リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「新規NFAT5制御分子HES1の高浸透圧ストレス応答における機能解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

新規NFAT5制御分子HES1の高浸透圧ストレス応答における機能解析

立野, 浩輝 東京大学 DOI:10.15083/0002007129

2023.03.24

概要

審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名

立野 浩輝

生体を取り巻く環境は常に変化しており、浸透圧環境もそのひとつである。高浸透圧環境は細
胞からの水の流出や体積変化を導き、副次的には DNA 損傷やタンパク質の変性を引き起こす物
理化学ストレスである一方、腎臓においては尿の生成・濃縮のために積極的に高浸透圧環境が形
成されている。さらに近年、胸腺や脾臓といった免疫系の臓器および細菌感染や腫瘍の患部にも
高浸透圧や高塩濃度環境が形成されることも報告されており、新たな免疫制御要因としても注目
を集めている。
Nuclear Factor of activated T-cells 5 (NFAT5)は細胞の高浸透圧ストレス応答に不可欠な転写
因子であり、高浸透圧環境に応じて核内へと移行、さらに転写活性を上昇させることで下流の高
浸透圧応答遺伝子群の発現を誘導する。NFAT5 の機能は浸透圧環境に富んだ臓器である腎臓の
機能や形態形成に重要な役割を果たすことが知られている。加えて、NFAT5 は高浸透圧や高塩
濃度環境における炎症性サイトカイン産生や免疫細胞の分化といった免疫応答を制御すること
で、アレルギー性疾患や自己免疫疾患といった免疫系疾患の発症・増悪に関わることでも近年注
目を集める分子である。しかしながら、高浸透圧環境における NFAT5 の活性化メカニズムには
未解明な部分が多くあった。
以上の背景に基づき、当研究室では新規 NFAT5 制御のメカニズムの解明を目的として、
NFAT5 の高浸透圧依存的な核内移行を指標としたゲノムワイド siRNA スクリーニングを試みて
いた。申請者は、本スクリーニングの陽性因子に関して更なる機能解析を行うことで、NFAT5 の
高浸透圧環境における新規活性制御メカニズムを解明すると共に、高浸透圧環境における免疫応
答制御に対する役割にも迫った。以下に本研究によって得られた主要な知見をまとめる。

1. Notch シグナル関連分子 HES1 は核内移行や下流遺伝子の発現誘導といった NFAT5 の高浸
透圧ストレス応答に必要であった。
2. HES1 は高浸透圧環境において発現誘導され、HES1 の発現レベルの上昇は NFAT5 による
高浸透圧ストレス応答を増強した。
3. 上記の分子メカニズムとして、HES1 は NFAT5 の標的遺伝子プロモーターに対するリクル
ートを遺伝子選択的に促進した。
4. HES1 は NFAT5 による高浸透圧環境における炎症性サイトカインの産生に必要である。

前述のスクリーニングにおける陽性因子群において Enrich されていた Notch シグナツ経路の
関連遺伝子の中から、シグナル下流に位置する転写因子 Hairy and enhancer of split 1 (HES1)
が NFAT5 の核内移行や下流遺伝子の発現誘導に必要であることを見出した。この HES1 による
NFAT5 制御はオスモライト関連遺伝子の発現誘導を制御することで、高浸透圧環境において細
胞保護的に機能することを明らかにした。また、HES1 自身も高浸透圧ストレスに応答して発現
レベルが上昇すること、ならびに HES1 発現レベルの上昇は NFAT5 の高浸透圧応答を増強でき
ることを明らかにした。HES1 による NFAT5 制御の分子メカニズムとして、HES1 が NFAT5
の標的遺伝子プロモーターに対するリクルートを遺伝子種選択的に促進することを明らかにし
た。さらに、HES1 は NFAT5 による炎症性サイトカイン産生を制御することで、高浸透圧環境
における免疫応答に関しても必要である可能性が示唆された。
以上のように申請者は、Notch シグナル関連遺伝子 HES1 を新規 NFAT5 制御分子として同定
すると共に、その制御における分子メカニズムを明らかにした。高浸透圧環境という新たな文脈
において、細胞の発生や分化における役割が広く知られる HES1 のストレス応答分子としての新
たな役割を提示したことは細胞のストレス応答機構の理解という観点から生物学的に価値のあ
るものである。さらに、アレルギーや自己免疫疾患といった免疫系疾患の原因として注目を集め
る高浸透圧環境における免疫応答について、HES1 が NFAT5 による炎症性サイトカイン産生の
制御を通じて関与する可能性を明らかにしている。このことは、申請者の見出した HES1 による
NFAT5 制御のシステムが免疫系疾患の治療や創薬に繋がる可能性を期待させるものでもある。
以上より、本論文は博士(薬科学)の学位請求論文として合格と認められる。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る