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書き出し

1変数保型形式の数論入門

金子, 昌信 Kaneko, Masanobu カネコ, マサノブ 九州大学

2021.01.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

1変数保型形式の数論入門
金子, 昌信
九州大学大学院数理学研究院 : 教授

http://hdl.handle.net/2324/4755994
出版情報:数理科学. 59 (2), pp.7-14, 2021-01-20. サイエンス社
バージョン:
権利関係:

1変数保型形式の数論入門
金子昌信 (九州大学)
志賀先生の保型形式入門の記事があるようですが,重複をいとわず,初歩的な話から始め
るとします.

1

モジュラー形式

保型形式というのは,ある種の「高級周期関数」であると言えましょう.以下では「1 変数
保型形式」という代わりに,おそらくはよりポピュラーであろう,
「モジュラー形式」という
言葉を使うことにします.この用語は時と場合によって色々な意味で使われますが,
「入門」
のレベルでは,あまり気にせず,
「1 変数保型形式」と同じものだと思って頂いてよろしいか
と思います.
高校で習う三角関数,sin x や cos x といった関数は,

sin(x + 2π) = sin x, cos(x + 2π) = cos x
という周期性を持つのでした.この周期性がこれらの関数の最大の特徴であり,存在意義で
あると言ってもよいでしょう.これら三角関数は,実数変数の関数と見ても,複素変数の関
数と見ても,周期は 2π の整数倍という,
「一方向」の周期性しか持ちません.これに対し,19
世紀にガウス,アーベル,ヤコビらが研究の先 をつけ,
「19 世紀数学の華」とも称される
「楕円関数」は,複素変数の関数で,2 つの方向の周期性を持つ「二重周期関数」です.最も
ポピュラーな楕円関数の一つであるワイエルシュトラスの ℘(普通ペー,と読みます)関数
℘(z) は,実数上一次独立な 2 つの複素数 w1 , w2 を与えるごとに無限級数
)
∑ (
1
1
1

℘(z) = 2 +
(1)
z
(z − w)2 w2
w∈L\{0}

で定義される関数です.ここで L は w1 と w2 の整数係数の一次結合全体

L = Zw1 + Zw2

(Z は整数全体の集合)

を表します.この ℘(z)(正確には ℘(z; w1 , w2 ) または ℘(z; L) のように書くべきです)が,

℘(z + w1 ) = ℘(z + w2 ) = ℘(z),
一般には

℘(z + w) = ℘(z), ∀w ∈ L
という,2 方向の周期性を持ちます.このことは定義から直ちには分かりませんが,微分 ℘′ (z)
の周期性は明らかと言ってよく,そこから少しの考察で ℘(z) 自身の周期性が導かれます.

1

これら 2 つの周期関数,三角関数と楕円関数について,次のような見方をしてみましょう.
まず,実数全体 R は足し算で群をなしていることを思い出します.そしてその群が,実数変
数の関数 f (x) に対し変数を t だけずらすという変換によって作用している,

f (x) → f (x + t),
と考えます.すると三角関数は,R の(離散的な)部分群である,2π の整数倍全体 2πZ の
作用で不変な関数である,と見ることができます.同様に,複素数全体 C が足し算で作る群
が複素変数関数たちに,やはり変数を足し算でずらす操作によって作用していて,w1 と w2
の整数係数一次結合全体という C の離散部分群の作用で不変な関数が楕円関数である,と
いうことができます.
その見方で言うと,モジュラー形式の特別な場合である,
「モジュラー関数」というのは,
複素上半平面上の関数で,そこに変換群として働くある離散的な群の作用で不変な関数であ
る,ということができます.
(複素)上半平面というのは,虚部が正であるような複素数の
全体
H := {τ ∈ C | =(τ ) > 0}
のことです.上半平面の記号はドイツ字の H や H などいくつか流儀がありますが,ここで
は筆記体の H を使うことにしましょう.なぜ複素平面を半分だけ切り取ったような変な領域
を定義域にとるのか? というのはもっともな疑問だと思いますが,関数論を学ぶと自然な
理由が分かる,とだけ書いておくに留めます.
ここで最も基本的なモジュラー関数の定義を書いてみましょう.SL2 (Z) で整数成分の 2 × 2
行列で行列式が 1 であるもの全体を表します:

SL2 (Z) := {( ac db ) | a, b, c, d ∈ Z, ad − bc = 1} .
これは,一次分数変換

aτ + b
cτ + d
によって上半平面 H に作用しています.このとき,H 上の複素数値有理型関数 f が(SL2 (Z)
に関する)モジュラー関数であるというのは,
(
)
aτ + b
= f (τ )
(2)
f
cτ + d
τ 7→

がすべての SL2 (Z) の元 ( ac db ) に対して成り立つことをいいます.より正確には「無限遠」で
の振る舞いについての規定が必要ですが,ここでは省略します.大事なことは上記の不変性
です.
実は上半平面には実数成分で行列式が 1 の行列群 SL2 (R) が変換群として作用していて,そ
の中の離散的な部分群 SL2 (Z) によって不変な関数がモジュラー関数,という訳です.似て
はいますが,三角関数の場合の R, 楕円関数の場合の C は定義域でもあり,変換群でもあっ
たのが,ここでは少し様子が違っています(実際は上半平面は SL2 (R) のある商空間と同一
視出来て,そこまで異なるわけではありません).
さきに楕円関数 ℘(z) の 2 つの周期 w1 と w2 が出てきました. ℘(z) は,w1 と w2 を取るご
とに決まると書きましたが,定義 (1) から分かるように,実際は w1 と w2 で Z 上生成される

2

格子 L にのみ依存します. このとき L の生成元の取り方,とくに順序を考えた取り方の自
由度の記述に行列群 SL2 (Z) が自然に現れ,また,例えば sin x の代わりに sin(2πx) を考えて
も本質的に違いはない(このとき周期は 1 になる),というのと同様の意味で,℘(z) の代わ
りに ℘(w1 z) を考えてもよく,このとき周期は 1 と比 w2 /w1 になる,そしてその比は上半平
面 H に入るとして一般性を失わない,ということから,上半平面や,そこへの SL2 (Z) の一
次分数変換による作用(生成元の取り替えに対応)が自然に現れます.歴史的には,このよ
うにして,楕円関数の話からモジュラー形式やモジュラー関数が登場しました.あとで出て
くるアイゼンシュタイン級数や j-関数がその初期の例です.
モジュラー形式の定義をまだしておりませんでした. それは,不変性 (2) の代わりに,
(
)
aτ + b
f
= (cτ + d)k f (τ )
(3)
cτ + d
という変換規則を満たす正則関数として定義されます.ここで k はある定まった定数で,
「重
さ」と呼ばれる量です.通常は整数を考えますが,半整数や,ときに一般の有理数の重さを
考えたりもします.また行列 ( ac db ) がすべての SL2 (Z) の元を動くかわりに,ある部分群 Γ に
制限して考えることがあります.そうすると,条件が緩められることになるので,一般には
より多くの関数が条件を満たすことになり,対象が豊かになります.正確にはもう少し条件
がつきますが,これらの関数を「Γ に関する重さ k のモジュラー形式」と呼びます.正則関
数だとしましたが,有理型であればよいとし,正則なものを特に正則モジュラー形式と呼ん
で区別することもあります.数論的に面白いモジュラー形式は多くは部分群に関する変換則
だけを満たすものとして現れます.この変換則の意味は説明しませんが,例えば (2) を満た
す関数の微分は k = 2 の型の変換則を満たします.

2

フーリエ展開

モジュラー形式の変換則 (3) の特別な場合として,( ac db ) = ( 10 11 ) ∈ SL2 (Z) をとって得ら
れる
f (τ + 1) = f (τ )
が,k の値によらず,成り立ちます.すなわちモジュラー形式は周期 1 を持ちます.従って,
正則関数であることと併せて,f (τ ) は q = e2πiτ によるフーリエ展開

f (τ ) =




an q n

n=0

を持つことが分かります.和を n = 0 から始めているのは,この展開が負べきの項を持たな
いこと,をモジュラー形式の定義として要請するからです.必ずしも ( 01 11 ) を含まないよう
な部分群に関するモジュラー形式を考えることもありますが,そのときも多くの場合ある自
然数 N について ( 10 N1 ) を含んでいて,そこから qN = e2πiτ /N による展開を考えることが出
来ます.
さて,
「1変数保型形式の数論」の典型例としては,このフーリエ係数に数論的に面白い量
が現れ,モジュラー形式を調べること,あるいは異なるモジュラー形式の間に関係をつける

3

こと,などにより,その面白い量についての知見が得られる,というからくりになっている
ものが,まず挙げられましょう.古典的によく知られた例を文献 [4, 5] から取ってみましょう.

3

例 1: アイゼンシュタイン級数

まず,アイゼンシュタイン級数というものがあります.これは,SL2 (Z) の場合は,楕円関
数 ℘(z) のテイラー展開を計算すると出てくるもので,無限級数

Gk (τ ) =

1
2


m,n∈Z
(m,n)̸=(0,0)

1
(mτ + n)k

で定義されます.k は 4 以上の偶数とします.これが重さになります.このことは定義から
簡単にわかります.これの定数倍である

Gk (τ ) =

(k − 1)!
Gk (τ )
(2πi)k

を考えると,そのフーリエ展開が

Bk ∑
σk−1 (n) q n
+
Gk (τ ) = −
2k n=1


で与えられます.Bk はベルヌーイ数で,x/(1 − e−x ) の展開係数として定義される有理数,

∑ xk
x
=
Bk ,
1 − e−x
k!
k=0


また σk−1 (n) は n の正の約数の k − 1 乗の和です. いずれも整数論にとって重要な量と言っ
てよいでしょう.それがモジュラー形式のフーリエ係数として現れているわけです.定数項
はリーマンゼータ関数を使って ζ(1 − k)/2 と書くことも出来ます.この展開の計算はさほど
難しいものではなく,文献 [4, 5] にも,よく知られた cot x の部分分数分解式から出発して,
半ページくらいで計算されています.
さて,SL2 (Z) に関する重さ 8 のモジュラー形式は定数倍を除いて一意的(つまりその空
間は一次元)であることが分かっています.そして,2 つのモジュラー形式を掛けると,そ
れはまたモジュラー形式になり,その重さはそれぞれの重さの和になります.よって,重さ
が 8 の 2 つのモジュラー形式 G4 (τ )2 と G8 (τ ) は定数倍の違いしかないことが結論されます.
その定数はたとえばフーリエ展開の定数項を比べれば計算できて,

G8 (τ ) = 120G4 (τ )2
という等式が成り立つことが分かります.この両辺のフーリエ係数を比べることで,約数和
の間の等式
n−1

σ7 (n) = σ3 (n) + 120
σ3 (m)σ3 (n − m)
m=1

4

を得ることが出来ます. 私は試みたことがないのですが,モジュラー形式を用いないでこの
等式を導くのは結構骨が折れるのではないでしょうか.同様に,SL2 (Z) に関する重さ 10, 14
のモジュラー形式もそれぞれ 1 次元分しかないことが分かっており,約数和に関する似た等
式を導くことが出来ます.

4

例 2: テータ級数

次に,ヤコビの研究に現れたモジュラー形式にテータ級数というものがあります.その最
も簡単なものはフーリエ展開の形で

θ(τ ) =




q

n2

=1+2

n=−∞




qn

2

n=1

で与えられます.これは SL2 (Z) のある部分群に関する,重さ 1/2 のモジュラー形式になっ
ています.重さ k が半整数になると,(3) の (cτ + d)k の意味からして問題になってきますが,
例えば θ(τ )4 を考えると,その厄介はなくなり,これは Γ0 (4) と書かれる SL2 (Z) の部分群に
関する重さ 2 のモジュラー形式となります.そしてこのようなモジュラー形式の全体がやは
り一次元であることが分かるので,そのような群,重さに関するアイゼンシュタイン級数を
考えることで,等式
∞ ∑

(
)
4
θ(τ ) = 1 + 8
d qn
(4)
n=1

d|n
4∤d

を得ることが出来ます.約数をわたる何かしらの和,が出てくるのがアイゼンシュタイン級
数のフーリエ展開の特徴です.今,r4 (n) で,n を 4 つの平方数の和で書き表す表現の個数を
表すとします.ただし順序や符号も考えに入れ,02 も許します.

r4 (n) = ♯{(a, b, c, d) ∈ Z4 | a2 + b2 + c2 + d2 = n}.
この r4 (n) は θ(τ )4 のフーリエ展開係数に他なりません:
4

θ(τ ) =




r4 (n) q n .

n=0

これと上の等式 (4) から,自然数を平方数の 4 乗和で表す方法の数に関する公式

r4 (n) = 8
d (n ≥ 1)
d|n
4∤d

が得られました.特に,右辺はどんな n に対しても必ず正になりますから(d = 1 が必ず和
に寄与します),任意の自然数は必ず 4 つ以下の平方数の和として書き表せる,というラグ
ランジュの定理が,より精密な形で得られたことになります.θ(τ )2 もやはり重さ 1 のアイ
ゼンシュタイン級数による表示を持って,そのフーリエ係数の比較から,自然数を 2 つの平
方数の和として書く方法の数についての命題が得られます. 詳しくは文献 [5] に譲ります.

5

5

例 3: デデキントのエータ関数とそのべき

重さ 1/2 のモジュラー形式の別の例として,デデキントのエータ関数 η(τ ) というものがあ
ります.これは無限積


1/24
η(τ ) = q
(1 − q n )
n=1

で定義されます.q = e2πiτ です.これの(因子 q 1/24 を取った)逆数は,分割数の母関数と
なります.


q 1/24
=1+
p(n) q n .
η(τ )
n=1
分割数 p(n) とは,自然数 n を自然数の和として書く,書き表し方の数のことで,

4=3+1=2+2=2+1+1=1+1+1+1
なので p(4) = 5, といった具合です.オイラーが最初に研究したのだと思いますが,ラマヌ
ジャン(とハーディー)による研究も有名です.本誌の 2020 年 8 月号がラマヌジャンの特集
になっていて,分割数についての鈴木雄太さんの記事があります.η(τ ) 自身のフーリエ展開
もオイラーが求めており,


2
χ12 (n) q n /24 ,
η(τ ) =
n=1

ここに χ12 (n) は 0 または ±1 を値としてとる自然数上の関数で,n を 12 で割った余りにのみ
依存します.あえて具体的な値を書きませんので,興味のある方は自分で計算してみて下さ
い.文献 [5] に答えが載っています.
η(τ )3 のフーリエ展開はヤコビが求めています.


2
(−1)n (2n + 1) q (2n+1) /8 .
η(τ ) =
3

n=0

これも大変規則的です.
ラマヌジャンは η(τ ) の 24 乗,すなわち
24

∆(τ ) = η(τ )

=q




(1 − q n )24

n=1

を考えました.これは SL2 (Z) に関する重さ 12 のモジュラー形式になっています.フーリエ
展開の定数項がない,
「尖点形式」というものになっており,非常に重要で基本的なモジュ
ラー形式です. そのフーリエ展開は

∆(τ ) = q − 24q 2 + 252q 3 − 1472q 4 + 4830q 5 − · · ·
で,一見規則らしいものは見えません.もう一つ先の q 6 の係数は −6048 なのですが,何か
お分かりになる方はおられるでしょうか.もしこれが,q 2 の係数 −24 と q 3 の係数 252 の積
だと見抜ける人がおられたら,余程注意深く,計算の達者な人ですね.ラマヌジャンはその

6

超人的な計算力と洞察力を持って,この係数に潜む一般的な規則をいくつか見つけ出しまし
た.どういう規則であるかは文献に譲るとしますが,彼の発見はその後の整数論を大いに潤
し,現代へとつながっています.また彼は,∆(τ ) の n 番目のフーリエ係数を τ (n) と書くと
き,合同式
τ (n) ≡ σ11 (n) (mod 691)
を発見,証明しています.ここに現れている数 11 は,∆(τ ) の重さが 12 であることに由来す
る 12 − 1 であり,691 は 12 番目のベルヌーイ数 B12 の分子を割る素数で,それぞれ意味が
あって登場しています.ラマヌジャンが残したこの合同式の意味を深く深く掘り下げること
が,モジュラー形式とガロア表現の関係へとつながり,有名な志村・谷山予想,フェルマー
予想の解決につながったと言うことも出来るでしょう.

6

例 4: 楕円曲線

志村・谷山予想というのは,一言で述べると,
「有理数体上の楕円曲線はモジュラーであろ
う」というものですが,これを大雑把に説明してみます.有理数体上の楕円曲線とは,a, b
を整数として,方程式
Y 2 = X 3 + aX + b
の形で与えられる曲線のこと,と思っていただいて構いません.これに対し,素数 p を取っ
て,合同式
y 2 ≡ x3 + ax + b (mod p)
を考え,その解 (x, y) ∈ (Z/pZ)2 の個数 Np を勘定し,

ap = p − Np
とおきます.こうして素数ごとに決まる ap をもとに無限積(いわゆるオイラー積)



1

p

1 − ap p−s + p1−2s

を考えます.積は全素数をわたります.実は有限個の素数 p については修正が必要ですが,
とりあえず大雑把な話ですので無視します.この無限積は,複素数 s が適当な領域にあると
き,絶対収束します.そしてこれをディリクレ級数の形



1

p

1 − ap p−s + p1−2s

=



an
n=1

ns

(5)

に書き換えます.係数 an は,n が素数 p のときは最初の ap に等しくなります.さて,志村・
谷山予想というのは,この an をもとに作った無限級数



an q n

n=1

7

が,あるモジュラー形式のフーリエ展開級数になっているだろう,というものです.素朴な
合同式の数勘定からどうして「高級周期関数」モジュラー形式が出てくるのか,神秘的です.
ディリクレ級数 (5) は,与えられた楕円曲線のハッセ・ヴェイユゼータ関数と呼ばれる対象
で,バーチ・スウィンナートン-ダイヤー予想を始め,未だ解明されない の詰まった魅力的
な対象です.

7

楕円モジュラー関数 j(τ )

最後に,重さが 0 のモジュラー関数,その中でもとりわけ基本的な,j-関数と呼ばれる関
数についての話をいたしましょう.j-関数とか j-不変量と呼ばれる関数 j(τ ) は

E4 (τ )3
j(τ ) =
∆(τ )
と表されます.ここで E4 (τ ) は先のアイゼンシュタイン級数 G4 (τ ) を 240 倍してフーリエ展
開が 1 から始まるようにしたものです:

E4 (τ ) = 240G4 (τ ) = 1 + 240q + 2160q 2 + · · · . ...

参考文献

[1] D. A. Cox, Primes of the form x2 + ny 2 . Fermat, class field theory, and complex multiplication. Second edition. Pure and Applied Mathematics (Hoboken). John Wiley & Sons,

Inc., 2013. xviii+356 pp.

¨ Imamoglu, and A. T´oth, Cycle integrals of the j-function and mock modular

[2] W. Duke, O.

forms, Ann. of Math. (2) 173 (2011), no. 2, 947–981.

[3] 金 子 昌 信 ,楕 円 モ ジュラ ー 関 数 j(τ ) の フ ー リ エ 係 数 ,Rokko

Lectures

in

Mathematics,

10,神 戸 大 学 理 学 部 数 学 教 室 ,2001 年 9 月 ,

http://www.math.kobe-u.ac.jp/publications/rlm10.pdf

[4] J. -P. Serre, Cours d’arithm´etique, (French) Deuxi`eme ´edition revue et corrig´ee, Le

Math´ematicien, No. 2. Presses Universitaires de France, Paris, 1977. 188 pp. 英訳 A

course in arithmetic, Graduate Texts in Mathematics, No. 7. Springer-Verlag, New YorkHeidelberg, 1973. viii+115 pp. 邦訳 「数論講義」(彌永健一訳),岩波書店.

[5] D. Zagier, Elliptic modular forms and their applications. The 1-2-3 of modular forms,

1–103, Universitext, Springer, Berlin, 2008.

10

...

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