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Synthesis of Inorganic Solid Basic Materials from Low-crystalline Nano Hydroxide Precursor : toward Enhanced Surface/catalytic Properties

竹本 晶紀 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017361

2021.04.21

概要

複酸化物/水酸化物は、多種多様な機能性、組成汎用性、および高い化学的/熱的安定性を有することから、電気・磁気・触媒・バイオなど多岐にわたる分野において利用される。近年では産業の発展に伴う環境問題が顕著化しており、自動車排ガス浄化や人体に有害な化学物質の分解といった環境浄化材料への複酸化物/水酸化物の利用が検討されている。また、複酸化物/水酸化物を利用した水分解反応・CO2 還元触媒反応に関する研究が急速に進展しており、人工光合成の実現による持続可能な化学産業の発展が期待されている。以上のように、複酸化物/水酸化物触媒材料の高度化は社会・産業の発展に重要であり、現代において顕在化してきた環境・エネルギー問題を解決する糸口となる。

触媒表面の原子配列・構造欠陥・表面組成といった原子スケールの構造は、固体触媒の吸着・触媒特性を決定づける重要な因子である。また、触媒材料の微細化および多孔化などのメソ/マクロスケールの構造制御は、アクセス可能な比表面積向上や拡散経路導入による固体触媒の高機能化に直接的に有効である。以上のようなナノ/メソ/マクロ構造を精密に設計することで、複酸化物/水酸化物の高機能な吸着・触媒反応場の発現が見込まれる。

複酸化物の合成には、高結晶性の酸化物前駆体を混合して熱処理を施す固相反応法が広く利用されてきた。高結晶性かつ粗大な結晶を前駆体として利用する手法では、金属原子の拡散に大きな駆動力を要するため、複酸化物結晶を得るには高温条件(>700 °C)が必要となる。高温熱処理過程における複酸化物の結晶成長は抑制されず粗大結晶が析出する。水熱合成などの溶液プロセスを利用した複酸化物ナノ粒子の合成も報告されているものの、ナノ粒子が凝集した粗大な構造体が容易に形成する。そのため、既存の複酸化物は反応物がアクセス可能な比表面積を十分に有していないと言える。複水酸化物においても同様に、強塩基条件下の厳しい合成条件が採用されるため、複水酸化物のナノ/メソ/マクロ構造制御は容易ではない。したがって、複酸化物/水酸化物結晶のナノ/メソ/マクロ構造制御を達成するためには、穏和な条件下での合成プロセスの開発が求められる。

そこで本研究では、エポキシド開環誘起アルカリ化反応により得られる低結晶性ナノ水酸化物に着目した。エポキシドを金属塩溶液に添加することで、均一かつ急激な pH 上昇が誘起され、高過飽和条件下において直径数 nm の低結晶性ナノ水酸化物が析出する。直径数 nm の低結晶性ナノ水酸化物を集積することで、多孔質化などのメソ/マクロ構造制御が容易に達成される。さらに、高い反応性を示す低結晶性ナノ水酸化物を前駆体とすることで、穏和な条件下での複酸化物/水酸化物への結晶化が進行する。本研究では、以上のような低結晶性ナノ水酸化物の微細構造制御性および高反応性に立脚し、制御されたナノ/メソ/マクロ構造を有する複酸化物/水酸化物材料の創出および触媒・吸着能の高効率化を目指した。本論文はその成果をまとめたものであり 7 章から構成される。

第 1 章は本論文の緒言であり、研究背景と研究目的ならびに本研究で利用したエポキシド開環 誘起アルカリ化反応により得られる低結晶性ナノ水酸化物に関する基本的な知見について述べた。

第 2 章では、低結晶性ナノ水酸化物を溶液中で結晶化させることで、Ni−Al 系層状複水酸化物 (LDH)ナノ結晶から成るエアロゲル体の合成を行った。高濃度の金属塩溶液に対してエポキシドを添加することで、低結晶性 Al(OH)3 から成る湿潤ゲルが形成する。反応初期に形成した低結晶性 Al(OH)3 が溶存 Ni2+を取り込み、Ni−Al 系 LDH ナノ結晶から成る湿潤ゲル体へと結晶化する。
反応系に有機添加物を共存させることで、Ni−Al 系 LDH の結晶化が促進されることを見出した。有機添加物の添加量および溶媒組成を最適化することで、均一なメソ多孔構造を有する Ni−Al 系 LDH エアロゲル体の合成を始めて達成した。イオン/分子吸着能・アニオン交換能・触媒能を有する LDH の多孔化により、大容量の吸着材や高効率な触媒材料の開発が期待できる。

第 3 章では、低結晶性ナノ水酸化物から成る湿潤ゲルを基に、NiGa2O4 ナノ結晶コロイド溶液の合成を行った。NiGa2O4 は NOx 還元能や酸化-還元特性を示す複酸化物である。無機ナノ結晶が高濃度で分散したコロイド溶液を利用することで、メソ/マクロ構造制御を施した粉末、シート、バルク成形体を得ることが可能となる。しかしながら、ナノ結晶は容易に凝集する傾向があるために、濃厚系において長期的に分散安定なコロイド溶液を得ることは容易ではない。エポキシド開環誘起アルカリ化反応により、Ni2+が溶存したまま低結晶性 Ga(OH)3 から成る湿潤ゲルが形成する。湿潤ゲルを 80 °C の密閉条件下に静置することで、低結晶性 Ga(OH)3 の溶解とそれに伴う NiGa2O4 の結晶化が起こる。分散安定剤としてアセチルアセトンを反応系に共存させることで、低温条件下で低結晶性 Ga(OH)3 湿潤ゲルの解膠現象が誘起され、濃厚系コロイド分散液が得られることを見出した。また、ZnGa2O4 系、ZnFe2O4 系、ZnAl2O4 系においても濃厚系コロイド溶液の合成を達成し、組成汎用性を有することを明らかにした。

第 4 章では、第 2 ~ 3 章で得られた知見を基に、Li−Al 系 LDH のマクロ多孔性モノリスおよびコロイド溶液の合成を行った。Li−Al 系 LDH はアルカリ金属元素を唯一含有する LDH であり、高い表面塩基性を示す固体塩基触媒として注目されている。Li−Al 系 LDH 結晶の形状およびサイズを制御する手法としてトポタクティック反応が報告されている。トポタクティック反応では、結晶性 Al(OH)3 とリチウム塩を水熱環境下で反応させることで、前駆体である結晶性 Al(OH)3 の形状およびサイズを保持したまま Li−Al 系 LDH 結晶が生成する。しかしながら、両性化合物である Al(OH)3 は溶液中で容易に結晶成長するため、ナノサイズの結晶性 Al(OH)3 の合成は達成されていない。したがって、トポタクティック反応を利用した Li−Al 系 LDH のナノ微細化は困難であり、Li−Al 系 LDH から成る多孔体やコロイド溶液の合成は容易ではない。そこで、第 2 ~ 3 章で述べた低結晶性ナノ水酸化物の結晶化反応に着目した。エポキシド開環誘起アルカリ化反応を利用することで、低結晶性 Al(OH)3 から成る湿潤ゲルが得られる。反応系に有機ポリマーを添加することでスピノーダル分解型の相分離が生じ、低結晶性 Al(OH)3 から成るマクロ多孔性湿潤ゲルが形成する。このマクロ多孔性湿潤ゲルを LiOH 水溶液中に浸漬すると、両性化合物である Al(OH)3 が塩基性溶液中に溶解するものの、Al(OH)3 ゲル骨格と LiOH 水溶液の固液界面において塩基性水酸化物である Li-Al 系 LDH 微細結晶が拡散律速的に析出する。上記の反応を介して、前駆体のマクロ多孔構造を保持したまま低結晶性 Al(OH)3 から Li−Al 系 LDH への結晶化が進行する。低結晶性 Al(OH)3 からなる 3 次元ゲルネットワークの解膠現象を利用することで、Li−Al 系 LDH ナノ結晶コロイド溶液の合成も併せて行った。以上のように、エポキシド開環誘起アルカリ化反応より得られる直径数 nm の低結晶性 Al(OH)3 を穏和な合成条件下で微細な Li−Al 系 LDH へと結晶化させることで、メソ/マクロ構造が制御された Li−Al 系 LDH 材料の創出を行った。

第 5 章では、第 4 章で報告した Li−Al 系 LDH ナノ結晶を利用し、Li−Al 系複酸化物ナノ粒子の合成および不均一系固体塩基触媒への応用を検討した。上述のように Li−Al 系 LDH ナノ結晶を得ることは容易ではなく、代表的な Li−Al 系 LDH 結晶の比表面積は 100 m2 g−1 以下に過ぎない。エポキシド開環誘起アルカリ化反応より得られた Li−Al 系 LDH ナノ結晶の比表面積は 326 m2 g−1であり、既存の Li−Al 系 LDH 結晶と比べて極めて微細な結晶が得られている。上記のような Li− Al 系 LDH ナノ結晶の焼成体は、高い比表面積に起因する優れた触媒活性の発現が期待できる。本章では、Li−Al 系 LDH ナノ結晶に対する熱処理温度を系統的(300 ~ 700 °C)に変化させ、高比表面積を有する Li−Al 系複酸化物ナノ粒子の合成を行った。Li−Al 系 LDH ナノ結晶に 400 °C の熱処理を施して得られた Li−Al 系複酸化物は、極めて高い比表面積(SBET = 349 m2 g−1)を示し、エステル交換反応に対して従来の Li−Al 系 LDH 焼成体より高い触媒活性を示すことが明らかになった。

第 6 章では、異種の低結晶性ナノ水酸化物を集積して得られた前駆体を用いることで、ZnGa2O4の低温合成を行った。ZnGa2O4 は、有害有機物の分解反応や水中での CO2 光還元反応における不均一系触媒として注目されている。高結晶性金属酸化物を前駆体とした場合、不純物相を含まずに ZnGa2O4 を得るためには高温熱処理(850 °C)を要する。一方で、エポキシド開環誘起アルカリ化反応を用いて前駆体を作製した場合、前駆体中に異種の低結晶性ナノ水酸化物が均一に分散しているため、低温熱処理(700 °C)で不純物相を含まずに ZnGa2O4 が得られた。低結晶性ナノ水酸化物より得た ZnGa2O4 は、酸化物前駆体より得た ZnGa2O4 と比較して、水中での CO2 光還元反応において高選択的な触媒活性を示すことを見出した。

第 7 章は本論文の結言であり、本研究により得られた成果の総括および今後の研究課題・展望を述べた。本論文では、低結晶性ナノ水酸化物の複酸化物/水酸化物への結晶化プロセスを詳細に検討し、制御されたナノ/メソ/マクロ構造を有する固体塩基触媒材料の合成を行った。エポキシド開環誘起アルカリ化反応により種々の低結晶性ナノ水酸化物の合成が可能である。したがって、低結晶性ナノ水酸化物を前駆体とする本手法は、高い組成汎用性を有しており、様々な複酸化物/水酸化物の材料合成に利用できる。本成果は、低環境負荷型の持続可能な社会の実現に貢献すると期待される。

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