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大学・研究所にある論文を検索できる 「A preliminary study of rapid-fire high-throughput metabolite analysis using nano-flow injection/Q-TOFMS」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A preliminary study of rapid-fire high-throughput metabolite analysis using nano-flow injection/Q-TOFMS

Taki, Kentaro 瀧, 健太朗 名古屋大学

2020.11.10

概要

【緒言】
 生体試料中の代謝物は多様性に富んでおり、それぞれの物性は大きく異なる。その結果、代謝物の分析には様々な手法が用いられており、中でも液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)やガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE/MS)は、感度や特異性の面から主要な分析法となっている。これらの手法では、試料を質量分析計(MS)へ導入する前にクロマトグラフィーにより試料中の様々な成分を分離することができ、また各成分のリテンションタイムの情報を得ることが可能である。しかし、1 検体あたりの分析時間が長く、さらに成分ごとの最適カラムおよび移動相の選定やグラジエント条件の最適化などが必要となる。またこれらの手法を用いた代謝物の分析では、分析前に試料中成分の抽出や誘導体化、乾固・再溶解などの複数の処理が必要となり、処理時に系統誤差などが生じた場合には、分析結果の誤差に繋がる。これらの背景から、代謝物の分析ではシンプルな試料調製法や、迅速かつ簡便な分析法が必要である。
 フローインジェクション分析法(FIA)は、試料を検出器へ直接導入する分析法であり、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のように分析カラムを用いた分離を行わないため、1 検体あたり数十秒程度で分析することが可能である。フローインジェクション質量分析法(FIA/MS)は様々な化合物の分析に用いられつつあるが、全ての成分が同時に MS へ導入されるため、生体試料のように非常に多数の成分が含まれる試料中の微量成分の検出は困難であり、分析法の高感度化と検出器の高選択性が必要となる。一般的な LC/MS や FIA/MS では移動相の流速を毎分 0.1~1 mL 程度に設定し、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)により MS へ導入する。一方、ナノエレクトロスプレーイオン化法(nano ESI)では流速を毎分 100~1,000nL 程度にすることで、高流速の ESI に比べて脱溶媒、イオン化、イオン透過効率が向上し、より高感度に分析することが可能となる。そこで我々は FIA/MS と nano ESI を組み合わせて、迅速かつ高感度な新たな代謝物分析法の構築を目指した。さらに FIA の検出器では、成分検出の選択性が高く、短時間で多くの成分を検出する必要があるため、MS には高分解能かつ高速なデータ取得が可能な四重極飛行時間型質量分析計(Quadrupole time-of-flight mass spectrometer; Q-TOFMS)を用いた。

【方法】
 ガンや肝臓障害などにおいては、エネルギー代謝に変化が生じることが知られていることから、本研究ではエネルギー代謝に注目し、主要エネルギー代謝経路(解糖系、 TCA 回路、ペントースリン酸経路)の中間代謝物 17 成分を対象として分析法の構築を行った。
 nano-flow injection/Q-TOFMS の分析条件の最適化を行い、本法を用いて代謝物の標準物質およびマウス血清の抽出液を分析し、再現性と堅牢性、定量性について評価した。また本法に適した試料調製法を検討するため、マウス血清を用いてメタノールによるタンパク質沈殿法またはメタノール・クロロホルムによる液液抽出法を行い、各
 サンプルの分析結果を比較した。さらに分析法の実用性を検証するため、コントロールラットとセロトニン症候群モデルラットの血漿を分析し、得られた分析結果の統計解析を行うと共に、既存のメタボローム解析法であるガスクロマトグラフィータンデム質量分析(GC/MS/MS)による分析結果との比較を行った。

【結果・考察】
 nano-flow injection/Q-TOFMS を用いて解糖系、TCA 回路、ペントースリン酸経路における中間代謝物 17 成分を対象とした分析法の構築を行った(Table 1)。本法では、 1 回の分析が 3 分以内で完了すると共に、極低流速(nano flow)にすることによりピーク強度が増し、より大きなピークエリア値を得ることができた(Figure 1)。
 続いて生体試料の分析を行ったところ、マウス血清の抽出液を連続して 50 回分析した場合でも感度の低下は見られず安定した結果を得ることができ(Figure 2)、本法は堅牢性の高い分析システムであり、また優れた再現性が得られることが明らかとなった。続いて安定同位体標識された代謝物標準物質を濃度段階的に添加した試料を用いて検量線を作成したところ、各成分で高い直線性を得ることができ、本分析法の定量性が示された(Figure 3)。特に、glucose-6-phosphoric acid-13C6 は化学構造中にリン酸基を有しており、配管や分析カラムの金属表面への吸着が起こりやすいため、一般的に検出が難しい成分であるが、本法では分析カラムを用いないことから、リン酸代謝物の吸着サイトを極力低減することができるため、高い直線性を得ることができたと考えられた。
 さらにマウス血清を用いて本法に適した試料調製法を検討したところ、血清と等量のメタノールを加えたタンパク質沈殿法およびメタノール・クロロホルムによる液液抽出法ではピーク形状に大きな乱れが見られた。一方、血清に 3 倍量のメタノールを加えたタンパク質沈殿法は最も良好なピーク形状を得ることができ、本手法に最適な試料調製法であることが示された。
 最後にセロトニン症候群モデルラットとコントロールラットの血漿サンプルを用いて本分析法の検証を行ったところ、PCA スコアプロットにおいて両群が明確に分離しており(Figure 4A)、両者の代謝プロファイルの違いを示すことができた。また Figure 4B に示したローディングプロットにより、セロトニン症候群モデルラット血漿では、エネルギー代謝中間体が相対的に高濃度になっていることが示された。さらに本法による分析結果と GC/MS/MS によるメタボローム解析法から得られた分析結果を比較したところ、乳酸とリンゴ酸において良好な正の相関が確認され(Figure 5)、本分析法は GC/MS/MS によるメタボローム分析法と同様の結果を得られることが明らかとなった。

【結語】
 我々は、nano-flow injection/Q-TOFMS を用いた迅速かつ高感度な新たな代謝物分析法の構築に成功した。また本法では高い再現性と堅牢性、定量性を得ることができ、代謝物分析法における有用性が示された。さらに FIA の試料調製では、試料に対して 3 倍量のメタノールを加えたタンパク質沈殿法が最も適しており、LC/MS や GC/MS などの分析法に比べ、非常に簡便で短時間に試料調製を行うことが可能であった。
 また疾患モデルサンプルの分析では、コントロール群と疾患モデル群の代謝プロファイルの違いを示すことができ、GC/MS/MS によるメタボローム分析法と同様の分析結果が得られたことから、本法では正確な代謝物分析が可能であることが示唆された。
 本研究ではエネルギー産生に関わる代謝成分に絞った分析を行ったが、今後さらに対象成分を拡充することで、従来のクロマト分離を伴った手法では困難である多検体迅速分析を達成する手法として活用できることが期待される。

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