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大学・研究所にある論文を検索できる 「Subjective Symptoms in Patients with Eosinophilic Esophagitis Are Related to Esophageal Wall Thickness and Esophageal Body Pressure」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Subjective Symptoms in Patients with Eosinophilic Esophagitis Are Related to Esophageal Wall Thickness and Esophageal Body Pressure

室井, 航一 名古屋大学

2021.06.29

概要

【緒言】
好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis;EoE)は食道上皮に多数の好酸球が浸潤し、慢性炎症により機能障害に起因した自覚症状を引き起こす疾患である。有病率は、欧米で0.02~0.05%、本邦で0.01~0.13%と比較的稀な疾患であり、未だ病態の不明な点が多い。診断基準の必須項目として、食道生検で高倍率視野の好酸球数が15個以上であることと、運動機能障害に起因した嚥下障害などの自覚症状を有することが挙げられている。しかしながら、EoEに特徴的な内視鏡所見を認めるにもかかわらず、無症候性のEoE患者が存在する。彼らは病状の初期では症状を自覚していない、もしくは胃酸逆流症状に類似しているために症状を認識していない可能性がある。また、症状を抑えるために、食事の速度や量を調整する等の行動をとる傾向もあり、これらの理由から、自覚症状を正確に評価することは難しい。もし自覚症状を客観的に評価することができれば、特に病状の初期段階からの診断拾い上げに活用できる可能性がある。

EoEは、食道壁に炎症と浮腫性変化を起こす病態であると考えられていることから、超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography;EUS)で食道壁の肥厚を検討した報告が過去に存在する。しかし、症状の出現によって壁肥厚がどのように変化するか、治療が壁肥厚にどのような影響を与えるかは明らかにされていない。また、食道機能障害を評価する方法として、食道内圧検査であるHigh resolution manometry(HRM)が普及している。HRMはEoE患者の食道機能障害に伴う自覚症状を評価する方法として有用と思われるが、EoE患者の24~63%が正常波形であったと報告されている。自覚症状を反映する新しいHRM所見を見出すことができれば、適切な診断ができる可能性がある。本研究の目的は、EUSとHRMを用いて、EoE患者の自覚症状を客観的に評価することである。

【対象と方法】
2018年9月から2019年8月の間に、当科で施行した上部消化管内視鏡検査において、EoEに特徴的な内視鏡所見(縦走溝、輪状溝、白斑のいずれか)を有し、診断基準の好酸球浸潤数を満たした患者66例に対してEUSとHRMを実施した。胃酸分泌抑制薬による治療歴のあった症例(24例)、好酸球性胃腸症の診断となった症例(2例)、食道腫瘍を併存していた症例(1例)、HRMで異常波形を呈した症例(4例)を除外した35症例を対象患者とした(Figure1)。

問診と質問紙表(Gastrointestinal Symptom Rating Scale(GSRS))から有症状群20例と無症状群15例に分け、患者背景、内視鏡所見、EUSにおける食道壁の厚さとHRMパラメーターに関して、retrospectiveに検討した。EUSは食道胃接合部より口側5cmと10cmの2点で筋層、全層の厚さを測定した。HRMはシカゴ分類ver.3に従い、各パラメーターを算出した。有症状群に対しては初期治療としてボノプラザンフマル酸塩による内服治療を半年間行い、GSRS質問紙表による消化管症状の再評価と、EUSとHRMの再検査を行った。

【結果】
患者背景と内視鏡所見の比較では、BMI(25.1vs.22.5,P=0.006)で有意差を認めたものの、それ以外の項目で両群間に有意差を認めなかった(Table1)。EUSを用いた食道壁の検討では、有症状群で無症状群と比較して有意な壁肥厚を認めた(筋層(5cm)1.66mmvs.1.38mm,P=0.009;全層(5cm、10㎝)3.30mmvs.2.51mm,P<0.001、2.41mmvs.1.91mm,P=0.022)(Table2)。HRMでは、食道体部圧を反映するdistal contractile integral(DCI)値が有症状群で有意に高かった(中央値3294.6mmHg-cm-svs.1579.3mmHg-cm-s,P<0.001、最大値4917.8mmHg-cm-svs.2596.2mmHg-cm-s,P<0.001)(Table3)。その他のパラメーターに有意差は認めなかった。更に、食道壁の厚さとDCI値の相関性を調べたところ、正の相関を示した(Figure2)。

半年間の治療後、GSRS質問紙表でのスコアはいずれの項目でも低下傾向を示し、total score(14.1vs.10.4,P=0.002)、heartburn(2.3vs.1.5,P=0.001)、acid regurgitation(2.5vs.1.5,P=0.003)に関しては有意な低下を示した(Table4)。治療後のEUSでは、食道全層(5cm、10㎝)の厚さに有意な低下を認めた(3.30cmvs.2.09cm,P<0.001、2.41cmvs.1.97cm,P=0.005)(Table5)。HRMでは、DCI値が有意に低下を示した(中央値3294.6mmHg-cm-svs.2533.1mmHg-cm-s,P<0.001、最大値4849.7mmHg-cm-svs.2583.9mmHg-cm-s,P<0.001)(Figure3)。

【考察】
本研究は、EUSとHRM結果を新しい視点から評価することで、食道壁の肥厚と食道体部圧の上昇がEoE患者の自覚症状に関与している可能性を示した。

まず、EoE患者の食道壁肥厚に関しては、組織学的に基底細胞の反応性過形成と上皮浮腫という炎症に伴う上皮性変性所見が関与し、線維化とリモデリング作用が症状に関与していると報告されている。本研究でのEUSを用いた食道壁の評価は、症状のある症例の客観的評価や病状評価に役立つことを示した。次に、食道体部圧の上昇に関しては、好酸球浸潤による慢性炎症が、食道壁の肥厚とコンプライアンスの低下につながったのではないかと考えた。一方で、EoE患者のHRM結果は非特異的で一貫性がないとの報告もあり、症状とDCI値の明確な関係をすべての症例に当てはめることは難しいとも考える。本研究は、DCI値が高いほど、病状の進行と症状の出現の指標になり得る可能性を示した。そして我々は、治療介入後に症状スコアの改善と、食道壁肥厚の改善、食道体部圧の低下を認めることを確認した。これは、食道壁の肥厚と体圧の上昇が自覚症状の一因となる可能性があるという我々の仮説を裏付ける結果であった。

本研究の結果は、更なる検討を重ねることで臨床的に有用となる可能性がある。もし、病状を反映する指標になることができれば、重症度評価、症状の出現予測に役立つ可能性がある。治療効果を反映する指標になることができれば、治療薬や治療期間を考える上で活用できる可能性がある。しかし一方で、本研究は単一施設の検討であり症例数が少ないこと、また対象患者にボノプラザンフマル酸塩で改善する軽症症例が多く含まれていたことに関しては検討の余地があり、今後大規模な前向き研究が望まれる。

【結語】
食道壁の肥厚と食道体部圧の上昇は、EoE患者の自覚症状に関連している可能性がある。更に、治療奏功例では自覚症状の改善と共に、食道壁肥厚の改善と食道体部圧の低下を示すことがある。

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