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大学・研究所にある論文を検索できる 「石庭の構成要素と配石原理に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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石庭の構成要素と配石原理に関する研究

宮, 江介 東京大学 DOI:10.15083/0002006076

2023.03.20

概要























江介

自然石の形状をそのまま生かして用いる我が国の石庭は、作庭空間に非対称な配置を行
う点に特有の美しさを作り出す独特な技法があると伝えられている。この技法は、長い歴
史の中で独自の発展をし、平安期の『作庭記』等を初めとする優れた作庭書にも記され、
現在においても国内に多数の名園を残している。しかし、その構成要素や配石原理につい
ては作庭書の中にも基本的な心得が抽象的に記述されているのみで、現場においてどの様
な技法や手順を用いるかの判断は経験豊かな庭師の感性に頼る所が大きい。また、現存す
る石庭や古典的な作庭技法書を学術の対象として捉え、分析、整理を試みる研究が行われ
てきているが、こうした一連の研究成果は特定の庭園や古典を研究対象としているものが
多く、操作論的観点から広く適用する原理の抽出には至っていない。
そこで本研究では少数の石で構成される小石群から石庭の全体景観に至るまで定量的な
分析を行うことにより構成要素と配石に関する原理を検討している。そして本研究の目的
としては、①実存する石庭に対する実態解析から、構成要素と配石原理を明らかにするこ
と、②古典の造園技法書と近代の庭園研究にみられる作庭技法の抽出・整理、及び石組実
験と作庭実験を通して庭師に受け継がれる配石技法の抽出・整理から、構成要素と配石原
理を抽出すること、③上記①と②の共通性や差異性について考察を行い、石庭の構成要素
や配石原理を明らかにすること、を掲げている。
第2章では研究方法として、対象の抽出と手法についての整理を行っている。対象につ
いては、先行研究や既往研究を参考にして対象石庭を 18 カ所選出するとともに、各石庭に
おける視点(18 点)と、視対象としての景石および石群(533 組)を抽出している。そし
て手法については、まず各石庭において石群等の配置に関する実態解析として、景石・石
群・全景などに関して各構成要素の高さや長径など 10 項目に関する順位づけと配置におけ
る相互関係について解析すること、次いで古典技法書および既往研究などで指摘されてい
る配石の考え方を整理し実態解析の結果との整合性を検討すること、更には実際に作庭に
携わる庭師への聞き取り調査と作庭実験を行い、これらを合わせて石庭の構成要素と配石
の原理について考察するという手順を述べている。
第3章の実態解析では、研究対象である 18 石庭に関して、構成要素である各景石・石群

の①最大体高、②最大長径、③高さ合計、④長径の合計、⑤見え幅、⑥最大質量(体積)、⑦
質量(体積)合計、の主項目ならびに、⑧質量(体積)減少傾向、⑨石群以外の構成物との位置
関係、⑩景石個体の特徴に関する効果や配石変化の有無、の補助項目、合計 10 項目に関し
て、要素の順位づけと要素相互の位置関係について解析を行っている。その結果、石庭に
おいては最も体高あるいは質量(体積)のある第一石群(景石)が中心となり、視点から
眺めた際の左側に配置され、そこから右方向に向けて数値の大きい順に配石されていくと
いう動的な均斉を示す傾向が高いことを明らかにしている。
第4章では「古典技法書」
「近代における庭園研究」「庭師の技法」の3つから配石の考
え方を抽出整理し、前章の実態解析より得られた傾向との整合性に関する検討を行ってい
る。先ず、古典技法書と近代庭園研究で示されている庭園の構成や石組の技法について整
理し、作庭記から 18 点の技法、庭園研究からも関連する指摘を抽出して、実態解析との整
合性について検討している。次に、
「庭師の技法」については実際の庭園写真を用いた聞き
取り調査と、模型や盆景を使った作庭実験から、非対称配置や動的な均斉を確認している。
これら結果から、
「古典技法書」と「近代における庭園研究」から実態解析との整合性が確
認され、作庭実験からも実態解析の結果に対する整合性を確認している。
第5章では、第3章の実態解析結果と第4章の整合性検討についてとりまとめ、自らの
先行研究と合わせて石庭における構成要素と配石原理について考察している。そして自ら
が先行的に研究してきた 2 石および 3 石で構成される小石群や 5~9 石の中石群における配
石についても合わせて検討し、小石群から全体石群に至るまで自己相似性を有しており、
体高や質量(体積)による順位づけと、左から右に向けての動的な均斉を有して配置され
る傾向が高いという共通性について論じている。
以上、本研究は石庭における構成要素とその配置のあり方について、現存する石庭にお
いて実態を解析するとともに、その結果に関して、古典的な作庭書および近代における庭
園研究からの配石技法の抽出整理、実務家である庭師に対する調査を通して妥当性を検討
した研究である。本研究で得られた結果と、それを導いた方法論は、今後の石庭の作庭技
法に関する研究および実践に大きな影響を与えるものと考えられ、学問上応用上寄与する
ところが少なくない。よって審査員一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値
あるものと認めた。

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