Landscape of Participant-Centric Initiatives for Medical Research in the United States, the United Kingdom, and Japan : Scoping Review
概要
〔目的(Purpose)〕
本研究は、スコーピングレビューと呼ばれる手法を用い、米国・英国・日本のいずれかにおいて実践されているPCIを体系的に把握し、具体的な機能や内容を分析することを目的とする。
近年、情報通信技術(ICT)が飛躍的に進歩し、医学研究への利用が期待されている。さらに、これらの技術を活用することで、研究参加者の主体的な参加を促進し、研究プロセス(研究デザインにおけるトピックの選択から研究の実施、研究結果の開示まで)を通して研究参加者が意思決定に関わることが可能となった。Participant-Centric Initiative (PCI)とは、このように、研究参加者が主体的に参加することを可能にする研究プラットフォームを用いた研究プロジヱクトのことを指す。これまでPCIに関する報告は数少なく、2012年以降の状況や具体的な患者参画の方法については十分に明らかにされていなかった。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
スコーピングレビューは、近年次第に利用され始めた包括的に関連文献を検索する手法である。本研究では、 MEDLINEを始めとする5種類の諭文データベース検索、グレイリテラチャーを対象とした文献検索、およびウェブサイト検索を行った。次に、独立したレビュアーによる段階的なスクリーニングを経て、最終的に得られた文献及びウェブサイトからPCIを同定した。
その結果、3力国で21の医学研究プロジェクトにおいて、ICTを用いた患者参画が実践されていたことが明らかになった。それぞれの実践について詳細を分析することで、2012年以降、PCIが顕著に増加していたことが分かっ た。また、希少疾患やがん、精神・神経疾患など幅広い疾患を対象として実践が進められていることや、これまでに少なくとも270以上の国際科学誌で研究成果が発表されているという近年の動向が明らかになった。さらに、本研究では、様々な活動の中でも患者が研究者と対等なパートナーとして位置付けられ、主体的に参画している取り組みに着目した。その結果、具体的な患者参画の方法として、研究プラットフォームを利用したリサーチクエスチョンの提案や、運営委員会への患者の参加などが行われていた。
〔総括(Conclusion)〕
スコーピングレビューにより、米国、英国、および日本で実践されていた21のPCIを同定した。本研究によって、近年のPCIの動向や、ICTを用いた患者参画の具体的な方法が明らかになった。PCIは新しい動きであり、今後さらに日本や諸外国において広く実践されることが予想される。本研究の成果は、医学研究における研究参加者と研究者の有意義な協働の実現に貢献することが期待できる。