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大学・研究所にある論文を検索できる 「Endoscopic Activity and Serum TNF-α Level at Baseline Are Associated With Clinical Response to Ustekinumab in Crohn’s Disease Patients」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Endoscopic Activity and Serum TNF-α Level at Baseline Are Associated With Clinical Response to Ustekinumab in Crohn’s Disease Patients

村手, 健太郎 名古屋大学

2021.06.29

概要

【緒言】
クローン病(CD)に対する新たな生物学的製剤であるIL-12/IL-23阻害剤:Ustekinumab(UST)が2017年に承認された。CDはTh1とTh17の経路の関与が知られているが、USTはIL-12とIL-23に共通するp40に対する抗体製剤であり、その両方の経路を抑制する事で腸管の炎症を抑制する薬剤である。臨床試験でも実臨床の場でも高い有効性と安全性を示しているが、まだUSTのCDに対する治療効果の予測因子に対する検討は不十分である。現在CDに対する生物学的製剤は複数の臨床試験が行なわれており、今後の治療選択肢の増加が予測される。その中で患者個々人の状況に合わせた治療効果予測因子の必要性が高まっている。その為、本研究はUSTの治療効果を解析すると共に治療効果を予測する因子を検討する事を目的とした。

【方法】
本研究は名古屋大学附属病院の倫理委員会の承認を得て行なわれている。対象は名古屋大学附属病院で2017年10月〜2019年5月の間にUSTを継続して1年間使用した中等症以上(Crohn’s disease activity index:CDAI220以上)のCD患者22人を対象とした。その22人を24週時点(最適治療効果判定時期)でのCDAIにて治療反応群(CDAIが導入前より100点以上低下するか、150以下になった者)と非反応群(それ以外の者)に分けて、比較評価した。評価時期は導入前、導入後8週、24週、48週とした。評価項目は患者背景、内視鏡score(SES-CD)及び生検検体の免疫染色,血清のUSTの濃度及び各種炎症性サイトカインの濃度及びPBMCを用いた各種サイトカインの分画とした。血清のUST濃度及び各種サイトカイン濃度はELISA法で測定し、PBMCを用いた各種サイトカインの分画はFlowcytometry(FACS)で評価した。

【結果】
名大病院で2017年10月〜2019年5月の間にUSTを導入されたのは60人であり、中等症以上で48週以上継続した者は22人であった(Figure1a)。22人の患者背景は男性14人、女性8人で、年齢は平均42.5歳で、罹患部位は81.8%が小腸大腸型であった。免疫調整剤併用患者が、36.4%で、前治療で抗TNF-α製剤使用歴のある者は72.7%であった(Table1)。実際の治療効果に関しては、臨床的反応(CDAIが導入前より100点以上低下するか、150以下になる)率は8週時点で59.1%、24週時点で68.2%、48週時点で54.5%であった(Figure1b)。臨床的寛解(CDAI150以下になる)率はそれぞれ、31.8%、45.5%、40.9%であった(Figure1c)。最適治療効果判定時期の24週で評価した治療反応群は15人で非反応群は7人であった。その導入前の患者背景に差は認めなかった(Table2)。SES-CDは導入前の平均は11.50(反応群:9.00、非反応群:16.86)で,24週時点では反応群は低下するが、非反応群は低下しなかった(Figure1d)。血清UST濃度は8週時点、24週時点共に反応群が非反応群に比べて有意差を持って高かった(Figure1e、1f)。

本研究では治療効果予測因子を二項目特定したが、一つ目はSES-CDであった。導入前のSES-CDは反応群が非反応群と比較し有意差を持って低く、cut-off値は13.00であった(Figure2a、2b)。なお、24週時点でも反応群の方が低く、SES-CDの低下量は反応群が高かった(Figure2c、2d)。二つ目は導入前の血清TNF-αの濃度であった。反応群は非反応群より導入前の血清TNF-αの濃度が有意差を持って高く、Cut-off値は19.58pg/mlであった(Figure3a、3b)。そしてその値は治療効果により低下する傾向であった(Figure3c、3d、3e)。そしてTNF-αの値がCDAIやCRPといった疾患の状態と関連する因子との相関関係を解析したが、TNF-αの値はCDAIやCRPと相関を認め無かった(Figure3f)。さらにPBMCを用いて、FACSで解析すると、導入前の反応群は非反応群と比較し、CD4陽性(ヘルパーT細胞)のTNF-α陽性細胞が有意に高かった。中でもCD4陽性IFN-γ陽性TNF-α陽性細胞とCD4陽性IL-17A陽性TNF-α陽性細胞に差を認めた(Figure4a、4b、4c、4d、4e)。(CD4陽性IL-4陽性TNF-α陽性細胞は差を認めなかった(Figure4f、4g))。そしてそれは、ELISAの結果と同様に治療効果により低下した(Figure5a、5b、5c、5d)。またCD11b、CD11cのコンビネーション(樹状細胞やマクロファージに相当)のTNF-α陽性細胞は全ての組み合わせにおいて差を認めなかった(Figure6)。また内視鏡での生検検体の免疫染色(全例での解析ではないが)でも、UST導入前の反応群が非反応群よりTNF-αが高い傾向にあり、血液と組織は相関する傾向であった(Figure7)。

本研究で特定した二つの予測因子を組み合わせて見ると、両方陽性の群(92.3%)と両方陰性の群(25%)では有意差を持って治療反応率に差を認めた(Figure8)。

【考察】
本研究で我々は実臨床におけるUSTの高い有効性と安全性を確認した。そして本研究にて特定した治療効果予測因子は、導入前の内視鏡score:SES-CDが低い事、そして導入前の血清TNF-αの濃度が高い事であった。TNF-αは炎症性サイトカインであり、膜貫通タンパク質(mTNF-α)として生成され、変換酵素(TACE)により切断され、可溶性TNF-α(sTNF-α)になる。どちらの形態のTNF-αも生物学的に活性であり、2つの異なる受容体を介してシグナルを伝達する。本研究ではsTNF-αの濃度は、導入前で非反応者よりも反応者で高かった。またTNF-αはマクロファージやT細胞など様々な細胞から産生されることが知られているが、本研究ではPBMCを用いたFACSの結果、CD4陽性TNF-αに差があり、CD11bとCD11cの組み合わせでは差は認めなかった。これはTNF-αにおいて、ヘルパーT細胞樹状細胞やマクロファージ由来には差を認めないという結果である。これらの結果は、USTが炎症性サイトカインの発現を調節するT細胞上の受容体との相互作用を阻害することによりIL-12およびIL-23を遮断するメカニズムに基づいて説明できる(抗TNF-α製剤は、sTNF-αとmTNF-αの両方を遮断し、マクロファージとCD4+T細胞にアポトーシスを誘導すると報告されている)。USTは、抗TNF-α製剤とは異なるメカニズムでTNF-αレベルを調節するからである。また先行する乾癬の研究では、本研究と同様に、導入前の高いTNF-αのレベルがUSTに対する臨床反応と相関していた。この事実もこの予測因子の信憑性を裏付ける結果と考える。元々CD患者の血清および腸検体には、TNF-αの上昇が見られるが、本研究でも腸検体のTNF-αレベルは、血清TNF-α濃度と相関関係があった。しかし、血清TNF-α濃度はCDAIやCRPと相関しなかった。その為、予測因子において血清TNF-α濃度は独立した因子であると考える。また内視鏡での腸管粘膜の炎症程度の評価ではその他の生物学的製剤同様、導入前の低いSES-CDはUSTの効果と相関した。本研究結果から、内視鏡での腸管の炎症程度の評価をする事は重要であり、なるべく早期に内視鏡検査を施行し、評価後に高い血清TNF-α濃度の患者を絞り込むことが推奨される。また二つの予測因子の組み合わせはより高い確率で治療効果を予測できる結果であった。更にこの二つの予測因子は、患者の症状で患者を分けた場合でも、腸管の炎症程度でも同様の傾向の結果であった。

我々は、これらの発見は、臨床医が中等度から重度の活動性CD患者に適切な治療法を選択するのに役立つと考える。CD患者の為の生物製剤の進歩に伴い、最適な薬物を決定する為の治療戦略は非常に重要になってきている。その為により精度の高い予測因子の発見が重要である。それに伴い治療反応率を改善し、寛解期間にも影響を与えることが期待されている。

【結論】
本研究で得られた二つの予測因子の組み合わせは、臨床的に有用なツールとなり、臨床医がCD患者に最も適切な治療法を選択するのに役立つ。

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