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大学・研究所にある論文を検索できる 「Optical Coherence Tomography Angiography to Quantify Choroidal Neovascularization in Response to Aflibercept」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Optical Coherence Tomography Angiography to Quantify Choroidal Neovascularization in Response to Aflibercept

Takeuchi, Jun 武内, 潤 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration; AMD)は黄斑部に脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization; CNV)を生じ、そこからの滲出や出血により不可逆的な中心視力の低下を引き起こす疾患であり、先進国の高齢者の主要な失明原因となっている。現在、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ペガプタニブなどの抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)薬の硝子体内投与が AMD に対する治療の第一選択であり、これらの薬剤を連続的に投与することで CNV からの滲出性変化を抑え視力の維持が可能となった。しかし、それのみで CNV の完全退縮を得ることは難しく、抗 VEGF 薬を長期間連続投与しても治療に抵抗性をもつ症例や再発を繰り返す症例も存在する。

近年登場した光干渉断層血管撮影(optical coherence tomography angiography; OCTA)は網膜の同一部位で超高速に数枚の OCT 画像を撮影し、赤血球のような血球の動きにより生じた OCT 光源の散乱光の微細変化を差として抽出し、非侵襲的に血管画像として再構築することが出来るようになった。さらに、高解像度の OCTA を用い画像操作を行うこと、すなわち層別解析機能を用いて網膜の各層を抽出して en face 画像を作成することにより、従来の眼底造影検査では難しかった立体的かつ微細な血管構造を描出することも可能になった。本研究ではこの OCTA の血管描出機能を駆使して複数回の抗 VEGF 薬治療による CNV の微細構造の変化を検討した。

【対象および方法】
2016 年 3 月から 2017 年 5 月にポリープ状脈絡膜血管症や網膜血管腫状増殖などの特殊な病型を含まない典型 AMD と新規に診断され、抗 VEGF 薬 3 回導入治療が施行された 15 例 15 眼(男性 10 例、平均 73.5 ± 7.4 歳、平均視力 0.38 ± 0.47 logMAR)を対象とした後ろ向き観察研究である。対象となった 15 眼のうち CNV が網膜色素上皮よりも深層のみに存在する type 1 CNV が 8 眼、CNV が網膜色素上皮を超えて伸展している type 2 CNV が 1 眼、type 1 CNV と type 2 CNV を両方含んでいるものが 6 眼だった。治療開始後 3 か月続けて抗 VEGF 薬硝子体注射を施行し、3 回目の注射の時点で CNV の疾患活動性が残存していると判定した症例には 4 回目の投与を行った。OCTで網膜下液(subretinal fluid; SRF)の残存、網膜内液(intraretinal fluid; IRF)の残存、網膜色素上皮剥離(pigment epithelial detachment; PED)の悪化のいずれかを認めた場合に、疾患活動性があると判定した。OCTA(AngioPlex®; CIRRUS HD-OCT model 5000, Carl Zeiss Meditec)を治療前、治療後 1、2、4 か月に施行した。OCTA において CNVを含むスラブと網膜血管を含むスラブをマニュアルで選択し、それぞれの en face 画像を作成後、CNV スラブの en face 画像から網膜血管スラブの en face 画像を減算することでプロジェクションアーチファクトを打ち消した CNV の画像を作成した。この画像をオープンソースソフトウェアである AngioTool version 0.6a を使用して血管面積と単位血管長当たりの血管分枝密度を評価した(Fig.1)。

【結果】
治療開始後 2 か月の時点で 15 眼中 13 眼は疾患活動性を認めなかったが、2 眼には SRF の残存を認めたため治療開始後 3 か月に 4 回目の硝子体注射を行った。治療開始後 4 か月の時点で、15 眼中 4 眼のみに OCT 上で疾患活動性を認め、その内訳は 1 眼が網膜下液(SRF)の残存、2 眼が網膜色素上皮剥離(PED)の悪化、1 眼が SRF の残存と PED の悪化の両方を認めた(Table.1)。治療前血管面積は平均 0.50 ± 0.33 mm2、治療前と比較した血管面積の変化率は 1、2、4 か月でそれぞれ 66.6%、80.5%、94.0%で、治療前と比較し 1 か月で有意に減少したが(P=0.0015)、4 か月では1か月と比較し有意に増加した(P=0.011)。治療前血管分枝密度は平均 4.70 ± 1.30/mm であったが 1 か月では平均 3.82 ± 1.06/mm になり治療前と比較し有意に減少した(P=0.00084)。しかし、2、4 か月では治療前と比較し血管密度に差はなかった(Fig.4)。

各症例を個別にみてみると、1 か月から 4 か月にかけて血管面積が増大した症例は 15 眼中 13 眼で、血管分枝密度も 15 眼中 11 眼で 1 か月から 4 か月にかけて増加していた。注射後1か月で狭細化した血管が 2、4 か月で血管径が増大した部位や、血管末端部にループ状血管が形成された部位がみられた。

【考察】
VEGF は血管内皮細胞を増殖させ新生血管を誘導することで、血管新生において重要な役割を果たしている。新しく形成される血管は周皮細胞や平滑筋細胞に覆われるまでは VEGF 依存性であるが、成熟すると VEGF 非依存性となり、従って抗 VEGF 薬治療に抵抗性を持つと考えられている。本研究においては未治療の CNV は抗 VEGF薬の初回投与により滲出性変化は改善し血管面積も縮小したが、一部の CNV は反応を示さず残存した。これは未治療の CNV においても抗 VEGF 薬に抵抗性を持つ VEGF非依存性の成熟血管が既に存在していることを示唆している。その後に硝子体注射を継続すると、黄斑部の滲出性変化は見られなかったにもかかわらず、CNV は新たに発生しており血管面積が有意に拡大していた。この結果は、CNV が抗 VEGF 薬治療に抵抗性に変化しているか、抗 VEGF 薬が病変まで有効にデリバリーされていない可能性があることを示している。つまり、抗 VEGF 薬の存在下でも CNV は拡大してしまっており、典型 AMD に対する抗 VEGF 薬単独治療の限界が示唆された。

CNV を定量化することは血管の形態的特徴や治療効果を評価するために重要である。今回明らかになったように従来の網膜血管造影検査と比較し OCTA は CNV をより詳細に描出することが可能である。滲出型 AMD に限らず、組織で血管新生が生じるときには、血管周囲の pericyte が剥がれ、Tip cell に先導されるように血管内皮細胞が増殖して血管の伸展が起こり、新たな血管が形成される。その後過剰な血管が剪定されて血管のリモデリングが起こり、幼弱な血管が消失することで血管は成熟すると考えられている。そこで、本研究では抗 VEGF 薬投与中の CNV の構造の変化の特徴を捉えるため、OCTA を利用して血管面積に加えて血管分枝密度も評価したことで、未治療 CNV に対する初回の VEGF 薬投与後には血管分枝密度と血管面積両方が減少したことが示された。このことは VEGF のパスウェイを遮断したにも関わらず、最初の一か月間で幼弱な血管が減少し血管の成熟化が進んだ可能性を示唆している。しかし予想に反して、2 回目の抗 VEGF 薬硝子体注射以降は血管分枝密度が減少し続けることはなかったことから、治療開始後 1~2 か月とうい短期間で抗 VEGF 療法に耐性を持ち血管の成熟化と血管新生の両方が進行していることが示唆された。

【結論】
OCTA 画像の定量分析により、初回の抗 VEGF 薬は未治療 CNV の血管面積と血管分枝密度を減少させるが、抗 VEGF 薬を 3 回連続投与したにも関わらず CNV は再拡大していることが明らかになった。このことは CNV が短期間のうちに抗 VEGF 薬治療に対して抵抗性を獲得してしまうことを示唆している。CNV の活動性をコントロールし、AMD の再発を防止するためには、今後 AMD 治療として抗 VEGF 薬単独治療に変わる新たな治療戦略が求められる。

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