リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「A study about the mosquito vectors of Japanese encephalitis virus : their viromes and the virus’ transmission dynamics」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

A study about the mosquito vectors of Japanese encephalitis virus : their viromes and the virus’ transmission dynamics

ファイザー, アシトリ ヌー 東京大学 DOI:10.15083/0002006914

2023.03.24

概要





















アシトリ

ヌー

ファイザー

昆虫媒介性の疾患は世界で猛威を振るっており、その流行のメカニズムの解明が求め
られている。日本脳炎は蚊媒介性のウイルス疾患の一つであり、人に対する広範なワクチン
接種や定期的なウイルス保有動物のサーベイランスなどにより人の症例はかなりコントロ
ールされるようにはなっているものの、ワクチンプログラムが行き届いていない国(地域)
の存在や数十年間発生がなかった遺伝子型を持つ日本脳炎ウイルス(JEV)の再興、従来の
流行地以外の地域への JEV の進出など、現在でも日本脳炎は世界各地で公衆衛生上の問題
となっている。JEV は蚊媒介性であるため、その分布はブタをはじめとする増幅動物の存
在と、その増幅動物から次の増幅動物あるいは感受性動物へと媒介可能な蚊の種の分布に
大きく影響される。そのため、日本脳炎ウイルスの分布の解析や流行地以外で潜在的ベクタ
ーとなりうる蚊種の分布やその伝播能力の解明は、日本脳炎対策を考えるうえで重要であ
る。
そこで本論文で申請者は、JEV の伝播や分布を解明する一環として媒介蚊に焦点を当て、
各種の蚊における JEV を含めたウイルス叢解析と感染動態の解明を行った。まず第 1 章で
は、ダニにおいてウイルス叢解析のために確立された網羅的な遺伝子配列解析とウイルス
分離を組み合わせた方法を一部改変して蚊に応用することにより、日本国内の 3 か所で採
取された蚊を対象にウイルス叢解析を行った。その結果、RNA ウイルスを対象とした網羅
的遺伝子配列解析では JEV のベクターとなることが知られている Culex vishnui サブグル
ープに属する 2 種の蚊およびベクターとはならない Cx. inatomii から合計で 26 のウイル
ス遺伝子が検出された。続くウイルス分離では昆虫特異的ウイルスを含めて 5 種のウイル
スを検出することができた。ベクター種からは 1 株ながら遺伝子型Ⅰ型の JEV も分離され
た。
第 2 章では、第 1 章で蚊に対する応用が可能であることを確認したウイルス叢解析方法

をインドネシアのバリ島で捕獲された蚊に応用し、そのウイルス叢を第 1 章で解析した日
本の蚊のウイルス叢と比較した。ウイルス遺伝子の網羅的解析では、日本の蚊と類似したウ
イルス叢が確認され、合計で 35 種のウイルスが検出されたが、それらはすべて昆虫のウイ
ルスであり、人獣共通感染症の病原体は検出されなかった。一方、ウイルス分離では JEV
が 1 株検出され、遺伝子系統解析では遺伝子型Ⅳ型であった。バリ島を含む地域では 2017
年と 2019 年に JEV Ⅳ型の発生が報告されており、同地域にⅣ型 JEV が常在しているこ
とが示唆された。
第 3 章においては、各種の蚊の JEV ベクターとしての能力を明らかにするため、in vitro
および in vivo の実験が行われた。In vitro では、異なる蚊種由来の細胞株での JEV の増殖
性が検討され、程度の差こそあれ様々な蚊種の細胞株で JEV が増殖可能であることが示さ
れた。続く in vivo 実験では異なる属に分類される 2 種の蚊(Cx. tritaeniorhynchus およ
び Aedes japonicus japonicus)における感染性と伝播性が検証された。主な JEV 媒介蚊と
して知られる Cx. tritaeniorhynchus では、現在および過去に流行の主流となっている遺伝
子型ⅠおよびⅢ型、ならびに流行地域の拡大が懸念されている遺伝子型Ⅴ型のいずれもが
高率に感染し伝播されることが確認された。一方、非流行地において潜在的なベクターとな
ることが危惧されている A. j. japonicus では、Cx. tritaeniorhynchus に比較するとその効
率は大きく劣るものの、実験に用いたウイルス株すべてに感染し伝播する能力を有してい
ることも明らかとなった。

この研究は JEV 媒介種を始めとする蚊に対して網羅的なウイルス叢解析を行った初めて
の報告であり、ダニで開発された手法が蚊においても有用であることを示した。この手法を
用いた蚊のウイルス叢解析は日本脳炎の分布や感染の広がりの解明、対策の開発に大いに
貢献すると期待できる。また、主な媒介蚊あるいは媒介蚊としては認識されてこなかった種
の蚊における JEV への感受性と伝播性の研究は、これまでに日本脳炎の発生が報告されて
いなかった地域への JEV の進出の要因や流行地域における日本脳炎のウイルス型の変遷の
解明、流行の抑制などに役立つと考えられる。

以上のようにこれらの研究成果は学術上重要であり、応用上も大きく寄与するところが大きい。よ
って、審査委員一同は本論文が博士(獣医学)の学位論文として価値あるものと認めた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る