異種相界面接合を利用したヘマタイト光電極による水分解の高効率化
概要
現在、太陽エネルギー変換への関心が高まっており、ヘマタイト(α-Fe2O3)は、安価かつ地球上に豊富で光安定性が高い上に、光電気化学(PEC)セルの水分解において酸素発生電極として働くため、注目を集めている。しかし、α-Fe2O3 自身の電気伝導性が低い(10-14 /Ω cm)ことやホールの拡散距離が非常に短い(LD=2~4 nm)ことによる電荷移動の悪さから、光励起電荷の電極内部での再結合が問題となっている。この問題に対して、異種物質の界面を導入し、エネルギー準位差を利用して光励起電荷を分離することで効率上昇させるヘテロ接合界面形成が用いられている。[1]しかし、この手法では、構成物質の違いによる格子不一致によって異物質界面に欠陥準位が生じ、再結合が増加することが問題となっている。本研究では、ヘマタイトとマグへマイト(γ-Fe2O3)という同じ組成を有する 2 つの酸化鉄を接合させ(α-Fe2O3/γ-Fe2O3 相接合)、構成物質の違いの影響を受けない欠陥準位の少ない界面を形成することで高い電荷分離を実現し、それによる高効率の達成を目的とした。