職場移動における看護師のエンプロイアビリティ : 雇用側が認識する構成要素と各要素の相対的重要性

概要

［課程－２］
審査の結果の要旨
氏名 磯部 環
本研究は、看護師が自身のエンプロイアビリティを意識し、エンプロイアビリティを高
めるために何をすべきか考えるための手がかりを得ることを目指し、職場移動における看
護師のエンプロイアビリティを明らかにすることを目的としたものである。この目的を達
成するために、医療介護施設が既卒看護師を採用する際に重視しているエンプロイアビリ
ティの構成要素を質的内容分析によって明らかにした。次いで、これらの構成要素を元に
コンジョイント分析を実施し、医療介護施設が既卒看護師採用時に重視しているエンプロ
イアビリティの構成要素の相対的な重要性を施設種別に検証し、以下の結果を得た。
1.

医療介護施設の看護師採用担当者、および看護師向けの職業紹介事業者を対象とした
インタビュー調査から、職場移動における看護師のエンプロイアビリティは「組織が
提供しようとしている看護に共に取り組める」ことを中心に構成されており、
「組織
への定着が期待できる」
「実践能力が期待できる」
「課題に前向きに向き合う」
「組織
で求められる看護を理解する」
「患者（利用者）
・家族、職員と良好な関係を築ける」
「組織へのコミットメントが期待できる」
「看護へのモチベーションがある」の 7 つ
の要素から構成されていることが示された。

2.

全国の医療介護施設の看護師採用担当者を対象としたインターネット調査から、職場
移動における看護師のエンプロイアビリティを構成する各要素の平均相対重要度を施
設種別に推計した結果、病院では病床規模によらず共通した傾向が見られ、
「過去の
転職理由・目的」
「実践能力」
「周囲との関係構築」
「看護へのモチベーション」が高
い値を示した。介護施設では「実践能力」がより重視されていること、訪問看護事業
所では「看護へのモチベーション」がより重視されているという特徴が明らかにされ
た。診療所はサンプルサイズが少なく、適切な推計モデルが得られなかった。
以上、本論文は、職場移動における看護師のエンプロイアビリティの構成要素と施設種

別にその重み付けの違いを明らかにした。それによって、看護師が職場移動の際にどのよ
うな要素を以って採否判定がなされるのかという情報を提供し、看護師が自身のエンプロ
イアビリティを意識し高めるための方策の解明に貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士（ 保健学 ）の学位請求論文として合格と認められる。