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書き出し

高機能繊維を用いた防護服の経年劣化試験及び評価基準の確立

若月, 薫 信州大学

2021.03.01

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 10 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 挑戦的萌芽研究
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16K12835
研究課題名(和文)高機能繊維を用いた防護服の経年劣化試験及び評価基準の確立

研究課題名(英文)Development on evaluation method of aging on protective clothing with high
performance fiber
研究代表者
若月 薫(Wakatsuki, Kaoru)
信州大学・学術研究院繊維学系・准教授

研究者番号:60408755
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

2,500,000 円

研究成果の概要(和文):H28年度は,高機能布地を使用した個人防護服の使用環境調査を実施し、紫外線波
長・強度と各種高機能繊維の吸収波長帯の関係整理,経年使用による紫外線性能劣化の年間紫外線量を想定し,
ばく露条件を決定することができた.H29年度は,主として劣化試験片の作成方法を検討した.実際の防火服の
性能劣化を再現するために,紫外線促進劣化させる試験片も防火服と同様に表地+透湿防水層+遮熱層の3層を
重ねて行った. H30年度は、具体的な機械的強度の試験方法としては生地が引張られることにより破断する「引
っ張り試験」・使用中に鋭利なものに引っかかり引き裂かれる「動的引き裂き試験」の二つからアプローチし
た.
研究成果の学術的意義や社会的意義
本研究は、実際の消防・警察等の活動現場における防護服の使用状況の実態調査を直接反映し、防護服の経年使
用に対する強度・耐熱性の機能低下を評価する耐候性試験手法を確立し、現在使用されている防火服・防弾チョ
ッキなどの個人防護服の機能性の劣化過程をモデル化するものである。現在、製品基準は防護服の性能は出荷時
の性能だけ決められているが、経年劣化による余剰安全度を踏まえていない。ゆえに、本研究は今後の防護服設
計に一石を投じる意義がある。

研究成果の概要(英文):In FY 2016, investigation on the use environment of personal protective
clothing using high performance fabrics had been conducted. After characterizing the UV wavelength
/ intensity of various high performance fibers, the annual UV dose and performance degradation due
to aging had been made. Finally, the conditions for aging had been decided. In FY 2017, the method
of preparing the specimens had been mainly examined. In order to reproduce the performance
deterioration of the firefighter clothing, the test pieces for UV light aging were also made with
three layers consisting of outer layer, moisture barrier and thermal liner in the same manner as the
current firefighter clothing. In FY 2018, two test methods of mechanical strength, "Tensile test",
which breaks when the fabric is pulled, and "Dynamic tear test," where sharp objects are caught and
torn during use had been determined as appropriate to consider the mechanical strength test for
firefighter clothing with aging.

研究分野: 労働安全
キーワード: 防護服 高機能繊維 引張強度 促進劣化試験



式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)

1.研究開始当初の背景
紫外線劣化による機能性低下は、防護服着用者を危険から守るという本来の防護服の目的を
達成できないということである。現在、各種の高機能繊維は、繊維一本の紫外線に対する性能
劣化特性を示しているが、織物・編物・不織布などから構成する防護服に対する機械的強度・
耐熱性の劣化度は具体的に示されていなかった.現在使用されている高機能性布地を使用し
た防護服を紫外線にばく露する時間・強度・波長などを調査・整理し、試験評価を実施する必
要があった.
2.研究の目的
本研究の目的は、アラミド等の高機能布地の経年使用に対する強度・耐熱性の機能低下を評価
する耐候性試験手法を確立し、現在使用されている防火服・防弾チョッキなどの個人防護服の
機能性の劣化過程をモデル化することにある.
3.研究の方法
■研究計画・方法(平成28年度)
主に、高機能布地を使用した個人防護服の使用環境調査を実施する。紫外線波長・強度と各
種高機能繊維の吸収波長帯の関係整理を行う。次に、高機能布地を用いた防護服・産業布地の
使用年数・使用環境の調査を当大学の交流機関である消防庁の協力のもと実施し、個人防護服
の使用期間と一年当たりの①紫外線強度、②紫外線ばく露時間を整理し、次年度への促進劣化
試験の条件設定に資する。
■研究計画・方法(平成29年度以降)
【平成 29 年度・平成 30 年度】
(1)さまざまな使用環境を再現可能な促進劣化試験条件・技術の確立(H29 年度上期)
28 年度において整理した条件に基づく、光源の選定、促進劣化試験技術の確立を行う。
本研究で必要な光源の選定、促進劣化試験の条件設定を行う。
(2)防護服で使用する高機能布地の機能低下の評価(H29 年度下期-H30 年度)
(1)において確立した促進劣化試験方法を利用し、①紫外線分光による高機能繊維の化
学構造変化②試料の力学物性(材料力学)を測定し、現在販売されている高機能布地の製品
出荷時及び促進劣化試料における繊維の化学構造の変化と力学特性の劣化の関係を見出す。
本研究では 10 年を最大使用年数と想定し、初期劣化特性を 3 か月ごと、長期劣化特性を 1
年ごとと分け設定し、促進劣化試験を実施する。
次に、マクロスケールとして、試験片の機械的特性(切創、突き刺し、引き裂き、かぎ裂き、
引っ張りなど)を測定し、紫外線総ばく露量と機械的強度の関係について整理を行う。
4.研究成果
4.1 防火服生地の劣化試験片作成法の確立
実験は混紡率が異なる表地 A(p-Aramid 10%,m-Aramid 90%)を使用し,さらに防火服と
しての劣化試験片を作成するため透湿防水層と断熱層と組み合わせ,3 層で劣化試験片を作成
した. 紫外線促進劣化装置は,太陽の分光分布に近似している光源を搭載しているスーパー
キセノンウェザーメータ(Fig.1(左),SX-75 スガ試験機㈱)を使用した.試験片にばく露す
る紫外線量は,JIS D0205 に記載される値を参考に年間放射露光量を 4,500MJ/m2 とした.紫外
線域(300-400nm)の放射の構成比を 6.8%とすると,この紫外線域での放射露光量は 306MJ/m2 と
なる.消防隊員に対して防火服の着用頻度の聞き取り調査行い,24 時間 3 交代勤務であるこ
と,訓練時間及び訓練後の洗濯の際には天日干しするということから、防火服が曝される紫外
線ばく露量は年間ばく露量の 1/9 の 34MJ/m2 と設定した.
スーパーキセノンランプ
(Fig.1(中))
の放射強度は 180W/m2 であるため,52.4 時間を防火服が受ける 1 年あたりの紫外線露光量相
当とした. 1,2,3,5,6,10 年間相当となる 52,104,157,262,314,524 時間のばく露を行い、劣
化試験片を作成した.試験機槽内の湿度は 50%,ブラックパネル温度は 63℃とした.ばく露
試験片の取り付け方法についても検証を実施した.Fig1(右)のように,引張試験用試験片はサ
ンプルホルダーの横方向に格納することで,格納数を増やすことができた.しかし縦方向に格
納したときよりも生地の紫外線ばく露面積が狭くなるため,
表地 A の劣化試験片作成では, 初
回にばく露面積の大きさによる,引張試験結果に変化の有無も検証し,Table 1 に示すように
結果に差異が生じなかったため,横方向に取り付けることでばく露を行うこととした.

Fig.1 Xenon weather meter (left), internal sample holder (center) and exposure orientation (right)

Table 1 Tensile strength of outer layer A
UV exp. time[h]
Outer layer A

Tensile

(Longitudinal)

strength[N]

Outer layer A

Tensile

(Lateral)

strength[N]

0

52

104

157

262

314

524

916.7

741.7

667.1

566.0

512.7

406.7

930.5

756.2

643.5

584.6

505.8

376.9

923.6

748.9

655.3

575.3

509.2

391.8

1491.6

Tensile
Average

1491.6
strength[N]

110mm

110mm

200mm

Along

4.2 動的引き裂き試験(引き裂き評価)の試験方法の確立
Table 2 に示す,引き裂きに強いリップスト
ップを有する防火服生地において,紫外線ば
く露量と引き裂き強度劣化の関係を明らかに
Fabric Roll
するために動的引裂試験(JIS T 80504))を行
った.この試験は,四分円の形状をした溝を有
するブロックの上に,生地を固定し,その上に
110mm
刃物を落下させ,生地を引き裂き, その長さで
200mm
引き裂き強度を評価する試験方法である.
45°
Along
Fig.2 は,動的引き裂き試験に用いる試験片の
Across
45°
切り取り方を示している.試験片は,生地のロ
ールに対して,縦,横及び斜め 45°の 3 種類を
1500mm
それぞれ 110 mm×200 mm に裁断した後に,
Fig. 2 Sampling of test specimen for tear strength test.
紫外線ばく露を行い作成した.これらを各 5
回ずつ試験した.
Table 2 Textile specification of fabric samples for dynamic tear strength test.
Fabric
Number of
Ratio of mYarn
Sample weight
yarns for
/p-Aramid
structure
(g/m2)
ripstop
A
252.1
90/10
2
Ply yarn
B
255.6
80/20
3
Ply yarn
Covering
C
276.7
80/20
3
yarn

Fig.3(a)及び Fig.3(b)は,引き裂き試験機に生地をセットした様子及び試験後の刃物が,
生地を引き裂いた様子である.Fig.4 に,本実験で行った動的引裂試験のフローチャートを示
す.Lv.は,刃物を落下させる際の衝撃エネルギーを示している.
Lv.1,Lv.2,Lv.3 及び, Lv.4 の衝撃エネルギーは,それぞれ 1.6 J-1.8 J, 3.3 J-3.5 J, 6.6
J-7.0 J, 及び 13.4 J-14.0 J と定義されている.Fig.4 に示したように,引き裂き長さが 40
mm を超える毎に Lv.を 1 段階下げ,引き裂き長さが 40 mm 以下の範囲内であったとき,ある
いは,Lv.1 で 40 mm を超えた場合に試験は,終了となる.試験終了時の Lv.が生地の引き裂き
強度となる.想定した動的引き裂き強度を試験片が予想外に有さず,予備試験を行なった際,
規定された手法を用いると,紫外線暴露させた試験片の数が多く必要であることが明らかに
なった.ゆえに,第一回目の試験によって引き裂きのレベルを見極め,そのレベルから規定さ
れた手法において,劣化試験片の有する引き裂きレベルを決定し,評価を実施した.
Start

(a)

(b)

Yes

Yes
Yes

Lv4
>40mm

Lv3
Lv2

Yes

Satisfy
requirement

Repeat tests at Lv3

Satisfy
requirement

Repeat tests at Lv2

Satisfy
requirement

Repeat tests at Lv1

Satisfy
requirement

No

>40mm

Lv1

Repeat tests at Lv4

No

>40mm

>40mm

Fig. 3 Example of dynamic tear test.

No

No

End

Fig. 4 Flowchart of dynamic tear strength test.

Fig.5 は,紫外線未ばく露の生地 C における動的引き裂き試験後の生地破断面を示し,Table 3

は,生地 A,B 及び C を動的引き裂き試験した結果である. Table 3 の結果から,すべての生地
において,斜め>横>縦の順番の強度を示した.斜め方向は,経糸,緯糸及び双方の抵抗を受け
るため,強度が高くなったものと考えられる.横方向が縦方向よりも高い強度を有した理由とし
ては,リップストップが長方形になっているために,単位長さで比べると縦方向よりも刃物がリ
ップストップを多く通過することに起因したものと考えられる.各生地で比較し強度を見ると,
初期段階では大きな差がない.しかし,紫外線ばく露を重ねるうちに各生地間で,C>B>A と優
劣が生じた.ばく露時間が少ない期間では,生地に織り込まれているリップストップの構成に依
存していることを示していることから,リップストップを構成している糸の本数が,引き裂き防
止には重要である.また,紫外線ばく露を重ねると糸の構造は,引き裂き強度に影響を与えるこ
とが明らかになった.
Along

Sample C
Across

45°

Fig. 5 Characteristics of firefighter fabrics by dynamic tear strength test
Table 3 Result of dynamic tear test
Sample
A

B

C

Direction
Along
Across
45°
Along
Across
45°
Along
Across
45°

0 hr
2
2
3
2
2
3
2
2
3

52 hrs
1
1
2
1
2
3
2
2
3

104 hrs
1
1
1
1
1
2
1
2
2

157 hrs
Fail
1
1
1
1
1
1
2
2

5.主な発表論文等
〔学会発表〕
(計2件)
1. K. Wakatsuki, Effect of UV and Thermal Degradation on Mechanical Strength of
Firefighter Clothing, The 11th Textile Bioengineering and Informatics Symposium(招待
講演)
(国際学会), 2018, University of Manchester, UK.
2. 岡村綱太,若月 薫,渡邉憲道,鮑 力民,森川英明(信州大)
,尾川義雄(消防研), 高機能
繊維を用いた防火服に対する紫外線ばく露と機械的強度・ 耐熱性劣化のモデル化, 日本繊維機
械学会 第 70 回 年次大会, 2017, 大阪市.
6.研究組織
(1)研究分担者
研究分担者氏名:森川 英明
ローマ字氏名:Morikawa Hideaki
所属研究機関名:信州大学
部局名:学術研究院繊維学系
職名:教授
研究者番号(8 桁)
:10230103
研究分担者氏名:鮑 力民
ローマ字氏名:Bao Limin
所属研究機関名:信州大学
部局名:学術研究院繊維学系
職名:教授
研究者番号(8 桁)
:10262700

※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

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