI)については,71例全例(両側),手動計測[CTMI,CTI(I)]については,71例の中から無作為に抽出した19例(左右関係なく片側のみ)を対象として評価を行った.CTCIの観察者内変動,及び,観察者間変動は重み付けChoen’s kappaを用いて評価した.なお,観察者間変動については,全ての観察者の組み合わせによるKappa値の平均値とした.2つの年齢群FYとFOにおけるCTCIとCTMI,CTI(I),解析値(VV,CV,IQR/Med)との関係をBonferroni補正したMann-WhitneyのU検定を用いて有意水準5%に設定し,評価した.CTMI,CTI(I)の手動計測については,Intracrass correlation coefficients(ICC)によって,観察者内変動,及び,観察者間変動を評価した.また,皮質骨厚の手動計測と自動計測との比較においても,ICCを用いて評価した.

3.結果・考察71症例全例の両側において,下顎骨の自動解析断面の生成,CTMI・CTI(I)の自動計測,及び皮質骨の自動解析に成功した.自動処理の平均時間は,解析断面の生成で31.9秒,皮質骨厚計測で1.22秒,自動解析で2.9秒だった.CTCIにおける観察者内変動,及び,観察者間変動は,共に0.80で一致度は良好だった.FYとFO-C3との間,及びFO-C1とFO-C3との間で,有意水準5%でCTMI,CTI(I)共に優位な低値を示した.一方,VVでは,FO-C1とFO-C2との間に有意差が認められなかったが,CV,IQR/Medでは,FYとFO-C3との間以外の全ての組み合わせで有意差が認められた(p<0.01).VVでは,ビームハードニングの影響によりCTCIとの一致度(重み付けカッパ値)は0.55と高くなかったが,CVやIQR/Medでは,それぞれ0.83,0.74と高い一致を示した.自動計測と手動計測との比較において,全てのカテゴリーで,ICCは0.81を上回り,高い一致度を示し,自動計測の信頼性が確認された.パノラマX線画像における研究では,CTMI,CTI(I)がそれぞれ,3mm,0.3を下回ると,顎骨の骨量は大きく減少すると言われている.本研究では,CTMIが3mm未満となった症例が,C1で10.6%,C2で26.5%,C3で54.5%となった.CTMIでは,単に下顎骨皮質骨の下端の厚みであり,これら45.5%の症例では,下顎骨下端の皮質骨は正常だが,舌側や頬側に皮質骨の粗造化が認められた.CTMIだけで下顎骨皮質骨の広い範囲の骨質を評価することは難しいと考えられた.一方,皮質骨解析(CV,IQR/Med)では,広い範囲を4つの領域に分割することで,ビームハードニングの影響を受けず,CTCIとも高い一致を示す骨質評価を行うことができた.その結果,皮質骨厚の計測(CTMI)において,FO-C3の45.5%がCTCIとの不一致を示したのに対して,CVでは,FO-C3の約80%がCTCIと一致し,本手法による皮質骨自動解析では,CTCIとの一致度が大きく改善された.

5.結論
本研究では,下顎骨の特にオトガイ孔近傍直下の皮質骨厚の計測と皮質骨内部性状を評価する自動処理の開発に成功し,視覚的評価とも良く一致する客観的な皮質骨の骨質評価を行うことができた.解析断面の生成から皮質骨厚の計測・解析までにおよそ40秒程度で行うことができ,骨粗鬆症のスクリーニングを自動で簡便に行うことも可能になる.手動計測や視覚評価とも高い一致を示し,自動計測・解析の信頼性が確認された.また,今後,インプラント治療の術後予後のための骨質評価としても利用されることが期待される.

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