Helicobacter pylori eradication prevents secondary gastric cancer in patients with mild-to-moderate atrophic gastritis

概要

〔目的(Purpose)〕
早期胃癌内視鏡切除後は、Helicobacter pylori (HP)陽性患者に対して異時性多発癌発生抑制目的に除菌療法を行うことが一般的であるが、その効果に関して有効及び無効とする両報告があり、未だに議論の余地がある。本研究では、内視鏡切除時の背景,胃粘膜の内視鏡的萎縮進展度で層別してHP除菌の長期的な異時性多発癌発生抑制効果を検討した。

〔方法(Methods)〕
本研究は多施設共同後ろ向きコホート研究である。大阪大学及び関連11施設で2003年から2010年の間に内視鏡切除で治癒切除が得られたHP陽性の分化型早期胃癌患者483人を対象とした、対象を内視鏡切除後1年以内にHP除菌された除菌群(294人)とされなかった非除菌群(189人)に分け、両群の異時性多発癌累積発生割合を、対象全体(483人)、軽-中等度萎縮患省(182人)、高度萎縮患者(301人)の3集団で比較した。背景胃粘膜の内視鏡的萎縮進展度の評価には木村・竹本分類を用い、同分類の0-1以下を軽-中等度萎縮、0-2以上を高度萎縮と定義した。

〔成績(Results)〕
異時性多発癌は対象全体で観察期間内(中央値：5. 2年、範囲：1.1-14. 8年)に除菌群で52人、非除菌群で35人に認め、5年累積発生割合は除菌群13. 9%.非除菌群15. 7%で、除菌群で低い傾向にあった(P=0.11)。軽度-中等度萎縮患者(除菌群：111人、非除菌群：71人)での異時性多発癌の5年累積発生割合は、除菌群8.7%、非除菌群18.8%で、除菌群で有意に低かった(P=0. 03)。一方、高度萎縮患者(除菌群：183人、非除菌群：118人)での5年累積発生割合は、除菌群17.1%、非除菌群14. 2%で、有意差を認めなかった(P=0. 69)。Cox比例ハザードモデルを用いて異時性多発癌発生に関与する因子について多変量解析を行ったところ、軽度-中等度萎縮患者ではHP非除菌が独立した有意な因子として抽出されたが｛ハザード比(95%信頼区間):2.10 (1.02-4.34)、P=0. 04｝、高度萎縮患者では HP非除菌は有意な因子として抽出されなかった｛ハザード比(95%信頼区問):1.20(0. 67-2.10), P=0.52｝。

〔総括(Conclusion)〕
HP除菌は背景胃粘膜の萎縮進展度が軽度から中等度の患者で早期胃癌内視鏡切除後の異時性多発癌の発生を有意に低下させた。