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大学・研究所にある論文を検索できる 「PD-1+ Tim3+ tumor-infiltrating CD8 T cells sustain the potential for IFN-γ production, but lose cytotoxic activity in ovarian cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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PD-1+ Tim3+ tumor-infiltrating CD8 T cells sustain the potential for IFN-γ production, but lose cytotoxic activity in ovarian cancer

澤田, 真明 大阪大学

2020.05.31

概要

〔目的(Purpose)〕
 卵巣癌に対して外科的切除およびプラチナ製剤による化学療法が標準治療として行われているが、依然再発率は高く、婦人科悪性腫瘍の中でも特に予後不良な疾患である。近年多くの癌種に対して、免疫チェックポイント阻害剤が臨床で応用され、卵巣癌においてもその有効性が臨床研究によって明らかとなっている。その抗腫瘍免疫応答として、さらにはバイオマーカー検索として、T細胞を中心に免疫担当細胞と腫瘍細胞の解析が進んでいる。中でも抗腫瘍免疫応答の最前線である腫瘍微小環境における研究の重要性が指摘されている。一般的に活性化した腫瘍浸潤T細胞(TIL)の存在は良好な予後になることが知られ、PD-1やTim3は活性化マーカーとして知られている。その一方で、腫瘍抗原の曝露などによる持続的刺激は、T細胞に抗腫瘍免疫作用を欠如させるなど疲弊をもたらすことが多くの癌種で明らかとなっており、胃癌TILにおいてもPD-1やTim3は疲弊マーカーとして知られる。今回、卵巣癌におけるPDH⁺ Tim3⁺ CD8 TILの抗腫瘍免疫能を解析した。

〔方法(Methods)〕
 大阪大学医学部附屈病院にて外科的切除を実施した卵巣癌患者100例を対象に、採取した新鮮腫瘍組織よりTILを精製し、PD-1⁻ Tim3⁻、PD-1⁺、Τim3⁻、PD-1⁺ Tim3⁺分画をフローサイトメーター(FACS)にて解析した。PD-1⁺ Tim3⁺分画を中心に、各分画の頻度を臨床病理学的因子と比較するとともに、機能解析としてサイトカイン産生能、増殖能および細胞傷害能を解析した。特に今回の研究では膜型抗CD3scFvを発現した標的細胞株BALL-1を作成し、より直接的なT細胞傷害能の新規解析方法を確立した。CD3を一般的に発現するT細胞と共培養することで、HLA・腫瘍抗原に制限されない抗CD3scFvがT細胞と結合し、T細胞の標的細胞傷害能の測定が可能となる。精製した各分画のT細胞を共培養し、標的細胞の死細胞数を測定し、その細胞傷害能を解析した,卵巣癌TILの対照として卵巣癌末梢血単核細胞(PBMC)及び胃癌TILを用いた。

〔成績(Results)〕
 卵巣癌CD8 TILにおけるPD-1⁺ Tim3⁺頻度は中央値22.8%(0〜81%)を示したが、PBMCにはほとんど存在しなかった。刺激培養後のTILを用いたサイトカイン産生能として、細胞内染色法を用いた解析では、PD-1⁺ Tim3⁺分画のサイトカイン産生能はPD-1⁺ Tim3⁻、PD-1⁺ Tim3⁻分画とほぼ同等であった。一方で細胞外補足法では、PD-1⁺ Tim3⁺分画のサイトカイン産生能はPD-l⁻ Tim3⁻分画に比して著しく増加していた(77=0.02)。同様に増殖能のマーカーであるKi67の発現は、PD-l⁺ Tim3⁺分画ではPD-l⁻ Tim3⁻、PD-1⁺ Tim3⁻分画に比して高い傾向にあった。胃癌PD-1⁺ Tim3⁺ CD8 TILにおけるサイトカイン産生能および増殖能は著しく低下していた。卵巣癌PD-l⁺ Tim3⁺ CD8 TILではサイトカイン産生・増殖能が保たれていたことから、その頻度と臨床病理学的因子とを比較した。予後との検討では、予想に反して、高頻度群では低頻度群に比して再発率が有意に高かった(p=0.01)。このため、T細胞の細胞傷害能を解析した。まず、パーフォリンおよびグランザイムBの発現を確認した。卵巣癌におけるPD-1⁺ Tim3⁺分画のパーフォリン、グランザイムBの発現は他分画に比して低くかった。胃癌でも同様の傾向を示した。卵巣癌におけるPD-1⁺ Tim3⁺分画の膜型抗CD3scFv発現標的細胞を用いた細胞傷害能は、他の分画に比して有意に低下していた(p=0.01)。胃癌においてもPD-1+ Tim3⁺分画の細胞傷害能の他の分画に比して低下していた。また、疲弊マーカーであるTOXの発現を卵巣癌で確認したが、PD-1⁺ Tim3⁺分画のTOX発現は増加していた。

〔総括(Conclusion)〕
 卵巣癌におけるPD-1⁺ Tim3⁺ CD8 TILは、サイトカイン産生能や増殖能は保たれていたものの、細胞傷害能は低下しており、このことが予後不良に関係する可能性が示唆された。また、TOXは疲弊の規定因子であるとの報告があるが、卵巣癌のサイトカイン産生能は独立している可能性が示唆された。今回、我々は膜型抗CD3scFVを発現する標的細胞株を用いた、より直接的な細胞傷害能の新規解析方法を確立した。抗腫瘍免疫能においてT細胞の細胞傷害能は最も重要な作用であることから、今後、T細胞機能解析の新しい指標となりうると考えられた。

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