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Detection of subclonal SETBP1 and JAK3 mutations in juvenile myelomonocytic leukemia using droplet digital PCR

若松, 学 名古屋大学

2022.07.01

概要

【緒言】
若年性骨髄単球性白血病(Juvenile myelomonocytic leukemia: JMML)は、骨髄単球の過剰な増殖と顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子の過敏性を特徴とする稀な小児白血病の一病型である。JMML 患者の 85%以上は、PTPN11、NF1、NRAS、KRAS、 CBL などの RAS 経路の遺伝子変異を有している。JMML 患者の一部で、主要な RAS経路変異に加えて、SETBP1 や JAK3 遺伝子変異を含む二次的変異が出現し、これらは予後不良と関連することが知られている。二次的変異のうち、最も頻度の高いホットスポット変異として、SETBP1 p.D868N と JAK3 p.R657Q がある。これまでに、デジタル PCR(droplet digital PCR; ddPCR)を用いて、初発の JMML 患者における 0.1%未満の変異アリル頻度(variant allele frequency; VAF)のサブクローナルな SETBP1 遺伝子変異を評価した結果、低頻度な SETBP1 遺伝子変異も予後不良と強く関連することが示されている。本研究では、JMML、および RAS 関連遺伝子の胚細胞遺伝子変異が原因で発症するヌーナン症候群関連骨髄増殖性疾患(JMML-like myeloproliferative disorder associated with Noonan syndrome; NS/MPD)の患者に対して、ddPCR 法を用いてサブクローナルな JAK3 p.R657Q と SETBP1 p.D868N のホットスポット変異を高感度に評価した。

【対象及び方法】
ddPCR を用いて、JMML 患者 128 例と NS/MPD 患者 15 例を対象に SETBP1 p.D868Nと JAK3 p.R657Q のホットスポット変異を評価した。SETBP1 p.D868N と JAK3 p.R657Q遺伝子変異と両方の野生型を標的とする特異的プライマー(Bio-Rad, California, USA)を設計した。各 20μL の PCR 反応に、各々のプローブを 250nM、特異的プライマーを 900nM、DNA を 40ng 入れて混合し、PCR 増幅を行った。PCR 増幅後に、6-Carboxyfluorescein (6-FAM)とHexachlorofluorescein(HEX)プローブの蛍光強度を QX200 Droplet Reader (Bio-Rad)を用いて測定した。データは QuantaSoft v.1.7(Bio-Rad)により解析した。陰性コントロールとして Healthy control の 30 例を測定した。

【結果】
SETBP1 p.D868N と JAK3 p.R657Q 遺伝子変異の ddPCR 法、Healthy control で検出されるエラー率は、それぞれ 0.013%±0.012%および 0.010%±0.010%(平均±標準偏差)であった。SETBP1 および JAK3 遺伝子変異を有する患者の DNA を野生型 DNA と混合し、連続希釈系を作製し、アッセイの直線性を評価した。結果、SETBP1 および JAK3遺伝子変異の予想されるアリル頻度と観察されたアリル頻度との間に有意な相関関係が認められた。これらの結果に基づき、SETSBP1 および JAK3 遺伝子変異の検出閾値は、エラー率の平均+3 SD より高いアリル頻度として 0.05%と設定した。
次に JMML 患者 128 例と NS/MPD 患者 15 例で測定した。JMML 患者 128 例のうち、 SETBP1 p.D868N と JAK3 p.R657Q は、それぞれ 9 例(7.0%)と 15 例(11.7%)で検出した (図 1A–B)。SETBP1 と JAK3 遺伝子変異は、NS/MPD 患者では一例も検出されなかった。検出した合計 24 個の変異のうち 9 個(37.5%)は、deep sequencing では同定できな い VAF が 1%未満の遺伝子変異であり、ddPCR 法の優れた感度を示唆する結果であった。低い VAF の SETSBP1 および JAK3 遺伝子変異が臨床転帰に与える影響を評価する ために、JMML 患者を各変異の VAF に応じて 3 グループに分類した。CBL 遺伝子変異を有する JMML 患者(n=24)を除き、少なくとも 1 つの遺伝子に VAF1%以上を持つ患者を Major 群(n=14)、VAF1%未満の変異のみを持つ患者を Minor 群(n=5)、変異を持たない患者を Wildtype 群(n=85)と分類した。結果、サブクローナルな SETBP1 および/または JAK3 遺伝子変異は、無移植生存率と有意に関連した(P = 0.017)(図 1C–D)。 JMML 患者 128 例中 19 例(14.8%)が、SETBP1 および/または JAK3 遺伝子変異を有 し、うち 5 例(26.3%)が両変異を有していた(図 2A)。続いて、SETBP1、JAK3 遺伝子変異と JMML で証明されている予後因子の関連性を検討した。SETBP1 と JAK3 遺伝子変異は相互に強く関係し、両方の変異は体細胞 PTPN11 や NF1 遺伝子変異、DNA メチル化解析で同定した高メチル化プロファイルなどの確立された予後因子とともに有意に予後不良に関連した(図 2B)。
最後に、SETBP1 と JAK3 の両遺伝子変異を有する患者において、同一クローンに SETBP1 と JAK3 遺伝子変異が存在するかを検討した。UPN28 は、初発時に PTPN11 (c.227A>C, p.E76A)、SETBP1、JAK3 遺伝子変異をそれぞれ VAF46.0%、41.9%、0.9%
で認めた(図 2C)。UPN28 の骨髄単核球細胞を顆粒球コロニー刺激因子(R&D Systems, Wiesbaden, Germany)と MethoCult™ H4434 classic(STEMCELL Technologies, Vancouver, Canada)で 14 日間培養した後に、93 個のコロニーを個別に回収し、各コロニー由来の DNA をそれぞれ抽出した。抽出した各々のコロニーに由来する各 DNA をそれぞれサンガーシークエンスで解析した結果、2 個のコロニー(2.1%)が SETBP1、JAK3、および PTPN11 遺伝子変異を認めた(図 2D)。

【考察】
本研究は、極めて低い VAF の SETBP1 および JAK3 遺伝子変異を検出する際にddPCRが有用な検査診断法であり、これらのサブクローナルな SETBP1 および JAK3 遺伝子変異と JMML に関連する予後因子の間に強い相関関係があることを示した。
JMML は RAS 経路に関連する遺伝子変異を除いて、他の体細胞変異が極めて少ないことが以前に報告されているが、本研究では SETBP1 と JAK3 遺伝子変異の両方を持つ患者が複数例で観察された。この結果は、これらの両方の遺伝子変異が同一クローン内で獲得されることが示唆され、さらに両方の遺伝子変異を持つサブクローンは正の選択圧(positive selection)を受けた可能性がある。成人期の骨髄増殖性疾患では、 JAK2 と TET2 遺伝子変異の獲得順序が、臨床的特徴、生物学的性質、およびクローン進化と関連することが報告されているが、JMML では SETBP1 と JAK3 遺伝子変異の獲得順序と臨床転帰の関連性についてはさらなら検証が必要である。

【結語】
ddPCR 法は、極めて低い VAF のサブクローナルな SETBP1 および JAK3 遺伝子変異を検出する有用な診断検査であった。サブクローナルな SETBP1 および JAK3 遺伝子変異の検出は、初発の JMML 患者に対するリスク層別化に役立つ可能性がある。

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