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大学・研究所にある論文を検索できる 「膵癌における新規S-1感受性予測因子のプロテオミクスによる網羅的探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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膵癌における新規S-1感受性予測因子のプロテオミクスによる網羅的探索

三田地 克昂 東北大学

2021.03.25

概要

背景:本邦では膵癌切除後の補助治療としてS-1による内服加療が推奨されているが, 抗癌剤への感受性は個々の症例間で異なることから、全例に対して有用な効果が得られるわけではない。抗癌剤感受性試験の一つであるCD-DST(Collagen gel droplet embedded drug sensitivity test)は膵癌においてS-1投与後の効果予測の有用性が示された検査である。しかしながら他癌種に比較し膵癌では検査に必要とされる検体の確保が困難であり、検査によって結果が得られる割合は64.8% にとどまるのみであった。成功率はあまり高くない検査であるもののCD-DSTは膵癌において唯一効果予測の有用性が示された検査である。このため本検査の結果を活用しつつ、より結果が得られやすい新たな検査方法を開発することで、臨床への応用が可能となるものと考え本研究を開始した。

目的:本研究の目的はCD-DSTの結果を基にS-1の効果予測を可能にする新たなバイオマーカーを探索し、免疫染色法というより簡便な検査方法での評価を目指すことにある。

方法:研究は以下の3段階に分けて行った。Step1として膵腺癌切除症例のうち、CD-DST法にて5-FUの感受性結果が得られた症例を対象とし高感受性症例及び低感受性症例をそれぞれ5例ずつ選択した。切除標本のホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)からレーザーマイクロダイセクション(LMD)の手法にて癌細胞のみを選択的に採取して、質量分析器を用いてタンパク質の抽出を行い、統計解析を行うことで候補因子の選定を行った。Step2では、抽出された因子について過去の報告からその機能を検証することで候補因子の選定を行い、免疫組織化学染色法(IHC)を用いてその発現量を評価することで, CD-DSTが示す5-FUの感受性を予測しうる因子の抽出を行った。Step3では、膵癌切除後にS-1による補助治療が施行された症例を対象とし、術後の無再発生存(RFS)をアウトカムとして、Step2にて絞り込みを行った因子を用いてIHCによる発現解析を行い、候補因子がS-1投与後の術後再発を予測しうるか検証した。

結果:Step1では質量分析法にて計2696個のタンパク質が抽出され、統計解析により44因子への絞り込みを行った。Step2では文献を用いた検証にて8因子を選択し、IHCにてCD-DST法の結果を反映する因子としてC1TCとSAHHの2因子を抽出した。Step3ではC1TC陽性群ではC1TC陰性群に比較し有意にS-1投与後の再発率の低下が認められ(p=0.005)、SAHHでも同様に陽性群ではRFSの有意な改善が認められたことから(p=0.031)、いずれの因子もS-1の効果予測に有用であることが明らかとなった。さらにC1TC、SAHHの発現を組み合わせた解析を行ったところ、C1TC、SAHHいずれも陰性であった症例(n=8)ではC1TCとSAHHの両方またはいずれかが陽性であった症例(n=39)に比較し、有意に累積再発率が高い結果が得られた(p=0.006)。再発を予測する因子について多変量解析を行った結果、膵前方組織浸潤陽性(HR2.48; 95% CI1.01-7.38, p=0.048)とともに、両因子ともに陰性であることは独立した再発リスク因子になることが明らかとなった(HR3.12; 95% CI1.23-7.30, p=0.018)。

考察:C1TCとSAHHは5-FU高感受性群に高く発現する因子であり、いずれも生体内において葉酸代謝とメチオニン代謝によって形成される一炭素代謝において重要な役割を有する酵素である。これらの発現が低下することで細胞内における葉酸代謝産物の合成能が低下することが予想され, 葉酸代謝産物の低下により5-FUの標的であるチミジル酸シンターゼの活性阻害が十分に行われないことから、S-1による効果が低下するものと考えられた。特に両因子ともに陰性であった場合、S-1投与後の再発率は極めて高く, 同薬剤による補助治療の有用性に乏しいことから、他の薬剤による補助治療を考慮する必要があると考えられた。

結語:膵癌の抗癌剤感受性試験であるCD-DSTの結果を基に、プロテオミクスの手法を用いて感受性予測が可能となる新規バイオマーカーを同定した。本研究で同定されたC1TCとSAHHの2因子は、いずれも一炭素代謝に属する酵素群であり、切除検体を用いた本因子の発現解析はS-1による膵癌術後補助療法の効果予測に有用な検査法となる可能性がある。

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