リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Simple and rapid method for determination of abemaciclib in human serum using supported liquid extraction pretreatment and LC-MS/MS analysis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Simple and rapid method for determination of abemaciclib in human serum using supported liquid extraction pretreatment and LC-MS/MS analysis

関﨑, 直人 セキザキ, ナオト Sekizaki, Naoto 群馬大学

2021.03.23

概要

乳癌患者は年々増加の一途をたどり、本邦では年間10万人以上の初発患者が発生しているとされている。乳癌治療における薬物療法は実施のタイミングで目的が異なり、術前では腫瘍の縮小を目的に実施し、術後では癌の再発予防のために実施する。遠隔再発後は、薬物治療は生存期間の延長と QOL の維持・改善を目的に実施される。

アベマシクリブはサイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase: CDK)4 および CDK6 に対する選択的阻害作用を有する経口投与可能な小分子化合物であり、ホルモン受容体陽性かつ ヒト上皮増殖因子受容体 2 型(human epidermal growth factor receptor type2: HER2)陰性の 手術不能または再発乳癌に対する新しい作用機序の分子標的薬である。これまで、ホルモン受容 体陽性かつ HER2 陰性の再発乳癌に対する初回治療は内分泌療法が基本であったが、CDK4/6 阻 害薬の登場後は、再発乳癌に対する一次療法として CDK4/6 阻害薬と内分泌療法の併用療法が強 く推奨されている。一方で、臨床試験では 75%以上の頻度で下痢が認められており、悪心や倦 怠感などの副作用も比較的高頻度に認められている。骨髄抑制など一部の副作用については血液 中アベマシクリブ濃度が大きく影響すると報告されているが、血液中アベマシクリブ濃度には大 きな個人差があることが報告されている。このように、アベマシクリブを用いた治療においては、血液中アベマシクリブ濃度解析に基づく投与設計が有用であると考えられているが、これまでに 臨床応用可能な血液中アベマシクリブの正確な分析方法は報告されていない。そこで、アベマシ クリブの適切な投与設計法を検討するため、臨床検体を対象としたアベマシクリブの分析法を構 築することとした。

血液試料には、タンパク質、脂質、塩類などが測定対象物質よりはるかに高濃度に存在する。 このような試料中の混在物(夾雑物)は成分分離や検出精度に影響を与えうることが知られてお り、臨床検体の分析においてはしばしば大きな影響を及ぼすことも知られている。特に質量分析 計を用いた分析においては、夾雑物質が目的成分のイオン化効率に影響を及ぼす(マトリックス 効果)ことで、定量分析に影響を与えることが知られており、臨床検体の分析において大きな問 題となる。マトリックス効果を解消するためには、試料の精製を行う必要があり、その方法とし て、除タンパク法、液液抽出(liquid-liquid extraction: LLE)法、固相抽出(solid phase extraction: SPE)法など多様な方法が存在する。血液中薬物濃度を測定するための前処理として、 LLE 法は広く使用されている方法であるが、試料を処理する際のエマルジョン生成がその後の抽 出操作の妨害となっていた。近年、LLE 法に代わる新たな方法として、珪藻土カラムを使用した保持型液液抽出(supported liquid extraction: SLE)法が開発され、各種血液中薬物濃度の測 定に応用されている。SLE 法は LLE 法や SPE 法と比較するとエマルジョンが形成されにくく、 また、少量の抽出溶媒による溶出が可能なため分析対象物質の損失リスクを減らすことができる。加えて、抽出に必要なプロセス数が少なく、作業者の習熟度の影響を受けにくいことからも、臨 床応用しやすい方法として注目されている。そこで本研究では、SLE 法を用いることで、迅速か つ簡便な分析法を構築することとした。

血清試料の前処理には ISOLUUTE SLE+ を使用し、メチルtert-ブチルエーテルを用い目的物を溶出した。測定機器には超高速液体クロマトグラフィーおよび四重極飛行時間型質量分析計(quadrupole time-of-flight liquid chromatograph mass spectrometer: LC-QTOF MS)を用いた。イオン化法はESI(electrospray ionization)positive 法とした。分離カラムには ACQUITY UPLC BEH130 C18 を使用し、0.1%ギ酸溶液とアセトニトリルを用いたグラジエント分析を行った。

アベマシクリブ濃度が20、50、100、200、500および1,000 ng/mLの血清試料について、内部標準法により検量線を作成した結果、20-1,000 ng/mLの範囲で良好な直線性を示し、相関係数は 0.999以上であった。6濃度(20、50、100、200、500、1,000 ng/mL)に調整した血液サンプルを用い、日内および日間変動について検討した結果、真度および精度はそれぞれ -4.3-1.7%および 0.90-6.19%の範囲であり、良好な結果が得られた。また、本分析方法のおける回収率は87.7 ± 4.3%であり、マトリックスファクターは、1.00 ± 0.083であった。

本研究により得られた結果はすべてバリデーションガイドライン規定を満たしたことから、本測定方法は、ヒト血清中アベマシクリブ濃度測定方法として臨床応用可能な初めての測定方法であることが示された。

本研究により確立された測定方法を応用し、薬物血中モニタリングの実施によるあるいは患者状態に合わせたアベマシクリブの投与量調整が可能となれば、乳癌患者のアベマシクリブによる治療と QOL の改善ならびに副作用の早期発見に大きく貢献できると考えられる。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る