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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒト羊膜上皮細胞を用いた食道内視鏡的粘膜下層剥離術後瘢痕狭窄に対する予防法の開発に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ヒト羊膜上皮細胞を用いた食道内視鏡的粘膜下層剥離術後瘢痕狭窄に対する予防法の開発に関する研究

今野 裕司 東北大学

2021.09.24

概要

【背景】内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)は早期悪性腫瘍の一括切除を可能とする治療法であり、食道癌においても広く普及している。しかし、合併症の一つとして ESD 潰瘍の瘢痕狭窄が知られている。現在、瘢痕狭窄に対して内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation; EBD)やステロイド局所注射(局注)療法、ステロイド内服療法などの狭窄予防法が行われている。しかし、現行の治療法はそれぞれ有害事象があり、問題点があることも事実である。近年、それらの問題点を解決する再生医療が行われるようになってきているが、広く普及した治療法になるには至っていない。今回われわれが注目したのはヒト羊膜である。特に、羊膜上皮細胞は幹細胞に類似した特性を有し、様々な細胞への分化能があることが報告されている。また、羊膜には抗炎症作用や創傷治癒促進効果に関する報告もある。さらに、羊膜細胞は免疫原性が低いという特徴があり、移植に適した細胞と言える。そこでわれわれは、羊膜上皮細胞を ESD 後潰瘍に応用することで潰瘍瘢痕狭窄の新たな予防法の一つになり得るのではないかと考えた。

【方法】 東北大学病院産科で予定の帝王切開を受ける妊婦から同意を得て、摘出されたヒト胎盤から羊膜を採取した。羊膜から羊膜上皮細胞を分離し、凍結保存した。移植する際には解凍し、移植後の羊膜上皮細胞の動態を観察するため、CM-DiI で細胞を蛍光標識した。全身麻酔下のブタ食道に消化管内視鏡を挿入し、ブタ 1 頭につき 4 か所、食道 ESD 潰瘍に見立てたキャップ付き EMR(endoscopic mucosal resection using cap-fitted endoscope; EMRC)潰瘍を作成した。4 か所の潰瘍のうち口側の潰瘍 2 か所を、解凍した羊膜上皮細胞(amniotic epithelial cell; AE cells)懸濁液を局注して移植した AE 群、残りの 2 か所を無治療のコントロール群とした。1 週間生存させ、内視鏡的に潰瘍を観察した後に犠牲死させた。組織標本を作成し、切片ごとに粘膜切除範囲の長さ、上皮化した部分の長さを測定し、上皮化した部分の長さを切片ごとの粘膜切除範囲の長さで割った上皮化率を算出した。また、切片で粘膜がもっとも厚い部分を粘膜肥厚長と定義し、上皮化率、粘膜肥厚長を 2 群間で比較した。また、蛍光顕微鏡を使って移植後の羊膜上皮細胞の動態を観察した。

【結果】ブタ全 6 頭に EMRC 潰瘍を全 22 潰瘍作成し、このうち AE 群は 11 潰瘍、コントロール群は 11 潰瘍であった。上皮化率は、各切片の上皮化率がすべて 100%であった AE 群、コントロール群 1 潰瘍ずつを除き、 AE 群、コントロール群それぞれ 10 潰瘍を評価した。また、潰瘍は辺縁から治癒するため、各潰瘍の両端、それぞれ 1 切片ずつを除外した。AE 群が中央値 60.4% (32.7-87.3% (以下、四分位範囲を表記)) 、コントロール群が中央値 39.1% (26.0-59.2%) で、上皮化率は AE 群で有意に高かった(p = 0.018)。先述の AE 群 10 潰瘍、コントロール群 10 潰瘍において、各潰瘍での切片の上皮化率の中央値を算出し、2 群間比較した。その結果、AE 群の中央値は 67.4% (39.0-89.4%) 、コントロール群の中央値は 45.5% (33.4%-55.3%)で、この解析方法では有意差はみられなかった (p = 0.16) 。粘膜肥厚長は、AE 群が中央値 1.2 mm (1.0-1.5mm) 、コントロール群が 1.2 mm (1.0-1.4 mm) であり、有意差はみられなかった (p = 0.64) 。蛍光顕微鏡で観察すると、AE 群のプレパラートでのみ蛍光標識された細胞の集簇が認められた。他の細胞へ分化している様子は認められなかったが、 移植した細胞が局注した場所に留まっていることを確認した。

【考察】羊膜上皮細胞を移植することで、潰瘍の上皮化が促進されることが示唆された。上皮化が促進される要因として、羊膜上皮細胞の持つ epidermal growth factor(EGF)などの成長因子や細胞分化の活性化が潰瘍の上皮化の促進に寄与していると考えられた。術後 1 週間において、蛍光顕微鏡で蛍光標識した羊膜上皮細胞が食道粘膜下層に局在している様子が観察された。一方、 羊膜上皮細胞の分化の様子を捉えることはできなかったが、潰瘍の治癒促進に寄与している可能性が考えられた。潰瘍の上皮化が促進される可能性が示唆され、羊膜上皮細胞移植が ESD 後潰瘍瘢痕狭窄の予防法の 1 つとなる可能性が示唆された。

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