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大学・研究所にある論文を検索できる 「消化管運動の定量可視化と重症患者における消化管機能障害の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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消化管運動の定量可視化と重症患者における消化管機能障害の解明

相川, 玄 筑波大学

2023.09.04

概要









論 文 題 目:
消化管運動の定量可視化と
重症患者における消化管機能障害の解明

指導教員:
人間総合科学研究科

疾患制御医学専攻
井上



教授

属:筑波大学大学院人間総合科学研究科
疾患制御医学専攻



貴昭

名:

相川



目的:重症患者において集中治療室(intensive care unit: ICU)入室後早期に発症
する便秘および下痢の発生率を把握し、患者転帰との関連性を明らかにする(研
究 1)。また、健常人ボランティアを対象に胃と小腸の電気活動を測定できる消
化管電図の測定方法を確立し、消化管運動機能の定量可視化を実現する(研究 2)。
そして、重症患者において消化管電図を測定し、健常人との比較を行い、消化
器症状との関連を検討することを目的とする(研究 3)。
対象と方法:研究 1 では ICU に入室した人工呼吸を要する重症患者を対象とし、
後方視的観察研究を行った。早期発症の便秘および下痢は ICU 入室 1 週間に発
症したものと定義し、発生率を算出した。また、便秘および下痢に関連すると
思われる因子を共変量として投入した多変量モデルを構築し、早期発症の便秘
および下痢と患者転帰との関連性に関して評価を行った。研究 2 では、健常人
ボランティアを対象として、食事前後において胃と小腸それぞれの消化管電図
の測定を行う実験的研究を行った。得られたデータに対して高速フーリエ変換
を用いてパワースペクトル解析を行い、スペクトルからパラメータである優位
周波数(dominant frequency: DF)と優位パワー(dominant power: DP)を算出し、
食事前後で比較した。DF が正常範囲外の場合は調律異常と判断した。食前と食
後の DP の比からパワー比(power ratio: PR)を算出した。また、参加者の特性
の消化管電図のパラメータへの影響を検討するために、相関係数(rs)を算出し
た。研究 3 は、ICU に入室した人工呼吸を要する重症患者を対象として、消化
管電図を測定する前向き観察研究を行った。研究 2 と同様の解析方法を用いて
パラメータを算出し、健常人と比較するとともに、重症患者において経腸栄養
前後でパラメータを比較した。経腸栄養前後で DP に有意差が認められる場合の
み PR を健常人と比較し、認められなかった場合は健常人の PR の方が大きいと
判断した。また、胃残量の多い群と少ない群でパラメータを比較し、便秘と下
痢状態の重症患者において持続モニタリングを行った。
結果:研究 1 において、人工呼吸を要する重症患者の 55%に便秘、14%に下痢
が発生していた。便秘と ICU 滞在日数は有意な関連を認めなかったが(p = 0.118)、
下痢と ICU 滞在日数には有意な関連を認めた(偏回帰係数: B=7.534, 95%信頼区
間: 0.116-14.951, p = 0.047)。また、便秘も下痢も死亡率とは有意な関連を認めな
かった(p = 0.327; p = 0.327)
。研究 2 において、胃と小腸の DF は食事前後で変
化はなかったが(p = 0.466; p = 0.065)
、胃と小腸の DP は食後において有意に増
加していた(828[460-3203])μV2 vs 1526[759-2958]μV2, p = 0.016; 49[27-86])
μV2 vs 68[37-130]μV2, p < 0.001)。PR は胃と小腸でそれぞれ 1.6(IQR: 0.9-2.5)
と 1.4(IQR: 1.0-2.5)であった。また、最後の食事からの時間と食前の胃と小腸

の DF は弱い負の相関を示した(rs = -0.341, p = 0.015; rs = -0.348, p = 0.013)。食
前と食後の両方において、body mass index は胃と小腸の DP と負の相関を示した
(rs = -0.566, p < 0.001; rs = -0.534, p < 0.001; rs = -0.459, p < 0.001; rs = -0.529, p <
0.001)。便の性状は小腸の PR と正の相関を示した(rs = -0.430, p = 0.002)。研究
3 では、健常人と比較して重症患者では、胃で調律異常の患者が有意に多く(69%
vs 98%, p < 0.001)、小腸では重症患者で DF と DP が有意に低値であった(9.8
[9.5-10.2])cpm vs 10.4[10.1-10.7]cpm, p < 0.001; 28[14-56])μV2 vs 49[27-85]
μV2, p = 0.012)。経腸栄養を行った重症患者において、胃と小腸の DF と DP に
有意な変化はみられなかった(p = 0.310; p = 0.385; p = 0.819; p = 0.555)
。PR は胃
と小腸においてそれぞれ 1.2(IQR: 0.6-2.2)と 1.0(IQR: 0.7-2.0)であったが、
経腸栄養前後で DP に有意差は認められず健常人との比較には及ばなかった。ま
た、胃残量と胃および小腸のパラメータとの関連性は認められなかった。便秘
と下痢状態の患者の持続モニタリングでは、便秘状態の患者 3 人のうち 2 人に
おいて胃の DF は正常範囲外で推移していた。
考察:研究 1 では、重症患者において早期発症の便秘および下痢は高頻度に発
生し、特に下痢は ICU 滞在日数の長期化と関連しており、早期から下痢の予防
対策を行っていくことが重要であることが示唆された。研究 2 では、健常人ボ
ランティアにおいて消化管電図の測定系と解析法を確立し、消化管運動機能の
定量可視化を試みた。胃と小腸の DF は食事前後で変化はなかったが、一方で胃
と小腸の DP は食後において有意に増加していた。これは食事により胃と小腸の
収縮力が増加することを示しており、消化管電図により消化管運動機能を定量
可視化できることが明らかになった。研究 3 では、重症患者において胃の電気
活動が調律異常を起こしており、胃と小腸の収縮力が減少していることが明ら
かになった。重症患者において消化管電図の測定は可能であり、さらに消化管
電図によって重症患者における便秘の状態を予見できる可能性があることが示
唆された。
結論:重症患者において早期発症の便秘は 55%、下痢は 14%に経験された。早
期発症の下痢は ICU 滞在日数の長期化と関連していた。消化管運動機能の評価
のため消化管電図法を用いて、健常人と重症患者を比較したところ、重症患者
では胃において調律異常が起こっており、胃と小腸の収縮力が減少していた。
消化管電図法は非侵襲的かつ簡便な消化管運動機能測定ツールであり、重症患
者においても適応可能で、便秘の状態を予見できる可能性がある。 ...

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