眼窩内海綿状血管奇形における新規関連遺伝子変異の同定と機能解析
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 本郷 博貴
本研究は、眼窩内海綿状血管奇形において病態に関連する体細胞遺伝子変異の解明を
試みたものであり、以下の結果を得ている。
1.
眼窩内海綿状血管奇形を含む血管腫・血管奇形疾患に対する deep シークエンスおよび
droplet digital polymerase chain reaction を行い、眼窩内海綿状血管奇形 26 例中 25
例(96.2%)において GJA4 (Cx37) c.121G>T (p.Gly41Cys)を同定した。
2.
眼窩内海綿状血管奇形病変 1 例に対し、magnetic-activated cell sorting を行った後に
droplet digital polymerase chain reaction を行うことで、CD31 陽性細胞で variant
allele frequency が高くなる結果をえた。これにより、病変中でも血管内皮細胞が同変
異を有する可能性がより高いことを示した。
3.
Xenopus oocyte を用いた whole cell voltage clamp 実験により、同変異により GJA4
ヘミチャネル活性が上昇することを同定した。これにより、同変異がヘミチャネル活性
を上昇させる機能獲得型変異である可能性を示した。
以上、本論文は GJA4 (Cx37) c.121G>T (p.Gly41Cys)が眼窩内海綿状血管奇形に高頻度
に認められること、および同変異が機能獲得型変異と考えられることを示した。分子生物
学的な知見が急速に蓄積しつつある全身の血管奇形疾患の分野において、新規の血管奇形
関連遺伝子の候補としての可能性を提示した。血管奇形の病態に関わる新たな分子学的機
序として、今後の血管奇形治療における新規治療法の開発にもつながる可能性があること
からも、本研究は意義が大きいと考えられる。
よって本論文は博士(医学 )の学位請求論文として合格と認められる。