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夜間定時制課程数学科におけるアクティブ・ラーニング教材の検討

原 健太郎 Kentaro Hara 東京理科大学 DOI:info:doi/10.20604/00003644

2021.06.09

概要

夜間定時制課程は勤労学生のための教育機関としてのみでなく,多様な実情を抱えた生徒への教育機関としての役割を担っている.「平成23年度高等学校定時制課程・通信制過程の在り方に関する調査研究」では「中学校時代からの不登校経験者,学力に自信のない生徒で全日制課程に入学できないから(むしろ積極的選択から)入学した生徒が多く在学している現状がうかがえるΪと述べられ,また最も苦手な教科として数学を挙げた定時制高校の生徒は30%近くに上り,一番選ばれている.平成28年12月中央教育審議会答申で「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善の必要性が述べられた.パソコンだけでなくスマ7トフォン等の普及によるICT活用は身近となり,その点を活用した反転学習の形態が「主体的・対話的で深い学び」を実現する可能性が高いと捉えた.
 そこで本研究は,算数・数学の基礎内容の習得に課題を抱える生徒が多く在籍する夜間定時制課程の生徒に対して,夜間定時制課程の生徒に対する数学I「図形と,計量(三角比)」での「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けたアクティブ・ラーニング型の授業デザインを開発し,その開発した授業への有効性について検証することを目的とした.この目的を達成するために,4つの段階を設定し,以下の結果を得た.

 第一段階では,夜間定時制課程に在籍する生徒の算数・数学の基礎内容の習得状況について調査を行った.結果として,小学4年内容から正答率が大きく下がること,乗法九九や自然数の四則演算での繰り上がり繰り下がりの計算で課題が生じること,分数の加減の計算で通分を用いて計算することが出来ないこと,マイナスの記号を含む式の計算で加法乗法の区別が付いていないこと,文字を用いた式で課題を抱えていること,三角形の面積を求める際に+2がされないなど図形の面積の概念が分かっていないことなどを示した.そして,三角比の学習で困難が生じる場面について,教科書内容と指導場面の状況から分析し,三角比の学習の困難が生じる場面について詳細に検証し,それぞれ算数・数学の基礎内容の習得での課題が起因していることを示した.

 第二段階として,算数・数学の基礎内容の習得状況や夜間定時制課程の生徒のICT活用状況の実態を踏まえ,アクティブ・ラーニングの視点での「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善として,反転学習の授業デザインを開発した.授業デザインの開発では,インストラクショナルデザインの基本的なモデルの一つであるADDIEモデル下位活動に忠実に従って行った.結果として,分析(Analyze)の段階,設計(Design)の段階,開発(Develop)の段階に対する検討を行い,(I)導入,(Π)演習,(瓜)確認テストの3つのフェーズに9つの外的教授事象を設定し,ADDIEモデルの循環的な取組としての一巡目として,反転授業の授業デザインを開発した.

 第三段階として,第二段階で開発した反転授業の授業デザインを実践Iとして実施し,反転授業の授業デザインの有効性について以下の結果を得た.
●効果・効率・魅力の観点からの検討より,効果として,基礎学力が特に低い生徒での大きな得点の増加や,復習に取り組む学習姿勢の変容,効率として,学習場面での時間短縮.授業者の効率的な指導,魅力については視聴意欲を高める動画の在り方や学習スタイルの検討の必要性が確認された.
●アクティブ・ラーニングの視点として,「主体的学び」として動画を復習として利用する状況,「対話的学び」として動画を活用した教え合い活動の活性化が確認され,「深い学び」に向けた学習者の態度の変容への示唆を得た.
●課題として,学習用動画を予習として視聴した生徒は半数程度しかおらず,反転授業の授業デザインへの修正の必要性が認められた.

 第四段階として,実践Iでの検証を基に,ADDIEモデルの修正(Revise)の機能をとして授業デザインの修正を行った.この場面では開発(Develop)の段階の下位活動を再検討し,ADDIEモデルの循環的な取組としての二巡目として,学習用動画活用型の授業デザインを開発した.そして学習用動画活用型の授業デザインを実践Πとして実施し,実践Iの結果も踏まえ,夜間定時制課程数学科での学習用動画を活用したアクティブ・ラーニング型の授業デザインの有効性について以下の結果を得た.
●学習用動画の使用によって,学習者,授業者ともに、学習や指導の場面での効果・効率は向上が確認された.授業デザインの修正,学習プラッ.トフオームの使用により,学習用動画の視聴が学習内容の習得状況の向上に効果的に機能し,学習者は学習用動画の有効性を感じていたことが明らかとなった.
●ADDIEモデルでの開発プロセスに忠実に慕うことにより,夜間定時制課程の学習者の実状に合った授業デザインの開発が満たさた.
●課題として,数学的基礎学力に著しい課題を抱える生徒へは,本研究で開発した授業デザインでは適応できない可能性も考えられる.

 以上を要するに,本研究の結果として以下にまとめることができる.

①夜間定時制課程の生徒の数学的基礎学力の状況として,多くの生徒が小学4年内容までの内容で習得に困難を抱えている.学習者個々の習得状況は幅広く,2桁の加法での繰り上がりの計算で困難を抱えている生徒から,中3内容まで習得できている生徒まで在籍している.
②三角比の指導内容は高等学校で学習する新しい関数概念の単元であるが,義務教育課程までの学習内容と大きく関係している.夜間定時制課程での三角比指導の場面では,義務教育課程内容の習得状況の課題が起因し,三角比の各項目でさまざまなつまずきの場面が見られる.
③インストラクショナルデザインモデルのADDIEモデルに従うことにより,学習者の実態や授業場面への分析,学習成果や目的を明確にした詳細な設計,分析,開発の段階を踏まえた学習用動画などの素材の開発によって,学習者,授業者の両面から有効性が,認められる授業デザインを開発することができる.そして,循環的な取組として修正を検討することで,より一層の効果的な授業デザインを開発することができる.
④学習用動画を使用することに.よって,受動的な学習姿勢を強く示す学習者に対しても予習や復習などの主体的な学びや、教え合い活動が活性化するなどの対話的学びの場面が確認された.また学習環境にWeb上の学習プラットフォームを取り入れることにより習得状況の向上が認められ,学習姿勢が向上した可能性が示唆される.
⑤本研究で開発したアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善による学習用動画活用型の授業デザインでは,夜間定時制課程の生徒での「主体的・対話的で深い学び」ペの学習転換の状況が認められ,数学的基礎学力に課題を抱える学習者が効果的に学習することができる有効性が認められた.

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