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大学・研究所にある論文を検索できる 「3次元有限要素モデルを用いた垂直歯根破折のメカニズム解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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3次元有限要素モデルを用いた垂直歯根破折のメカニズム解析

田中, 亮祐 大阪大学

2022.03.24

概要

<緒言>
 垂直歯根破折は、有効な予防法や治療法が確立されていないことから、う蝕および歯周病のメインテナンス中の患者においては最も多い抜歯理由であるという報告がある。垂直歯根破折は40、50歳代の上顎小臼歯および下顎大臼歯に好発し、その大部分は既根管充填歯に発生している。これまでに、数多くのin vitro研究による垂直歯根破折の発生メカニズムの解析や予防法に関する報告が存在するが、これらの多くは近遠心的に破折が走行しており、頰舌的に破折が起こる臨床における典型的な垂直歯根破折を再現していないことが問題点として挙げられる。そこで、本研究では非破壊下における力学的挙動の観察が可能となる有限要素解析(FEA)を用いて、臨床を反映した支台築造を施した歯根象牙質への応力集中を再現し、垂直歯根破折の発生メカニズム、および発生に影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。

<材料と方法>
 Computer-aided Design(CAD)ソフトウェア(SOLIDWORKS Premium, Dassault Systems, Concord, USA)を用いて、モデルの作成および応力解析を行った。一つの要因に着目して解析を行うために、主にCADソフトウェアのスケッチ機能を用いて前歯の形態を単純化したモデルを作成した。支台築造体、歯根象牙質、根管充填材ならびに歯槽骨を模したモデルを作成し、それらを組み合わせて各モデルの集合体としてアセンブリを作成した。材料特性に関しては過去の文献から弾性係数およびポアソン比を適用した。応力を与える方向、象牙質の厚み、および歯根の断面形態を変化させたモデルを作製し、それぞれの因子が象牙質に発生する引張応力に与える影響を解析した。
 マイクロCT(μ-CT2, リガク, 東京)を用いて修復の無い上顎小臼歯のDigital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)データを取得した。このDICOMデータをイメージベース構造解析ソフトウェア(VOXELCON2019, くいんと, 東京)のエクスポート機能を用いてStandard Triangulated Language(STL)データに変換し、CADソフトウェア(SOLIDWORKS Premium)を用いてソリッドモデルの作成を行った。手作業によるモデリングを加えて、クラウン、象牙質、支台築造体、ファイバーポスト、根管充填材、歯根膜、歯槽骨のモデルからアセンブリを作成した。材料特性に関しては過去の文献から弾性係数およびポアソン比を適用した。垂直歯根破折が発生する際の象牙質の破壊要因とメカニズムを評価するため、引張応力、圧縮応力、せん断応力に関して検討した。実験モデルとして、支台築造材料の違い、ファイバーポストの有無、およびフェルールの有無により6種類を設定し、象牙質における最大主応力を評価しその最大値と最小値を比較した。
 接着界面の状態が応力分布に与える影響を評価するため、すべての界面が結合している状態での解析に加え、象牙質と支台築造体、象牙質とガッタパーチャ、象牙質とクラウン、象牙質と歯根膜の界面に関して、接触する部品が共通の接点を持たず、それぞれの接点が自由に動けるように境界条件を設定することで、接着破壊が起こっている状態を再現した。結合しているモデルをBondモデル、接着破壊を起こしたモデルをDebondモデルとし、象牙質における最大主応力を解析しその最大値と最小値を比較した。また、Debondモデルにおいてフェルールの有無のみを変化させた2つのモデルに対して、合成変位の分布図を作成し評価した。分布図におけるモデルは、変形量を実スケールの30倍として作成した。

<結果および考察>
 単純化モデルを用いた解析では、象牙質に発生する引張応力は荷重が歯軸方向との角度が大きくなるにつれて明らかに増大し、垂直歯根破折の発生は、側方力に起因している可能性が高いと考えられた。また、歯根の厚みは象牙質に発生する引張応力に影響を与えなかったが、歯根の断面形態が扁平になるにつれ、象牙質に発生する引張応力が増大した。これは上顎小臼歯や下顎大臼歯近心根など扁平な歯根に、垂直歯根破折が好発するという事象を裏付けるものである。
 マイクロCTおよびFEAソフトウェアを用いることで、上顎小臼歯を模倣した有限要素モデルの作製・および応力分布の解析に成功した。45°方向に荷重をかけたところ頰側に引張応力、舌側に圧縮応力の集中領域を認め、これは垂直歯根破折の発生部位と一致していた。しかしながら、XY平面、YZ平面、XZ平面のせん断応力の集中部位は、垂直歯根破折の発生部位とは異なっていた。従って、垂直歯根破折の発生を評価する要因としては、引張応力および圧縮応力が適していると示された。
 上顎小臼歯モデルを用いた支台築造材料および修復歯形態に関する解析では、Bondモデル間での比較において、引張応力の最大値はフヱルールの存在するモデルでは比較的低い応力が示されたものの、支台築造材料による違いは殆ど認められなかった。また、圧縮応力に関しては、各モデル間で最大値ならびに応力分布の傾向において明らかな違いを認めなかった。
 DebondモデルとBondモデルの比較では、6種のモデル全てにおいてDebondモデルがBondモデルよりも高い引張応力ならびに圧縮応力を認めた。Debondモデル間の比較では、メタルポストコアを使用したフェルールの存在しないモデルが引張応力と圧縮応力の両方において最大値を示した。フェルールの存在は、象牙質に集中する引張応力を抑制する傾向が認められた。レジンコアを使用したモデルとファイバーポストを併用したモデルの比較では、BondモデルとDebondモデルの両方において、象牙質における応力分布には明らかな違いは認められなかった。変形図結果においてフェルールの無いモデルは歯冠部がポストコアの中央付近を中心に回転していたのに対して、フェルールの存在するモデルは回転が抑制されており、このことがフェルールの存在する条件では象牙質に発生する応力が低く抑えたと考えられた。
 界面の接着条件が、他のあらゆる要素と比較して象牙質への応力集中に大きな影響を与えたことから、臨床においても支台築造体と象牙質が高い接着力により一体化されていることが、象牙質への応力集中を防ぎ、垂直歯根破折を予防する上で重要な要素であると示唆された。

<結論>
 単純化されたモデルを用いたFEAにより、扁平な歯根は垂直歯根破折を引き起こす可能性が高いと考えられた。また、マイクロCTおよび種々のFEAソフトウェアを用いることで、上顎小臼歯を模倣した有限要素モデルの作製、および応力分布の解析に成功した。
本実験での結果より、象牙質と支台築造体における接着状態は象牙質に生じる応力分布に大きく影響を与えており、フェルールの存在は接着が破壊された場合においても、支台築造体の回転を抑えることにより、象牙質の応力集中を防ぐ役割を果たすことが明らかとなった。

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