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大学・研究所にある論文を検索できる 「二次性肺高血圧症に対する片肺移植の有用性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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二次性肺高血圧症に対する片肺移植の有用性

砂川, 玄悟 神戸大学

2022.09.21

概要

背景:進行した肺疾患による二次性肺高血圧症に対する最後の治療方法は、肺移植であり、病態として、片肺ではなく両肺移植の方が好ましく、これを支持する報告は複数ある。当施設では、近年、70 歳以上のレシピエントが年々増加しており、術後成績に影響を与える加齢に伴う動脈硬化性の疾患、糖尿病、そして腎機能障害の合併も珍しくない。この高齢者の肺移植に対して、外科的侵襲を最小化し、術後の合併症、死亡率を減じ、早期の回復を図ることを目的とし、当院では積極的に片肺移植を行っている。また、重症の肺高血圧症を有する患者にも片肺移植を行っており、今回、当院で施行した二次性肺高血圧症に対する片肺移植の成績を検討した。方法:2017 年 1 月から 2019 年 12 月の期間に当院で 318 例の片肺移植が行われた。肺高血圧症がない群(Control 群):42 名(13.5%)、平均肺動脈圧が 25-40 mmHg を中等症肺高血圧症群(Mild 群):217 名(68%)、平均肺動脈圧が 40 mmHg 以上を重症肺高血圧症群(Severe 群):59 名(18.5%)の 3 群に分類して、検討した。この分類に使用した肺動脈圧のデータは、肺移植時に手術室で挿入したスワンガンツカテーテルから得られたものである。また、原発性肺高血圧症の患者は、全て両肺移植を受けており、対象からは除外した。

結果:術前の因子で、統計学的に有意差が生じたのは、Body Mass Index (BMI)と肺動脈血管抵抗(PVR)であった。それぞれ、Control 群、Mild 群、Severe 群では、BMI(25.7 vs 27.8 vs 28.5, p<0.01)で、PVR(2.58 vs 3.08 vs 4.23, p<0.01)であった。術中術後の因子としては、肺移植時に人工心肺や ECMO を含む、機械的循環補助装置(MCS)の使用が、Control 群:4.8%、Mild 群:10.3%、Severe群:62.7%、 p<0.001 と有意に Severe 群での MCS 使用率が高かった。術後の病院滞在日数、術後血液透析の有無、再挿管率、また、Primary graft dysfunction(PGD)では 3 群間に有意差は認められなかった。1 年、2 年、3 年生存率は、それぞれ、Control 群:92.9%、85.2%、65.4%、Mild 群:89.4%、78.3%、75.1%、 Severe 群:93.2%、87.1%、79%(p=0.873)と優位差は認められなかった。

考察:今回の後ろ向き研究では、二次性重症肺高血圧症への片肺移植は、Control 群、また、Mild 群と比較して少なくとも遜色ない結果を得た。一般的に、原発性及び二次性肺高血圧症に対する肺移植として、両肺移植が標準治療であるが、2000 年代に片肺移植の有用性を論じた報告もある。しかし、原因の肺疾患に関わらず、両肺移植の優位性を論じる報告が多く、片肺移植の利点である術後早期の死亡率や合併症の軽減が過少評価されている。2019 年に Nasir らは、UNOS のデータベースを利用し、二次性の肺高血圧症に対して、両肺移植の方が片肺移植よりも優れていると発表したが、莫大な UNOS のデータベースの中に、我々がキーポイントと考える手術中の人工心肺や ECMO を含む MCS の使用の有無の情報は一切ないのが大きな Limitation になっている。また、米国での肺移植のほとんどが両肺移植ではある が、ドナー不足の問題は依然解決されておらず、終末期肺疾患を持つ患者で肺移植の恩恵を受けられる人はかなり限られている。近年では、肺移植待機患者の死亡率が年齢とともに増加しており、とくに、65 歳以上が最も高くなっている。さらに疾患別にみると、拘束性肺疾患の死亡率が最も高く、その中に、今回の研究対象である二次性肺高血圧症も含まれる。残念ながら、重症肺高血圧症に対する肺移植は両肺移植を選択することが主流であるために、70 歳以上にもなると、肺移植を積極的に行っている施設でさえも、肺移植適応外と診断されるのが現状である。肺移植で全米のリーディングホスピタルである当院では、他施設で高齢という理由で肺移植適応外と診断された患者が多く紹介される。このような背景があるため、片肺移植の選択肢は、高齢化社会に加え、慢性のドナー不足においても、患者にとって重要なオプションだと考える。今回の研究では、片肺移植は、手術中に適切な MCS を使用すれば、二次性肺高血圧症にも有用であることを初めて示した。2020 年、 Hoetzenecker らは、両肺移植に対し、PGD を予防する目的で、ECMO を術中から手術室退室後も使用し、良好な成績を得たと発表した。ECMO の使用下で、肺動脈圧をモニターすることにより、ドナー肺への血流を制御することが可能となり、それが両肺移植に対する PGD 率が最も低かった要因と論じている。我々の研究では、片肺移植ではあるが、同様の作用機序により、重症肺高血圧症であっても、中等症、そして肺高血圧症がない群と同等の結果が得られたと考える。しかし、我々の研究の Limitation としては、①後ろ向き研究であること、②フォローアップ期間が短く、長期の結果が不明であることが挙げられるため、今後、引き続き追跡しなければならない。③重症肺高血圧症の症例がわずか 59 例であることが挙げられるが、10000例以上のデータを用いた UNOS の報告でも重症肺高血圧症が 199 例であったことを考えると決して少なくはないと考える。

結語:当院での二次性肺高血圧症に対する片肺移植は、手術中の ECMO や人工心肺を含む MCS の適切な使用により安全に行うことができ、満足する結果を得られた。また、慢性のドナー不足が問題視される中、一人のドナーから二人のレシピエントを救える片肺移植のオプションは重要である。片肺移植時の MCS の予防的使用は、二次性肺高血圧症に対する片肺移植の成績を向上する重要な役割を担う可能性があ
る。

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