Estimation of postcardiac arrest interval based on atrial cavity density in postmortem computed tomography
概要
令和4年2月
吉宮元応
主
学位論文審査要旨
査
藤
井
進 也
副主査
飯
野
守 男
同
上
田
敬
博
主論文
Estimation of postcardiac arrest interval based on atrial cavity density in
postmortem computed tomography
(死後CTにおける心房の吸収値に基づいた心停止経過時間の推定)
(著者:吉宮元応、上田敬博、生越智文、Dawa Zangpo、中留真人、飯野守男)
令和4年
Yonago Acta Medica
doi:10.33160/yam.2022.02.001
参考論文
1. Paravertebral compartment syndrome after exercise: a case report
(運動が原因で発症した傍脊柱筋コンパートメント症候群の1例)
(著者:生越智文、吉宮元応、一番ヶ瀬博、木村隆誉、亀岡聖史、吉岡早戸、
上田敬博、本間正人、榎田信平)
令和3年
Journal of Medical Case Reports
14巻
208
学
位
論
文
要
旨
Estimation of postcardiac arrest interval based on atrial cavity density in
postmortem computed tomography
(死後CTにおける心房の吸収値に基づいた心停止経過時間の推定)
死後CT画像(PMCT)では心・大血管内腔に血液就下として液面形成が観察されることが
ある。これは急死の場合は血管内皮細胞から組織プラスミノーゲンアクチベーター
(tPA)が分泌され、血液が流動血となるため、重力効果によって沈降した赤血球が背側
の高吸収域として認められ、腹側には血漿成分の多い血液が低吸収として認められるため
であるとされている。ここで、心停止直後からこの赤血球の沈降反応が進むと考えると、
死後CT画像の心腔内の血液の吸収値の差から、心停止時刻を推定できるのではないかと考
え、心停止経過時間と右房・左房のCT値の関係を調べた。
方
法
2017年から2020年までの4年間において、病院外心停止で発見された症例653例のうち、
最終生存から1時間以上経過している症例、心血管腔内に凝血塊が確認できる症例、心血
管腔が高度に虚脱している症例、死後CTが撮影されていない症例を除外した184例を対象
とした。これら対象者のPMCTの左下肺静脈流入レベルの水平断における右房前面(AR)と
左房後面(PL)の100mm2程度のエリアの吸収値(HU)を測定した。なお、推定心停止時刻
からPMCT撮影までの時間を心停止経過時刻(PCAI)とし、PCAIとAR、PLの相関係数を求め
た。
結
果
死因の内訳は、不詳が最も多く91例(49.5%)、次いで心大血管疾患(例:大動脈解
離、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、大動脈瘤破裂)が59例(32%)、窒息が22例
(12%)であった。全例の解析ではPCAIとARおよびPLともに相関関係は認められなかっ
た。心大血管疾患で死亡した患者59例に限ると、PCAIとARに弱い相関を認め(r=-0.44,
p<0.01)、回帰直線として、PCAI(分)=-1.725×AR(HU)+132.95の式が得られた。な
お、PCAIとPLの間に相関は認めなかった。また、窒息や死因不明例の解析ではPCAIとARお
よびPLともに相関関係は認められなかった。
考
察
心停止後の血液就下は心停止直後から開始されるものと思われ、心大血管疾患で死亡し
た場合、ARの吸収値はPCAIが長くなるにつれて低下するものと思われる。心大血管以外で
死亡した場合、相関は見られなかったが、疾患により内因性tPAの分泌量などが異なる結
果、赤血球の沈降速度が異なるためと推測される。PLの吸収値増加とPCAIは相関が見られ
なかったが、PLの吸収値はヘマトクリット値などにより影響を受けるためと思われる。ま
たARとPLの位置の違いから、胸骨圧迫に伴う心腔内の血流動態が異なる結果、ARとPLで違
いが見られた可能性は否定できない。本研究から得られた回帰直線は、心血管疾患で死亡
した症例にのみ適応できるものと思われる。
結
論
心大血管疾患で死亡した症例においては、ARの吸収値は心停止からの経過時間が長くな
ればなるほど吸収値が低下することがわかった。得られた回帰直線からPCAIを推定するこ
とが可能と思われる。