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大学・研究所にある論文を検索できる 「療養病床における終末期高齢者への看護実践の中の不確かさとその要因の探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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療養病床における終末期高齢者への看護実践の中の不確かさとその要因の探索

大達, 亮 大阪大学

2021.03.24

概要

【背景】急速な高齢化の進展によって,end-of-life careに対するニーズは高まっており,死をどこで迎えるかということは国や地域によらず重要な関心となっている.本邦において,療養病棟はこの死を迎える場所として一定の役割を担っている.しかし療養病棟においては技術的な資源の不足や看護師の精神的負担など複数の課題があることが推察された.また患者の複雑かつ多様な臨床像や長期的な入院,少ない人員配置という特徴をもつ療養病棟のend-of-life careについてはこれまで着目されてこなかった.本研究ではこの療養病棟においてend-of-life careを担う看護師を主たる対象とし,第1段階として療養病棟におけるend-of-life careの経験の記述を目指した(研究1).さらに研究1によって生じた「患者にとってよい結果をもたらしたはずの看護実践を看護師が肯定的に評価できないのはなぜか」という研究疑問に応答するため,語りの再分析を行い,その要因について検討した.

【研究1】療養病棟の看護師の高齢者に対するend-of-life careの経験:療養病棟においてend-of-lifeの実践経験をもつ19名の看護師を対象としたインタビュー調査を行った.分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.分析の結果,療養病床におけるend-of-life careのプロセス全てに関連するコアカテゴリーとして「不確かなその人らしさを手がかりに生活と生存の折り合いを探る」が生成された.また患者の死後,自らの実践に対する看護師の評価は不安定であり,肯定的に評価されにくい「実践への不確かな評価」のカテゴリーが生成された.本研究により,療養病棟のend-of-life careにおいて看護師は患者のその人らしさや実践に対する評価基準など複数の不確かさを抱えていることが明らかになった.

【研究2】療養病棟における終末期高齢者への看護実践に対する不確かな評価の成り立ちの探索:研究1において確認されたカテゴリーである「実践への不確かな評価」に着目し,看護師が自らの看護実践を肯定的な評価を留保する語りの成り立ちについての検討を目的とした.研究1によって得られた3名の看護師の語りを再分析する質的事例研究を行った.分析はテーマ的ナラティブ分析を参照した.分析の結果,X氏は,肯定的な評価を受け取ることを自ら規制し,Y氏は部分的に肯定しつつも評価へは疑問の余地を残していた.その背景には,普段の病棟の価値観と両氏の実践によって立ち表れた新規の価値観の対立があり,その評価の様相を複雑にしていた.Y氏は行為の主体を,Y氏個人から「みんな」という一人称複数形に転換することで部分的に肯定的な評価をすることを可能にしていた.Z氏は,肯定的な感覚をもとに実践を評価し,病院内外のライフイベントや活動の経験などを通して複数の価値観を受容し,これを評価に転用することで肯定的な評価を可能にしていた.また3名は共通して自らの実践によって,望ましい結果が生じたことが語られた一方で,X氏は実践のプロセス,Y氏は評価基準への疑問をもっており,これが評価に影響した可能性が考えられた.他方,肯定的な評価を留保することは,今後の看護実践への強い動機づけとして機能していた .

【まとめ】本研究によって,療養病棟の看護師は複数の不確かさを抱えながら実践を行い,実践後もその不確かさを実践の評価という点で引き継いでいることが示唆された.不確かさに対応するためには,「みんな」のような一人称複数形の協働的な主体を獲得すること,複眼的な視点や価値観の受容が必要である.これには時間的な要因も考慮しなくてはならないため,長期的かつ継続的な教育方策の検討やnegative capabilityへの着目が求められる.

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