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書き出し

絡み織構造による耐突刺し防護材料に関する研究

坂口, 明男 信州大学

2021.03.01

概要

1版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 11 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 挑戦的萌芽研究
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16K12699
研究課題名(和文)絡み織構造による耐突刺し防護材料に関する研究

研究課題名(英文)A study on stab resistant material for protective clothing based on leno fabric
structure
研究代表者
坂口 明男(Sakaguchi, Akio)
信州大学・学術研究院繊維学系・准教授

研究者番号:40205729
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

2,700,000 円

研究成果の概要(和文): 耐突刺し防護服素材として絡み織物の特性について検討した。絡み織物は夏用医療
材料として古くから知られている。通気性が良いが一定の丈夫さも兼ね備えている。これは経糸が位置を交換し
ながら緯糸が織り込まれて固定されるという構造により実現されている。
 本研究では高強度繊維で絡み織物を試作して通気性と耐突刺し防護性を高度に両立できる防護服素材の試作に
取り組んだ。通気性試験と耐突刺し試験の結果、求められる二つの特性がこの原理により両立可能であることが
知られた。

研究成果の学術的意義や社会的意義
 警察官等が安全に職務を遂行する上で防護服は重要な装備である。日本においては銃刀法が徹底されているた
め武器によるリスクは低いが、アイスピックや釘のように法の規制外の日用品でも先端が鋭利で突刺しの危険が
懸念されるものがある。このように防護服の耐突刺し防護性の向上と着用時の不快感低減が望まれる。
 本研究はこの相反する要求を両立する技術としてこれまであまり検討されてこなかったテキスタイル技術の側
面、特に絡み織について検討し、これが着用時不快感の低減と高度な防護性の両立に有効であることを見出し
た。
研究成果の概要(英文): As material of protective clothing, properties of leno fabrics are
examined. From early times, leno fabrics are well known as a kind of summer clothing material. They
have a level of strength even though their high air ventilation. These features are realized by yarn
locking structure; weft yarns are woven during the interchanging of paired warps.
In this study, a novel protective clothing material is prototyped using high performance fibers by
leno weaving technique. The fabric is exposed air ventilation test and stab proof test. The results
show that it is possible to these desirable performance at a same time based on the leno fabric
principle.

研究分野: 繊維工学
キーワード: 防護服 絡み織 耐突刺し特性 高性能繊維 通気性



式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)

1.研究開始当初の背景
(1) 防護服の必要性
警察官等が安全に職務を遂行する上で防護服は重要な装備である。このような防護服では要
求される防護性能を達成しつつ、長時間の着用に堪えるよう着用不快感をなるべく避けるよう
にする必要がある。そのためには原料から製品に至る各レベルでの高度な技術の導入とそのバ
ランスが求められる。しかし、実情は着用時にかなりストレスがかかってしまっており、更な
る技術の向上が求められている。
(2) 耐突刺し防護性能の重要性と現在の防護服の問題点
日本では銃刀法が徹底されており、刀剣類によるリスクは低いもののアイスピックや釘など
鋭利な先端を持ち潜在的な危険性を有する日用品は多数ある。高強度繊維織物を材料として防
護服を作製することは以前から検討されてきたが、突刺し時には織目が寄ってしまい、高強度
繊維本来の性能を十分に布や防護服に反映できていないことが指摘されている。

2.研究の目的
本研究の研究代表者は伝統的なテキスタイルについても過去に手掛けてきた(引用文献①)が、
古来の絡み織テキスタイルは目が粗く、通気性に富む一方で、その独特の絡み構造により織目
が寄りにくく丈夫である。これらの特徴は現代の防護服の要求である、
「耐突刺し性能の向上」
と「着用時の負担の低減」という通常ならば相反する課題を高度に両立可能ではないかと着想
した。このテキスタイル構成の工夫による防護服の二つの面での性能向上について実験的に取
り組むものである。

3.研究の方法
(1) 試験装置の開発と試験条件の検討
JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法 8.18 破裂強さ B 法では試料となる布を直径 80mm
に切り取って試験片とし、これを試料取付台に固定して押し棒で加圧して試験片を突き破る強
さを測るものである。本研究ではこの押し棒を先端のとがった凶器に見立てた木工用の釘、お
よび釘を一部加工したものに置き換え、更に突刺し過程の耐突刺し力を連続測定することで、
試料の耐突刺し性能を評価する装置を構成した。また、通気性については KES-F8-AP (カトー
テック)を用いて通気抵抗を試験した。試料の重ね枚数を変えて検討するようにした。
(2) 市販絡み織物の試験
試料としてはまず、市販の絡み織物及び絡み織物とは構造が異なるがやはり織目が寄りにく
い構造を持っているだしこし布を用いて、試験を実施した。これらの試料の材料は絹およびポ
リエステルであるため本格的な防護性能は期待できないが、絡み構造が耐突刺し性と通気性に
及ぼす影響を評価できると考えた。
(3) 高強度繊維絡み織物の試作と試験
前述の市販絡み織物での試験を参考に実際に高強度繊維による絡み織物の試作と試験を実施
した。高強度繊維としてはアラミド繊維の一種であるケブラー29(東レ・デュポン)を用いた。

4.研究成果
(1) 主な成果
① 絡み織物の通気性の優位性の確認
絡み織物が通気性に優れることは経験的によく知られているが、その程度について改めて確
認する実験を行った。絡み織物の通気抵抗は同程度の目付の平織物に比べて大幅に少なく、条
件によっては 1/100 に達することも確認できた。
② 市販絡み織物等の耐突刺し特性
平織物と絡み織物の耐突刺し性能について、開発した試験装置により評価した。市販織物で
はいずれの試料も耐突刺し性能は低いものの絡み織など布を構成する糸間に拘束があるものに
することで耐突刺し性能が向上することが確認できた。また釘が絡み織物を貫通する際には布

中の糸が破断する必要があるが、平織物の場合には織目が面内方向に寄ることで糸の切断を伴
わずに貫通していることも確認できた。
③ 高強度繊維絡み織物の試作と試験
高強度繊維であるケブラー29 のマルチフィラメント糸を撚糸して原糸とし、これを絡み織の
最も基本的なものである「紗」の組織に織ったサンプルを試作した。これについても通気性と
耐突刺し性について試験を行った。その結果、この試作サンプルでも通気性と耐突刺し性の両
面を同時に高度な水準で両立できることが知られた。従って防護服素材を開発するうえでこれ
までほとんど検討されてこなかったテキスタイルの構成法の検討、特に布内の糸の相互拘束が
重要であることが実験的に証明できるとともに、この原理が高強度繊維にも適用可能であるこ
とが示された。
(2) 得られた成果の国内外における位置づけとインパクト
銃の規制の実態が日本と異なり、国外では主に防弾のために高強度繊維織物を防護服素材と
して採用している。一般に銃弾のほうがその運動エネルギーは大きく防護が困難と思われてい
るが、実は手で操作するアイスピックの場合は鋭い先端を持つためにごく小さな面積に運動エ
ネルギーが集中するため、銃弾よりもエネルギー密度は高いと考えられ、これがこの種の防護
を困難なものとしてきた。特に織目が寄るというミリメートルスケールでの変形の有無が耐突
刺し防護性に影響するということを実験的に証明できた。この点について絡み織という古来の
テキスタイル技法による解決を提案した点に新規性があり、また従来はマテリアルの開発が主
に検討されてきた防護服研究においてテキスタイル技術の側面から新しいアプローチを行った
点にインパクトがある。
(3) 今後の展望
今回の研究では主に絡み織による通気性と耐突刺し防護性の高度な両立についてその原理を
実験的に確かめることができたが、今後はこの原理に基づいて、より実用に近い防護服素材の
開発が展望できる。また、防護服に限らず、これまで数多く開発されてきた各種の高強度繊維
をこれまで以上に有効に利用するためにはテキスタイルのあり方を考えることが示せたと考え
ている。
<引用文献>
① Akio Sakaguchi, Koji Yasuhara, Hirokazu Kimura (2015) Application of a truncated distribution for
tsumugi yarn width. Textile Research Journal 85(9) 929-935.

5.主な発表論文等

〔雑誌論文〕
(計1件)
DOI: https://doi.org/10.4188/jte.63.159
① 坂口 明男、萩原 秀成、木村 裕和、鮑 力民、森川 英明、絡み織物の耐突刺し防護
服素材としての特性、Journal of Textile Engineering 63 巻 6 号、159-163、2017、査読有
〔学会発表〕
(計6件)
① 萩原 秀成、坂口 明男、木村 裕和、鮑 力民、森川 英明、アラミド糸を用いた耐突
刺し防護服素材について、日本繊維機械学会北陸支部繊維学会北陸支部 研究発表会 講演要旨
集 20-21 2018
② 萩原 秀成、坂口 明男、木村 裕和、鮑 力民、森川 英明、各種ポリエステル布の防
護服素材としての検討、繊維学会予稿集(年次大会) 73(1) 2018
③ 萩原 秀成、坂口 明男、木村 裕和、鮑 力民、森川 英明、ポリエステル絡み織物の
耐突刺し特性、繊維学会関東支部研究交流会講演要旨集 20 2017
④ 萩原 秀成、坂口 明男、木村 裕和、鮑 力民、森川 英明、絡み織物の防護服素材と
しての検討、 日本繊維機械学会第 70 回年次大会研究発表論文集 168-169 2017
⑤ 萩原 秀成、坂口 明男、木村 裕和、 鮑
性、繊維学会予稿集 71(2) 162、2016

力民、森川

英明、絡み織物の耐突刺し防護

⑥ 坂口 明男、萩原 秀成、鮑 力民、森川 英明、木村裕和、絡み織物の耐突刺し防護性
能について、第 63 回日本シルク学会研究発表会要旨集 13、2016

6.研究組織

(1)研究分担者
なし

(2)研究協力者

研究協力者氏名: 萩原 秀成
ローマ字氏名: HAGIWARA Shusei
研究協力者氏名: 木村 裕和
ローマ字氏名: KIMURA Hirokazu

研究協力者氏名: 鮑 力民
ローマ字氏名: BAO Limin

研究協力者氏名: 森川 英明
ローマ字氏名: MORIKAWA Hideaki

※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

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