地域住民におけるインフルエンザワクチン接種・非接種 行動と家族環境及び居住地域の物理的・社会的環境との関連
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名駒田(髙山) 真由子
本研究は、地域住民を対象にした調査データを使用し、多重ロジスティック回帰分析に
より社会人口学的特性、健康関連行動の影響を考慮して、20-64 歳ではインフルエンザワ
クチン接種行動、65 歳以上ではインフルエンザワクチン非接種行動と家族環境及び居住地
域の物理的・社会的環境との関連を明らかにすることを目的として行ったものであり、以
下の結果を得た。
20-64 歳は、妊婦、小・中学生との同居者、近隣のほとんどの道に歩道がある、急病のと
きにすぐにかかれる病院がある人、近所で付き合っている人の数が 4 人以上の人で、接種
のオッズ比が有意に高かった。地域住民は、同じ居住地域内であるからこそ必要な情報が伝
達されやすいと考えられるため、インフルエンザワクチン接種の重要性・時期・接種場所等
の情報が円滑に伝達されるような仕組づくり、地域で接種が受けやすい環境を整えること
が重要であることが示された。65 歳以上では、小・中学生との同居をしていない人で、非
接種のオッズ比が有意に高くなった。特に男性では退職後に外出の機会が減ることで接種
を勧める介入が行いにくくなることを考慮すると、仕事を持ち、接種のきっかけ作りが可能
な比較的若いうちに、接種を行う習慣を定着させる必要がある。知識・情報を得るために必
要な知的能力の高さが接種をすることに関連していたと考えられたため、教育歴にかかわ
らず誰にでも身近で理解しやすいインフルエンザやインフルエンザワクチン接種に関する
知識・情報を普及していくことが大切になる。また、利便性の高い居住地域で、医療機関に
近いという居住地域環境が接種行動に影響を与えている可能性が考えられた。よって物理
的な環境を整え、地域住民が外出しやすくするとともに、接種可能な場所を増やす、周知し
ていく等の対策を考えていく必要があることが示された。
以上、本論文は、一地域においてランダムに層化抽出して行われた調査であり、社会人
口学的特性、健康関連行動の影響を考慮に入れ、家族環境、居住地域の物理的・社会的環
境とインフルエンザワクチン接種行動との関連を明らかにした国内で初めての研究であ
る。
よって本論文は博士( 保健学 )の学位請求論文として合格と認められる。