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大学・研究所にある論文を検索できる 「Tubular mitochondrial dysfunction in cisplatin-induced AKI may be mediated by decreased IFT88 expression with shortening of primary cilia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Tubular mitochondrial dysfunction in cisplatin-induced AKI may be mediated by decreased IFT88 expression with shortening of primary cilia

藤井, 理恵 東京大学 DOI:10.15083/0002007024

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 藤井 理恵
本研究は,シスプラチン誘発性 AKI における近位尿細管のミトコンドリア機能障害にお
けるプライマリシリア(一次繊毛)メンテナンスタンパクである intraflagellar transport 88
(IFT88)の関与を明らかにするため,シスプラチン腎症マウス及び,近位尿細管細胞
RPTEC/TERT1 におけるシスプラチン刺激および siRNA を用いた検討において,以下の結
果を得ている.
1.

マウスシスプラチン腎症において,腎皮質における IFT88 の発現が低下する.
マウスシスプラチン腎症は,C57B6(7-8 週齢,雄)マウスにシスプラチン 25 mg/kg の

腹腔内投与により作成し 72 時間後に血液及び腎組織を回収した.シスプラチン腎症マウ
スの仁皮質では,Ift88 の遺伝子発現低下ならびに IFT88 タンパク発現低下がみられた.
IFT88 タンパクのウェスタンブロッティングのシグナル強度と血漿尿素窒素との相関を調
べると,有意に負の相関がみられた.
2.

ヒト近位尿細管上皮細胞株 RPTEC/TERT1 にシスプラチンを添加するとシリアが短縮

し,IFT88 の発現が低下する.
in vitro の実験では,高密度の培養でプライマリシリアを維持するヒト近位尿細管上皮細
胞である RPTEC/TERT1 細胞を用いた.RPTEC/TERT1 細胞を 20 µM 濃度のシスプラチン
で 6 well プレート上で 2 日間刺激すると,IFT88 の遺伝子及びタンパク発現が有意に低下
した.またシリアマーカーとして広く用いられている Acetylated α-Tubulin(Ac α-Tubulin)
の染色によりシリア長を測定すると,5 割程度まで短縮していた.
3.

IFT88-knockdown(IFT88-KD)細胞ではシリアが短縮する.
上記結果から,シスプラチン障害と IFT88 の機能変化との関連が考えられたため,シス

プラチン障害と IFT88 の関連を検討する目的で,IFT88-KD 細胞を作成した.シスプラチ
ン障害においてミトコンドリア機能の低下が知られていることから,IFT88-KD 細胞のミ
トコンドリア機能への影響を検討した.IFT88-KD 細胞は siRNA の手法を用い,6 well プ
レート上で 50 nM の siRNA を添加後 6 日間培養し作成した.2 種類の siIFT88 を用いて
IFT88 の KD を試みたところ,siControl 導入細胞に比較して 2 種類の siIFT88 導入細胞とも
に遺伝子レベルで 8 割以上の KD 効率を確認した.タンパクレベルでは 1 割程度まで
IFT88 の発現低下がみられた.シリア長は 2 種類の siIFT88 導入細胞ともに 5 割程度まで短
縮した.

4.

シスプラチン障害では RPTEC/TERT1 細胞にミトコンドリア障害ならびに脂肪酸酸化

(fatty acid oxidation; FAO)の活性低下が起こり,IFT88-KD 細胞でも同様の障害が認めら
れる.
シスプラチン障害では,近位尿細管細胞におけるミトコンドリア障害が広くられてお
り,本研究でも,Flux Analyzer を用いた検討により,ミトコンドリア機能を調べた.
RPTEC/TERT1 細胞は XF 96 プレート上でシスプラチン 20 µM 濃度で 2 日間刺激し,ミト
コンドリアの Oxygen consumption rate(OCR)を測定した.IFT88-KD 細胞については,6
well プレート上で siRNA 導入後 6 日間培養にて IFT88-KD 細胞を作成した後,XF 96 プレ
ートに再播種し,その 1 日後に OCR を測定した.シスプラチン刺激細胞,2 種類の
siIFT88-KD 細胞両者において OCR の低下が認められた.続いて FAO 活性を測定したとこ
ろ,シスプラチン刺激細胞及び IFT-88 細胞において,同様に FAO 活性の低下を認めた.
さらに FAO 関連遺伝子の発現レベルを測定したところ,トコンドリア生合成におけるマス
ターレギュレータ peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1alpha(PGC1α)を
含むこれらの遺伝子は,シスプラチン刺激細胞及び IFT88-KD 細胞において有意に発現低
下していた.
以上,本論文はシスプラチンで惹起される尿細管障害において,IFT88 の発現低下はプラ
イマリシリアを短縮し,ミトコンドリア障害ならびに FAO 活性低下に関与する可能性を示
した.本研究の結果は,シスプラチン誘発性 AKI における尿細管ミトコンドリア機能障害
は,少なくとも一部は,プライマリシリアの短縮を伴う IFT88 発現の低下によって媒介され
ていることを示唆している.さらに,シスプラチンによる腎毒性がミトコンドリア障害と関
連していることを考慮すると,本研究で示された尿細管における IFT88 とミトコンドリア
の相互作用は,ミトコンドリア障害を軽減する AKI 治療の新たな治療戦略となる可能性が
示唆される.
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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