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大学・研究所にある論文を検索できる 「Electrical characterization of bulk heterojunction organic thin-film photovoltaics」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Electrical characterization of bulk heterojunction organic thin-film photovoltaics

中塚 英美 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017365

2021.04.21

概要

現代社会は情報の送受が活発になっており、物と物を情報で繋ぐ物のインターネット(IoT)、機械学習による予測技術である人工知能(AI)、さらに、膨大な情報量の通信を可能にする第 5 世代移動通信システム(5G)がなくてはならない存在になっている。これらの新規技術が発展するに従い、今まで以上に電力が必要になると予想される。地球上の化石燃料の埋蔵量には限界があるため、再生可能エネルギーの活用が必須となる。再生可能エネルギーには太陽光発電、水力発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電などがある。

太陽光発電は、身近な再生可能エネルギーである太陽光を活用した発電方式である。現在の主流である結晶および多結晶シリコンを用いた太陽電池は、製造工程で高温が必要となるため高コストであるのに対し、有機薄膜太陽電池(以下では単に有機太陽電池と記す)はドナー性有機半導体とアクセプター性有機半導体の混合溶液を塗布することでバルクヘテロ接合の製造が可能であり、製造コストが比較的安価である。さらに、使用する有機半導体の特徴を活かし、太陽電池の色を調整することが可能で、軽量、フレキシブルであることに加え、デザイン性も付与することができる。このような利点により、シリコン太陽電池に代わる次世代太陽電池として期待されている。

有機太陽電池の発電原理は、光照射により有機半導体が光を吸収し励起子が発生、励起子がドナー/アクセプター界面に拡散、ドナー/アクセプター界面に到達した励起子が自由電子・自由正孔に乖離、自由電子・自由正孔の陰極・陽極への移動に基づいている。電力変換効率を改善するためには、広範囲の太陽光を吸収し、電力に変換する必要がある。また、光生成した自由電荷が再結合する前に収集電極に到達する必要がある。最近では、Scharberプロットによるドナー性有機半導体のエネルギー準位予測に基づく高分子材料の開発が進められている。さらに、アクセプター性有機半導体としてフラーレン誘導体が長年用いられてきたが、非フラーレン材料により電力変換効率が 18%程度に向上している。しかし、有機太陽電池は、デバイス寿命が短いという欠点があるため、太陽光に晒されることによる性能劣化を解析し、原因を究明、改善することが実用化に向けての課題となっている。

本研究では、有機太陽電池の実用化に向け、性能劣化の原因を明らかにするための解析手法を開発した。有機太陽電池の蛍光灯照射下での使用は IoT デバイスの電源として重要であるため、まず、蛍光灯照射下における Scharber プロットの有用を示した。さらに、有機太陽電池の電力変換効率と電子物性との関連を明らかにするため、電子・正孔移動度を同時測定できる変調光電流分光法、2 分子再結合定数を測定できる開放光起電力減衰法を示す。これらの方法は、電子物性測定のための特別なデバイスを作製する必要はなく、太陽電池特性を評価した有機太陽電池そのものの電子物性評価が可能となる。このような手法から得られる情報は、有機太陽電池の劣化解析、有機太陽電池の構造設計や最適化を行う際に有用となる。

これらの研究成果について、以下の 6 章にまとめた。
第1章では、本研究の背景と研究目的について述べた。

第2章では、高分子ドナー材料とフラーレン誘導体([6,6]-pheynl-C61-butyric acid methyl ester (PC61BM)および[6,6]-pheynl-C71-butyric acid methyl ester (PC71BM))をアクセプター材料に用いたバルクヘテロ接合型有機太陽電池において、様々なドナー材料のエネルギー準位が電力変換効率に与える影響を調べた。有機太陽電池の太陽光照射下の電力変換効率とドナー材料の最低空軌道準位(LUMO)、LUMO と最高占有軌道準位(HOMO)との差の関係を等高線表示した Scharber プロットを計算した。計算した Scharber プロットは、実験値とほぼ一致した。さらに、蛍光灯下の Scharber プロットも計算した。PC71BM を用いた有機太陽電池では蛍光灯下での電力変換効率は疑似太陽光(AM1.5)に比べて 2 倍程度高いと予測された。実際、 poly[[4,8-bis[(2-ethylhexyl)oxy] benzo[1-2-b:4,5-b’]dithiophene-2,6-diyl][3-fluoro-2-[(2-ethylhexyl)carbonyl]thieno[3-4-b]thiophenediyl]](PTB7)と PC71BM による有機太陽電池を作製し、蛍光灯、AM1.5 照射下の電力変換効率を測定すると、計算結果と矛盾のない結果が得られた。一方、Scharber プロットの計算値とは一致しない実験結果も存在するため、以下の章で述べる電子、正孔移動度、2 分子再結合定数などの電子物性も含めた効率予測が重要であることがわかった。

第3章では、有機太陽電池における電子・正孔移動度同時測定法としてインピーダンス分光法と変調光電流分光法を比較し、変調光電流分光法が有効であることを示した。インピーダンス分光法では陽極、陰極から正孔、電子を注入し、走行時間効果を観測する手法であるが、変調光電流分光法では、電子、正孔を光生成し、その抽出過程を光電流により観測する手法である。活性層には poly(3-hexylthiophene) (P3HT)、および、PC61BM を用いた逆構造型有機太陽電池を測定対象とし、電子、正孔移動度の同時測定が可能な P3HT:PC61BM の組成とした。インピーダンス分光法、変調光電流分光法を行ったところ、インピーダンス分光法では正孔移動度のみ評価できた。これは、P3HT:PC61BM 逆構造型有機太陽電池では、透明電極(金属酸化膜)からの電子注入障壁が大きいためである。一方、変調光電流分光法では、電子、正孔移動度の同時測定が可能であった。上述のごとく、変調光電流分光法の測定原理が電荷の抽出過程に基づいているためである。これらの結果より、有機太陽電池の電子・正孔移動度同時測定には変調光電流分光法が有用であることを示せた。

第4章では、AM1.5 暴露による有機太陽電池の特性劣化の原因を明らかにするため、暴露前後における電荷輸送特性の変化を変調光電流分光法により評価した。有機太陽電池として PTB7: PC71BM 逆構造型有機太陽電池を作製した。PTB7:PC71BM 有機太陽電池の太陽電池特性を評価したところ、PTB7 の比率が 40 wt% で電力変換効率が最高となった。
変調光電流分光法による電子・正孔の移動度測定結果より、PTB7 の比率が 40 wt%の PTB7: PC71BM 有機太陽電池において電子、正孔移動度が等しくなっていること(電子、正孔移動度のバランスが取れていること)がわかった。このような結果を基に 40 wt%の
PTB7 を有する PTB7: PC71BM 有機太陽電池を AM1.5 に暴露させた場合の太陽電池特性の劣化評価を行った。AM1.5 暴露により、太陽電池特性劣化(主に電力変換効率、曲線因子、短絡電流が低下)した。変調光電流分光法によると電子・正孔移動度のバランスは AM1.5 照射後でも維持されていることがわかり、AM1.5 に晒されることによる有機太陽電池の劣化は、電荷輸送特性の変化に起因しないことがわかった。この有機太陽電池の劣化(曲線因子、短絡電流の低下)は、PTB7: PC71BM 薄膜中で PC71BM が凝集した領域の大きさが増大する(PTB7: PC71BM 界面面積の減少する)ことによる光電荷生成効率の低下が主因であることを示した。

第 5 章では、有機太陽電池の開放光起電力減衰から二分子再結合定数を評価する手法を示した。本手法の汎用性を示すため典型的な3種類の有機太陽電池(P3HT:PC61BM、PTB7:PC71BM 、 poly[4,8-bis(5-(2-ethylhexyl)thiophen-2-yl)benzo[1,2-b;4,5-b’]di
thiophene-2,6-diyl-alt-(4-(2-ethylhexyl)-3-fluorothieno[3,4-b]thiophene-)-2-carboxylate2-6-diyl)] (PTB7-th) : 3,9-bis(2-methylene-(3-(1,1-dicyanomethylene)-indanone))-5,5,11,11-tetrakis(4-hexylphenyl)-dithieno[2,3-d:2’,3-d’]-s-in-daceno[1,2-b:5,6-b’]dithiophene (ITIC))を作製した。開放起電力減衰過程を簡単な理論により記述し、有機太陽電池の並列抵抗、静電容量による減衰過程の影響を受けないよう、開放起電力の減衰開始直後の振る舞いから有効寿命を求めた。有効寿命は、励起光強度の-1/2 乗に比例したことから、これら3種類の有機太陽電池の開放状態における再結合過程は2分子再結合であることがわかった。開放光起電力減衰法の実験装置の構成は単純で、しかも、測定および解析方法が簡単であるため、様々な有機太陽電池の二分子再結合測定に用いることができると考えられる。

第6章では、以上の結果を総括して本研究の結論をまとめた。

本研究で開発した解析手法により、有機太陽電池の劣化要因を明らかにし、同時に、効率向上のための電子物性を同定することが可能である。従って、本論文の成果は有機太陽電池の高効率化、長寿命化に向けた材料開発、デバイス設計に貢献できる。さらに、評価した電子物性と化学構造を機械学習させることにより有機太陽電池のための材料開発を加速できると期待できる。

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