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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒト細胞における発がんモデルを用いたがん抑制性リボソームタンパク質の同定」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ヒト細胞における発がんモデルを用いたがん抑制性リボソームタンパク質の同定

高藤, 拓哉 TAKAFUJI, Takuya タカフジ, タクヤ 九州大学

2021.03.24

概要

リボソーム病は、リボソーム生合成の異常を原因とする疾患であり、その一部には易発がん性を示すものがある。実際に、多くのリボソーム関連遺伝子の変異が高発がん性リボソーム病における細胞がん化を促進する可能性が示唆されている。例えば、高発がん性リボソーム病の一つであるダイアモンドブラックファン貧血において変異の報告がある RPL5 (Ribosomal protein L5)や RPL11は、MDM2-p53 系路を阻害することでがん抑制活性を示す。しかし、RPL5 と RPL11 はそのがん抑制メカニズムが明確な一方で、高発がん性リボソーム病で変異が見られるその他の 10 以上の遺伝子とがん化との関係は不明である。そこで本研究では、どのリボソームタンパク質の抑制が実際にヒト細胞のがん化を惹起するのかを特定し、がん抑制活性が認められたものについてはそのメカニズムを解明することを目的として研究を始めた。

まず、16 型ヒトパピローマウィルス E7 及び活性型 KRAS を導入したヒト正常線維芽細胞である HFF2/T/E7/KRAS 細胞において siRNA により 9 つの当該リボソーム因子を発現抑制し、軟寒天コロニー形成試験を行った。その結果、RPL5、RPL11、RPS7、RPS17、RPS19 の発現抑制により足場非依存性増殖能の獲得が認められた。一方、RPL22、RPL23、RPL26、RPS14 の発現抑制ではそのような結果は得られなかった。つまり、がん抑制メカニズムがよく解明されている RPL5 とRPL11に加え、RPS7、RPS17 および RPS19 もヒト正常細胞においてがん抑制活性を持つことが示唆された。また、同細胞に RPL11、 RPS17 および RPS19 に対する shRNA を導入して安定的に各 RPを発現抑制した細胞を樹立し、軟寒天コロニー形成試験を行ったところ、コロニー形成が観察された。さらに、shRNA による RPL11 または RPS17 発現抑制細胞を用いてヌードマウスでの造腫瘍性試験を行ったところ、両細胞において有意な腫瘍形成が認められた。加えて、がんゲノムアトラス (TCGA)に登録されている臨床データを解析したところ、いくつかのがん種で p53 野生型のがん患者群において、RPS7、RPS17 および RPS19 のそれぞれに関して低発現群の方が高発現群より予後不良だった。これらのことから、RPS7、RPS17 および RPS19 がヒト細胞において実際にがん抑制的に機能していることが強く示唆された。

次に、RPS7、RPS17 および RPS19 によるがん抑制メカニズム解明に着手した。HFF2/T/E7/KRAS細胞を siRNA で処理し、その後アクチノマイシン D 処理を行うことで細胞に核小体ストレスを与え、p53 の誘導量を調査した。その結果、RPL5 または RPL11 を発現抑制すると核小体ストレスによる p53 誘導が減弱されたのに対し、RPS7、RPS17 および RPS19 の発現抑制では p53 誘導が増強された。したがって、RPS7、RPS17 および RPS19 は、MDM2-p53 系路を制御する RPL5、RPL11とは異なる系路を介してがん抑制活性を持つ可能性が示唆された。

その後、より詳細ながん抑制メカニズムの解明に向け、質量分析法による RPS7、RPS17 および RPS19 結合因子の網羅的探索を行い、各因子に特異的に結合するがん関連因子を複数同定した。その内、RPS17 結合因子候補としての核小体タンパク質 NPM1 に着目した。そして、NPM1 が細胞内で RPS17 と結合しており、RPS17 の N 末端に NPM1 との結合領域があることを明らかにした。また、NPM1 に関しても TCGA データを用いた解析を行ったところ、RPS17 が低発現で予後不良を示したデータセットでp53 野生型のがん患者群においてNPM1 低発現群の方が高発現群より予後不良だった。

以上より、本研究によって RPS7、RPS17 および RPS19 がヒト細胞においてがん抑制性リボソームタンパク質であることが明らかとなり、その内の RPS17 は NPM1 との結合を介してがん抑制性活性を発揮している可能性が示唆された。

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