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大学・研究所にある論文を検索できる 「Usefulness of parameters of the XN-Series hematology analyzer for patients with suggested bacteremia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Usefulness of parameters of the XN-Series hematology analyzer for patients with suggested bacteremia

宮嶋 友希 富山大学

2022.03.23

概要

〔目的〕菌血症は感染症の中でも重症化することが多く,死亡率も高い疾患である.菌血症の診断は一般的には血液培養を用いられるが,検体を採取してから結果が出るまでに時間を要するために,より迅速に検査可能なバイオマーカーが期待される.フローサイトメトリー法を用いたシスメックス社多項目自動血球分析装置から得られる白血球関連パラメーターが敗血症患者で変化を認めたことが報告されている.白血球関連パラメーターは白血球分画測定時に解析でき,簡便に利用可能な検査であることから,菌血症の早期診断に有用である可能性が考えられた.今回,菌血症診療における白血球パラメーターの有用性を検討した.

[方法]富山大学附属病院にて2017年7月1日から2018年1月31日にかけて院内で菌血症が疑われた患者および健常ボランティア37名を対象とした.菌血症が疑われた患者を血液培養とリアルタイムPCR法を利用した微生物検査であるTm mapping法(SciRep.2015;5:12543)を用いていずれかの検査にて微生物が検出された症例を菌血症群,検出されなかった症例を非菌血症群に群分けを行った.カルテベースに年齢,性別などの臨床背景,シスメックス製多項目自動血球分析装置(XN-2000,Sysmex)を用いた白血球関連パラメーター,各種検査結果などを調査し,白血球関連パラメーターの有用性を検討した.さらにTm mapping法で微生物が検出された症例に関しては菌数を交えた検討も行った.統計解析はEZRを用いMann WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定にて検定を行い,2変量の相関に関してはSpearmanの順位相関係数rにより評価した.有意水準はp<0.05とした.

[成績]122症例が菌血症疑い症例となり,血液培養,Tm mapping法により菌血症群45症例,非菌血症群77症例に群わけられた.血液培養では28例,Tm mapping法では32例の微生物が検出された(重複症例を含む).血液培養,Tm mapping法ともにEscherichia coliが最も多く検出された.菌血症群,非菌血症群,健常者群で白血球パラメーターを比較したところ,好中球の側方蛍光の平均強度を示し,好中球内の核酸や細胞小器官の多寡を意味するNE-SFL(SFL; side fluorescence light)と好中球の側方蛍光のばらつきを示すNE-WY(WY; fluorescence distribution width)が菌血症群で有意に高値を示した.リンパ球,単球では白血球関連パラメーターに有意差は認めなかった.菌血症診断におけるROC曲線を作成し比較を行ったところ,Area Under the Curve(AUC)はNE-SFLで0.704(感度0.605,特異度0.800,カットオフ値51.600)と比較的高い正確性であったが,NE-WYは0.641(感度0.419,特異度0.840,カットオフ値771.000)と高い正確性ではなかった.Tm mapping法で微生物が検出できた32症例に関して1mLあたりの菌数と好中球関連パラメーターとの相関の確認を行ったところ,NE-SFLと菌数との相関係数はr=0.197,NE-WYと菌数との相関係数はr=0.36と強い相関は認めなかった.また,炎症性サイトカインとの関連を調べるためにInterleukin-6(IL-6)とNE-SFL,NE-WYとの相関を確認したところ相関係数はそれぞれr=0.197,r=0.614と比較的強い相
関を認めた.

〔総括〕菌血症群と非菌血症群間でNE-SFLとNE-WYが有意に高値を示した.核酸量の多い幼弱白血球が末梢血へ動員されることにより好中球内の核酸量が増加し,好中球内の核酸や細胞小器官の多寡を意味するNE-SFLが高値となったと考えられた.また,自然免疫により応答し,アポトーシスやネクローシス,NETosisなどの機序により細胞死に向かう好中球も存在し,そのため,末梢血へ動員される幼弱白血球と細胞死する好中球の両方が混在することにより好中球の側方蛍光のばらつきを示すNE-WYが高値となったと考える.特に菌血症ではその影響が顕著に現れたと考えられた.今回は通常の血液培養での微生物の検討に加えて,Tm mapping法も用いることで定量的な解析も行った.菌血症症例で有意な高値を示したNE-SFLとNE-WYについて,NE-SFLと菌数では相関は認めなかったが,NE-WYと菌量での相関を認めた.他に白血球パラメーターに影響を与える可能性のある因子としてIL-6等のサイトカインによる影響も検討し,IL-6とNE-SFL,NE-WYでの相関を確認したところ,ともに相関を認め,NE-WYでより強い相関を認めた.Tm mapping法はバッフィーコートを含む血漿を用いて検査を行っており,菌数は血漿中に浮遊する菌数と好中球による貪食を受けた菌数を反映している.貪食に関与している好中球とサイトカインによる影響を受けた好中球が混在しバラツキが生じてNE-WYが高値となった可能性が考えられた.今回の検討では白血球関連パラメーターのうち好中球関連パラメーターのNE-WYがより菌血症の病態を鋭敏に反映している可能性が示唆された.ただし今回の検討ではサイトカインの産生のタイミングや貪食のタイミングの検討ができておらず今後時系列データを含む検討が必要と考えられる.
菌血症は重篤な転帰となることが少なくなく,重要な疾患である.菌血症における特異的なバイオマーカーは存在せず,血液培養で微生物を検出・同定することがGoldenstandardとなっているが,結果判明までには時間を要するためにより迅速な検査が望まれる.白血球パラメーターのみを用いて菌血症を特異的に診断することは難しいが,迅速性,簡便性,経済性の面からは菌血症診断の一助となる可能性がある.菌血症診断の精度を高めるために,複数のパラメーターを組み合わせた診断アルゴリズムの構築などが今後必要であると考えられた.

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