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大学・研究所にある論文を検索できる 「審美領域において隣接して埋入されたプラットフォームシフティングを有するインプラント間の硬軟両組織の経時的評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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審美領域において隣接して埋入されたプラットフォームシフティングを有するインプラント間の硬軟両組織の経時的評価

佐藤, 匠 大阪大学

2021.03.24

概要

Ⅰ.目的
インプラント治療においては,治療の成功を評価する上で,機能的かつ審美的な結果が得られたかどうかが重要な指標となっている.インプラントと天然歯間,あるいはインプラントとインプラント間の軟組織の存在とその高さは,上顎前歯部において審美的な結果を左右する重要な要因である.単独のインプラント治療の場合,隣接する天然歯との間の軟組織の高さは,主に周囲骨の高さと隣在歯のアタッチメントレベルに関係していることが明らかとなっている.一方,インプラント治療に対する審美的な要求も高まっていることから,インプラント体が2本隣接する場合においても,インプラント間の軟組織を歯間乳頭様に再現し,審美的に良好な結果を得るための条件を見出すことが必要と考えられる.しかし,インプラント体が隣接して2本埋入されている場合,これらのインプラント間の軟組織を歯間乳頭様に再現することや,どの程度改善できるか予測することは困難とされている.

これまでに,インプラント間の距離を3mm以上に保つことや,インプラント間のコンタクトポイントの位置を骨頂から3~4mmの高さに設定することなどの基準が報告されているが,これらは,現在使用頻度が減少しつつあるバットジョイントを有するインプラント体を用いた研究結果に基づいている.近年,コニカルコネクションあるいはテーパージョイントと呼ばれるインプラント体の直径に対してひと回り小さい直径のアバットメントを連結し,インプラント体とアバットメントの接合部を内方に移動させたプラットフォームシフティングを有するインプラント体が,インプラント周囲の硬組織および軟組織の安定性を向上させることが明らかとなっており,使用頻度が増加している.そのため,新たにプラットフォームシフティングを有するインプラント体における,インプラント間の硬組織や軟組織を対象とした研究を行うことが必要である.

2017年に,上顎前歯部のインプラント間距離とインプラント間の軟組織に関するシステマティックレビューが報告されたが,採用された文献は4つに限られており,いずれもインプラント間の硬組織や軟組織の経時的変化を観察できていない.他の報告においても,プラットフォームシフティングを有するインプラント体を対象として,インプラント間の硬組織や軟組織の経時的変化を観察した報告はない.

そこで本研究では,審美領域において隣接して埋入されたプラットフォームシフティングを有するインプラント間の硬組織および軟組織を評価し,それらが経時的にどのような挙動を示すかを明らかにすることを目的とした.本研究は,大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理委員会の承認を受けた上で行った(承認番号R1-E19).

Ⅱ.材料および方法
解析1では,インプラント間の骨頂部位の骨吸収量を比較した.大阪大学歯学部附属病院口腔補綴科にて上顎前歯部もしくは小臼歯部に少なくとも2本のインプラント体を隣接して埋入した患者62名から,包含基準を,1)上部構造装着時(T1)と上部構造装着後約1年経過時(T2)にデンタルエックス線写真を撮影していること,2)プラットフォームシフティングを有するインプラント体が埋入されていること,3)固定性の上部構造が装着されていること,除外基準を,1)インプラント周囲炎に罹患していること,2)骨縁上に埋入されていること,3)最終上部構造に人工歯肉が付与されていること,4)デンタルエックス線写真が正法線投影法で撮影されていないこととし,患者26名のインプラント治療部位34か所を選択し,解析対象とした.まず,T1のデンタルエックス線写真上で,インプラント間距離(Inter-Implant Distance,IID),プラットフォームから骨頂までの高さ(Bone Height Platform(T1),BH-PL(T1))の2項目を計測した.同様に,T2のデンタルエックス線写真上でプラットフォームから骨頂までの高さ(BH-PL(T2))を計測した.これらの計測結果より,インプラント間の骨頂の骨吸収量ΔBH-PL(BH-PL(T1)−BH-PL(T2))を計算した.IIDを3mm未満と3mm以上,BH-PL(T1)を2mm未満と2mm以上に群分けし,それぞれΔ(BH-PL)を比較検討した.Δ(BH-PL)の有意差検定には,Mann-WhitneyU検定を用い,有意水準はα=0.05とした.

解析2では,インプラント間の軟組織の形態の経時的変化を比較した.解析1の包含基準に,T1とT2に口腔内写真を撮影していること,除外基準に,口腔内写真が対象部位の正面から撮影されていないことを加え,患者18名のインプラント治療部位24か所を選択し,解析対象とした.解析1の計測項目に加えて,T1のデンタルエックス線写真上で,骨頂からコンタクトポイントまでの距離(Contact Point-Bone Crest:CP-BC)を計測し,T1とT2の口腔内写真上で,Papilla Index(PI)を測定した.T1からT2にかけてのPIの変化を,インプラント間の軟組織の形態の経時的変化として評価した.CP-BCを4mm未満と4mm以上,IIDを3mm未満と3mm以上,BH-PL(T1)を2mm未満と2mm以上に群分けし,それぞれPIを比較検討した.PIの有意差検定にはFischerの正確確率検定を用いた.有意水準はα=0.05とした.

解析3では,インプラント唇側硬軟組織の厚みとインプラント間の硬軟組織の経時的変化量の相関関係を検討した.解析2の包含基準に,T1にCome Beam CT(CBCT)を撮影していること,除外基準に,T1時に口唇および頬粘膜を排除した状態でCBCT撮影されていないことを加え,患者15名のインプラント治療部位18か所を選択し,解析対象とした.解析1および解析2と同様に,デンタルエックス線写真および口腔内写真上でΔ(BH-PL)およびPIの変化を計測した.CBCT画像上で,プラットフォームレベルにおいて,唇側硬組織の厚み(Bone Thickness:BT)と唇側軟組織の厚み(Gingival Thickness:GT)の2項目を計測した.本解析では隣接する2本のインプラント体唇側の測定値の平均値を結果の値として扱った.T1における唇側硬軟組織の厚み(BT,GT)とΔ(BH-PL)およびPIの変化との相関関係についてSpearmanの順位相関係数により評価した.有意水準はα=0.05とした.

Ⅲ.結果および考察
解析1において,Δ(BH-PL)は,IID<3mm群とIID≧3mm群間で有意差を認めなかった(P=0.110)が,BH-PL(T1)<2mm群とBH-PL(T1)≧2mm群を比較すると,BH-PL(T1)≧2mm群において有意に大きかった(P=0.001).プラットフォームシフティングを有するインプラント体を使用することでインプラント頸部の骨吸収が抑制され,インプラント間距離が3mm未満になったとしても,骨頂の骨吸収量が大きくならなかったと考えられる.また,歯根膜からの血液供給のある天然歯と異なり,インプラント間では骨頂に対する血液供給量が減少し,BH-PL(T1)≧2mm群の骨頂の骨吸収量が大きくなったと推察される.

解析2において,PIは,BH-PL(T1)<2mm群とBH-PL(T1)≧2mm群を比較すると,BH-PL(T1)<2mm群における減少が有意に大きかった(P=0.047).インプラントの埋入位置は,理想的な歯冠形態から補綴主導で決定される.その際に埋入位置が深いBH-PL(T1)≧2mm群では,プラットフォーム上に2mm以上の硬組織と約4mmの軟組織が存在し,理想的な歯冠形態に近い上部構造を製作することが可能である.しかし,埋入位置が浅いBH-PL(T1)<2mm群では,理想的な歯冠形態の上部構造を製作すると,下部鼓形空隙を軟組織で満たすことが困難となる可能性が高い.そこで,コンタクトポイントを歯頸側に寄せた上部構造を製作せざるを得なくなる.結果として,BH-PL(T1)<2mm群におけるインプラント間の歯頸ラインからの軟組織の高さは低く設定されることとなり,同じ量の軟組織の高さの低下が起こった場合,PIがより低下しやすいと考えられた.

解析3では,GTとPIの低下に有意な負の相関関係を認め(r=-0.574,P=0.013),GTが大きいほどPIが低下しにくくなることが示された.過去の研究より,インプラント唇側の軟組織が厚いと軟組織の退縮に抵抗性を持つことが明らかとなっている.インプラント唇側の軟組織が厚いとインプラント唇側の軟組織の高さが維持され,それに伴いインプラント間の軟組織の高さが低下しにくくなると考えられる.

Ⅳ.結論
本研究から,プラットフォームシフティングを有するインプラント体を使用することで,インプラント間距離が3mm未満の場合でもインプラント間の骨頂の高さを維持できる可能性が示唆された.また,埋入位置が骨縁下2mm以上の場合,インプラント間の骨頂の骨吸収量は大きくなるが,その吸収量は軟組織の高さの変化に影響を与えるほどではなく,むしろ軟組織の高さを維持できる可能性が示唆された.さらに,隣接するインプラント唇側の軟組織が厚いほど,インプラント間の軟組織の高さが低下しないことが明らかとなった.

以上のことから,審美領域において,隣接して埋入されたプラットフォームシフティングを有するインプラント間の硬組織および軟組織が,経時的にどのような挙動を示すかが明らかとなった.

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