リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「日本庭園の特質認識と現代ランドスケープデザインへの影響に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

日本庭園の特質認識と現代ランドスケープデザインへの影響に関する研究

劉, 銘 東京大学 DOI:10.15083/0002004930

2022.06.22

概要

本研究は現代ランドスケープデザインにおける、国のアイデンティティの成立とその国の伝統的庭園のデザインボキャブラリーとの関係に問題意識を置いた。そのために、造園の伝統が⾧い、海外でアイデンティティがあると評価された日本の伝統庭園と現代ランドスケープデザインを対象として挙げた、①日本庭園の特質をデザインボキャブラリに整理する、②現代における日本庭園らしい空間の認識構造、③ランドスケープデザインから日本庭園のデザインボキャブラリを使った事例を集めて、そのデザインボキャブラリの活用方法を検討して試みた。この3つのステップを経て、最後に日本庭園の現代のランドスケープデザインに与える影響を考察する。

 第一章には、研究の背景、問題意識、目的、既往研究のまとめ、そして研究の進み方と研究構造を示した。いままで日本庭園の特質に関する既往研究の蓄積が大きいけれども、その成果は「自然に学ぶ」「素材と会話する」という抽象的な概念が多く現代への応用しようとしても、どこから手を着けてよいかわからない。具体的の形態として「曲線」、手法について「奥行き」、「見え隠れ」、「非対称」、「借景」、「縮景」が取り上げたものの、お互いの関係についての記述は足りないと思われ、重複する記述は多いと考えられる。

 そこで、第二章には、作庭書からデザインボキャブラリを抽出することを目的とした。江戸中期の『築山庭造伝 前編』と『築山庭造伝 後編』の二冊は、そのまでの庭園手法・技術をまとめて定式化された、あらゆる日本庭園の共通する特質を抽出するには相応しい資料と考えられる。庭園の構成は階層性の構成といえ、つまり単体からユニット、ユニットをまた一つの群とされ、ほかの群と大きいユニットを構成する…それを繰り返して、最後に庭全体を構成するということ。そういう階層を3つのレベルに簡易化して、各階層におけるデザイン内容を内部の「構成」「排列」と、外部との「境界部」「位置関係」「視線関係」に抽象化し、庭園における複雑で繁多な関係性を整理した。それからこの庭園モデルにそって、作庭書の文章を整理した。結果、単体に関しては3ヶ条、ユニットに関しては6ヶ条、庭全体に関しては7ヶ条のデザイン原則を抽出した。それをさらに「要素」「視線」「景観」「構造」という4つカテゴリーに分けて単語(=ボキャブラリー)を抽出し、最終的に40個のデザインボキャブラリに整理した。

 第三章は、現代の日本人が日本庭園らしさに対するイメージ、認識に関する研究した。庭園知識が比較的に持っている一般人と、造園の専門家のイメージを調査し、比較する作業を通じて、日本人が日本庭園らしいと思われる景観の認識軸、着目点、及びイメージ像を明らかにした。日本人のもつ日本庭園らしさのイメージを把握するには、逆説的な手法を使った、日本人が海外の日本庭園に対する違和感を手掛かりにした。第二章の庭園構成モデルに、要素自身の特徴と景観特徴を分けて、さらに具体的な記述を加え、「違和感を感じた理由書」を作って、選択式のアンケート調査で違和感を理由を収集した。結果、一般人と専門か考えた違和感が感じる理由は、提供された45条の理由の内35条が同じぐらい回答して、両者がもつイメージが一致する部分が多くとわかった。その差異は、一般人が単体要素に注目しやすく、もの自身の素材・形に違和感の理由を帰するに対し、専門家は複雑の要素間の排列に関心が高く、ユニットレベルの観察眼が持っていると考えられる。日本庭園の認識に際しては、人工物や植栽、石材、流れと言った主要な要素が目につき易く、その形態の伝統性や奥行き、隣接要素との納まりが重要であるが考えられる。一方で、色彩やテクスチャーなどの景観要素の周辺とのコントラストも着目され易い。そして日本庭園らしい景観のイメージが、「人工的な環境(剪定された樹木、ほどよい密度)の中に、象徴的な日本庭園要素が置かれている」にまとめた。

 第四章には、日本庭園のデザインボキャブラリーが現代ランドスケープデザインにおける応用を構成した。まず、第二章と第三章の成果を踏まえて、日本庭園のデザインボキャブラリーが日本庭園らしさの認識構造における位置づけて、現代に認識度が高いと思われるものとそうではないものを分けて、整理した。それから、造園作品選集から作品を紹介・評価する文章から、日本庭園のデザインボキャブラリーを作った事例と「伝統的」「日本的」と評価された事例を抽出した。結果、現代ランドスケープデザインに日本庭園と共通する特質を5カ条にまとめた。そのうち、「境界部を突破、存在を弱化する」と「自然素材:石と水の表情」は認識度が高いデザインボキャブラリに属する。古来の景観特徴であり、現代の見慣れた景観でもある。日本的な審美意識の景観表現と考えられる。そのほかは、「四季の変化を感じさせる植栽」「要素表面の素材感、素材感のコントラスト」「視線の移るを誘惑」、つまり要素の景観特徴と視線に関する特質である。

 そして第五章は、以上の成果をまとめて、総合的な考察をする。日本庭園的な景観の鑑賞対象と観賞の特徴が、現代にも活用されていると考えられる。日本の現代ランドスケープデザインにおいて、作庭者が無意識のうちに伝統に影響された部分と考えられる。

この論文で使われている画像

参考文献

第一章

1) 西沢文隆(1975):庭園論[Ⅰ]:相模書房

2) 西沢文隆(1976):庭園論[Ⅱ]:相模書房

3) 西沢文隆(1976):庭園論[Ⅲ]:相模書房

4) 田中正大(1967):日本の庭園:鹿島研究所出版会

5) 中村一,尼崎博正(2001):風景を作る—現代の造園と伝統的日本庭園:昭和堂

6) 進士五十八(2005):日本の庭園:中央公論新社

7) 小野健吉(2009):日本庭園—空間の美の歴史:岩波書店

8) 森蘊(1942):日本庭園の伝統 日本の美と教養:一條書房

9) 上原敬二(1962):日本式庭園:加島書店

10) 鈴木誠(1997):「日本庭園」の定義に関する考察:日本庭園学会誌5,16-22

11) 鈴木誠(1994):環境デザイン思潮からみた都市デザインと景観デザイン:デザイン学研究特集号 Vol.2,no.2,22-25

12) 江山正美(1959):現代の自然と造園:造園雑誌 23(3),14-18

13) 進士五十八(1989):現代社会と造園史研究:造園雑誌 53(2),95-100

14) 木村三郎(1986):枯山水論の行方:造園雑誌 49(5),67-72

15) 福田舒光(1938):作庭記の研究:建築学会論文集9巻,203-212

16) 丹羽鼎三(1940):作庭形式上より觀たる日本庭園の類別:造園雑誌7(3),128-136

17) 国土交通省総合政策局(2019):新しい時代に応える国土交通政策要旨:令和元年版国土交通白書概要,2-11

18) 杉原博(1938):新構成材料による日本庭園の進路:造園雑誌 5(2)

19) 鈴木誠(1986):庭園の経年的変化に関する研究:造園雑誌 50(5),36-41

20) 澤田天瑞(1976):庭園の背後思想と構成に関する研究 (XIII)夢窓国師と西芳寺庭園の構成について:造園雑誌 40(4)

21) 斉藤亜矢子,宮城俊作,田畑貞寿(1991):都市公園のデザインにおける地域性の演出手法に関する事例的考察:千葉大学園芸学部学術報告 (44),13-24

22) 進士五十八(1995):土地のランドスケープと土の造形デザイン:土と基礎 43(1),17-21

23) 稲次敏郎(1987):日本の作庭過程における「様」について : 日本のデザイン手法研究 1:デザイン学研究 1987(63),43-50

24) 飛田範夫(1999):日本の生垣の歴史的変遷について:日本造園学会誌 62(5),413-416

25) 小泉直介,進士五十八(2007):日本の伝統的作庭における技術、生産システム、作業従事者美意識の特質に関する研究:東京農業大学農学集報 52(1),23-32

26) 武内 和彦(2002):現代ランドスケープ・プランニングを捉える構図:日本造園学会誌 65(3),188-191

27) 張平星,深町加津枝,尼﨑博正,柴田昌三(2018):造園材料としての白川石および類似花崗岩の色彩的特徴の分析:ランドスケープ研究 81(5),467-472

28) 児玉治彦,三谷徹(2007):樹冠下の光環境からみる廻遊式庭園の空間構成:日本造園学会誌 70(5),501-506

29) 積田洋,島津美咲,福島顕次(2016):座観式日本庭園における空間認知特性と印象度の分析:日本建築学会計画系論文集 (725),1493-1502

30) 古井有子,鈴木誠(2001):浄土庭園の形態的特徴に関する考察:日本造園学会誌 64(5),409-412

第三章

引用・参考文献書籍

1) 福原成雄(2007):日本庭園を世界で作る:学芸出版社

2) 日本造園学会(2006):海外の日本庭園―事例報告書

雑誌論文(記事)

1) 劉 銘,下村 彰男,中村 和彦,山本 清龍(2019):海外の日本庭園に対する違和感にみる日本庭園らしさの認識構造:環境情報科学論文集 ceis33(0) ,19-24,

2) 金鐘龍,朴仁煥(2017):大韓民国内に造成された日本式庭園の特性研究:ランドスケープ研究(オンラン論文集)Vol.10,134-141

3) 熊倉 早苗,柴田 昌(2019):英国園芸雑誌ガーデナーズ・クロニクルからみた日本庭園に関する記事内容の推移:ランドスケープ研究(オンラン論文集)Vol.12,45-49

4) 牧田 直子,鈴木 誠,服部 勉(2010):海外の日本庭園-オーストラリア・ニュージーランドの日本庭園に関する研究-:日本庭園学会誌 (23) ,77-78

5) 鈴木誠,田崎和裕,進士五十八(1988):外国人の日本庭園観に関する比較研究:造園雑誌 52(5),25-30

6) 牧田 直子,鈴木 誠(2015):海外の姉妹都市日本庭園の歴史と日本側自治体から見た現状と課題:ランドスケープ研究 78(5) , 483-486

7) 鈴木誠,栗田和弥,麻生恵(1995):知日家欧米人の日本庭園に対する認識とイメージに関する調査研究:日本造園学会誌 58(5),5-8

8) 白志星,浅野二郎,沖中健,安蒜俊比古,藤井英二郎(1986):浜離宮及び小石川後楽園における水景の構成手法に関する研究:造園雑誌 50(5),227-232

9) 酒井拓,山本聡.前中久行(2004):日本庭園における苑路歩行時の注視に関する研究:日本造園学会誌 67(5),365-368

10) 張平星,深町加津枝,尼﨑博正,柴田昌三(2018):造園材料としての白川石および類似花崗岩の色彩的特徴の分析:ランドスケープ研究 81(5),467-472

11) 児玉治彦,三谷徹(2007):樹冠下の光環境からみる廻遊式庭園の空間構成:日本造園学会誌 70(5),501-506

12) 加藤博,下村孝(2009):京都における名勝庭園管理者へのアンケートによる意識調査:ランドスケープ研究 72(5),909-914

13) 鈴木誠(1998):欧米人の日本庭園観:日本造園学会誌 62(2),136-143

14) 岩田れい子(1992):日本庭園における空間の知覚について:造園雑誌 56(4),325-336

15) 佐々木ゆき,岡田準人,下村孝(2004):緑化された屋上における景観要素の違いが利用者の景観評価に及ぼす影響:日本緑化工学会誌 30(1),157-162

16) 坂戸省三(2002):空間構成におけるいわゆる日本的特徴の心理的背景について 空間イメージの文化的差異に関する心理・社会的分析 その 3:日本建築学会計画系論文集 67(552),335-342

第四章

書類

1)シビック・ランドスケープ研究会(1997):シビック・ランドスケープ:公害対策技術同友会

2)佐々木葉二,三谷徹,宮城俊作,登坂誠(2010):ランドスケープの近代―建築・庭園・都市をつなぐデザイン思考:鹿島出版社

雑誌論文(記事)

3)武内 和彦(2002):現代ランドスケープ・プランニングを捉える構図:日本造園学会誌 65(3),188-191

4)龍居竹之介(1984):日本の造園界が今, 問われているもの:造園雑誌 48(3), 187-191

5)斉藤亜矢子,宮城俊作,田畑貞寿(1991):都市公園のデザインにおける地域性の演出手法に関する事例的考察:千葉大学園芸学部学術報告 (44),13-24

6)石井圭,下村彰男,篠原修(1989):水辺階段の型と形に関する研究:造園雑誌 52 (5),217-222

7)猪股弘樹,横内憲久,岡田智秀(2001):都市内運河の特性と空間構成に関する歴史的研究―東京都江東区の運河を事例として―:土木計画学研究・論文集Vol.18, no.2,331-338

8)鈴木誠(1994):環境デザイン思潮からみた都市デザインと景観デザイン:デザイン学研究特集号 Vol.2,no.2,22-25

9)進士五十八(1989):現代社会と造園史研究:造園雑誌 53(2),95-100

10)篠原一男,北村吉一(1965):庭と中庭について:日本建築学会論文報告集号外,663

参考文献をもっと見る

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る