The role of apparent diffusion coefficient value in the diagnosis of localized type 1 autoimmune pancreatitis: differentiation from pancreatic ductal adenocarcinoma and evaluation of response to steroids

概要

The role of apparent diffusion coefficient value in the diagnosis of localized type 1 autoimmune pancreatitis:
differentiation from pancreatic ductal adenocarcinoma and evaluation of response to steroids
(限局性 1 型自己免疫性膵炎の診断における apparent diffusion coefficient value の有用性：膵臓癌との鑑別とステロイ
ド治療の効果判定)

消化器代謝内科

關藤剛

〈要旨〉
自己免疫性膵炎（AIP）のうち限局性の腫大や腫瘤形成のような非典型的な所見を呈する症例については、pancreatic
ductal adenocarcinoma（PDAC）との鑑別が容易ではない。MRI のシーケンスの一つである diffusion-weighted imaging
(DWI）から apparent diffusion coefficient（ADC）値が測定される。限局性 AIP と PDAC の鑑別診断およびステロイ
ド治療効果の早期判定における ADC 値測定の有用性を明らかにすることを目的とした。
広島大学病院で診断され腹部 MRI が施行された限局性 1 型 AIP 40 例と PDAC 71 例を対象とした。ADC 値の測定に
は 0 と 1000 の b 値を使用し、ADC マップ上で ADC 値を 3 回測定して平均値を計算した。AIP の 28 例では、ステロ
イド治療開始前および治療開始の約 1 週間後に MRI を施行し、ADC 値を測定した。さらに、限局性 AIP と PDAC と
の鑑別に有用であると報告されている所見をガドリニウム造影 MRI を施行した 54 例で評価した。
限局性 AIP と PDAC の ADC 値の比較では限局性 AIP と PDAC の ADC 値の中央値はそれぞれ 1.057×10-3 mm2/s と
1.376×10-3 mm2/s であり、限局性 AIP の ADC 値が有意に低値だった。ROC 解析では、the area under the ROC curve
は 0.957 であり、カットオフ値を 1.188×10-3 mm2/s とした時の感度と特異度はそれぞれ 95%と 90.1%だった。
ADC 値 1.188×10-3 mm2/s 以下を含めた 6 つの MRI 所見の限局性 AIP の診断能は、ADC 値 1.188×10-3 mm2/s 以下
は最も高い感度と正診率、オッズ比を示した。ADC 値 1.188×10-3 mm2/s 以下を他の一つ以上の MRI 所見に加えるこ
とで特異度は 96.3%まで上がり、オッズ比は 325 だった。
AIP に対してステロイド治療開始後、平均 7.9 日の時点で ADC 値の有意な上昇が認められた。
限局性 AIP は DWI で高信号を呈し、その ADC 値は PDAC よりも低値だった。線維化に加え、リンパ球と形質細胞
の浸潤による細胞密度の著明な増加が PDAC よりも低い ADC 値を示す原因と考えられた。ADC 値は限局性 1 型 AIP
と PDAC の鑑別診断およびステロイド治療の効果の早期判定に有用であった。診断に難渋する限局性 1 型 AIP にお
いては、ADC 値の測定が診断の助けになり得ると考えられた。