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大学・研究所にある論文を検索できる 「Accuracy of Computer Navigation–Assisted Arthroscopic Osteochondroplasty for Cam-Type Femoroacetabular Impingement Using the Model-to-Image Registration Method」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Accuracy of Computer Navigation–Assisted Arthroscopic Osteochondroplasty for Cam-Type Femoroacetabular Impingement Using the Model-to-Image Registration Method

安部 晃生 横浜市立大学

2022.09.21

概要

【目的】
変形性股関節症の原因として,大腿骨寛骨臼インピジメント(femoroacetabular impingement:FAI)が近年注目されている.FAI うち大腿骨頚部移行部に膨隆が原因となる cam 型では,関節鏡を用いて cam 部分を切除する股関節鏡視下骨軟骨形成術があり,正確な骨軟骨形成術を行うことが重要である.しかし,股関節鏡の限られた視野で行うため,時に困難を伴う.そこで,股関節鏡視下骨軟骨形成術の精度を向上するために,ナビゲーションを用いたコンピューター支援手術が用いられているが,その精度を詳細に評価した研究はほとんど存在していない.そこで,cam 型 FAI に対するコンピューターナビゲーション支援股関節鏡視下骨軟骨形成術の精度を,CT(Computed Tomography)による 3 次元再構築技術を用いて,モデル-画像レジストレーション法により,詳細に検討することを目的とした.

【方法】
本研究は公立大学法人横浜市立大学臨床研究審査委員会において審査され承認されている.(承認番号:一般 第 30-106 号)対象症例は,cam 型 FAI に対してナビゲーション支援股関節鏡視下骨軟骨形成術を受けた 20 名の患者(男性 14 名,女性 6 名)が対象となった.手術手技は Kobayashi et al.(2018)の方法を用いた.各患者の CT データから術前の大腿骨の 3D モデルを構築し,コンピューター内で仮想の cam 病変切除を行った計画モデルを作成した.術後の CT データから術後の大腿骨モデルを再構築した.各患者の 3 つのモデルは,モデル-画像レジストレーション法を用いて術後 CT 画像上に重なるように配置された.そして,各モデルの骨切除部位の輪郭を計測して比較した.計画した骨切除量と実際の骨切除量の差を測定するため,大腿骨頚部軸に直交する平面を再構築し,各大腿骨モデルの断面画像を大腿骨頭半径の 1/4 間隔で 4 枚作成してその平面上で測定を行った.測定はすべて大腿骨頚部軸を中心に時計の文字盤のように 30 分間隔で設定した線を基準とした.術後モデルの頚部軸から輪郭線までの距離から計画モデルの頚部軸から輪郭線までの距離を除したものを切除誤差とした.切除誤差が-3mm より小さい場合を過剰切除,3mm よりも大きい場合を切除不足とした.

【結果】
cam 切除部位は全て大腿骨頚部の前方半分で行われていた.そのため,1 症例あたり 96 点のうち,前方半分(48 点)のみを解析の対象とした.全計測点(960 点/20例)のうち 876 点(91.3%)において,切除誤差は 3mm 以内であった.過剰切除は 35 点(3.6%),切除不足は 49 点(5.1%)で観察された.計画モデルからの最大誤差は6.3mm の過剰切除,-7.1mm の切除不足であった.切除誤差の分布では 4 つの平面間での違いはなかったが,頚部前外側の遠位側で切除不足が増加する傾向があった.また,術後モデルの上方 9 時~3 時のα角は全例で 55°以下であった.手術 2 年後の臨床転帰の評価では,股関節機能スコアは有意に改善していた.

【考察】
本研究は,cam 型 FAI に対するコンピューターナビゲーション支援股関節鏡視 下骨軟骨形成術の結果を 3 次元的に詳細に検討した最初の研究である.本研究の結果から,ナビゲーション支援股関節鏡視下骨軟骨形成術の精度は高いが,8.7%の計測点においては 3mm 以上の誤差があることがわかった.特に,大腿骨頚部の前外側部分では過剰切除よ りも切除不足が多いことがわかった.そのため,切除不足による cam 変形の残存が,過剰 切除による骨折リスクよりも多くなることが示唆された.また,従来はα角が cam 型 FAI に対する骨軟骨形成術の精度の指標とされてきたが,α角だけでは切除部位と切除誤差の 詳細を知ることは困難であった.本研究では切除領域を詳細に 3 次元評価するために,モ デル-画像レジストレーション法を用い,CT 画像から再構成した断面を用いることで,α 角だけでは知ることが困難であった切除誤差の詳細を知ることができた.

過去の研究では,ナビゲーション支援股関節鏡視下骨軟骨形成術の精度を人工骨モデルと死体骨を使用した模擬手術で評価されており,Almoussa et al.(2011)によると人工骨モデルではナビゲーションが外科医の経験と関係なく骨軟骨形成術のパフォーマンスを向上すると報告され,Audenaert et al.(2012)によると死体骨を使用した研究では切除誤差は平均 1mm 過剰切除されているという結果であった.本研究では,死体骨を使用した研究と対照的に切除不足の方が多く認められた.これは,術者の意識が関与した可能性がある.具体的には,死体骨では計画された切除領域を確実に切除することを意識するが,実際の手術では過剰切除による骨折リスクを考慮するという点や,関節包の付着により手技の困難さが向上するという点である.特に,大腿骨の遠位側で切除不足が多い傾向があり,これは遠位側の方が関節包の付着部に近くなり手技が困難となっている可能性が示唆された.
ナビゲーションを使用することで大腿骨頚部の切除誤差を減らすことが可能である一方,一部の手術ではナビゲーションを使用しても不完全な切除となってしまうことがあり,これは手術自体の技術的な問題が原因となっている可能性が高い.
しかしながら,術後 2 年の臨床転帰は良好で,臨床転帰と残存した cam 変形の関係は不明であった.残存した cam 変形と患者の機能予後については長期的な評価が必要であると考える.

この論文で使われている画像

参考文献

Almoussa, S. et al. (2011) ‘Computer-assisted correction of cam-type femoroacetabular impingement: a Sawbones study’, J Bone Joint Surg Am. 2011/05/13, 93 Suppl 2, pp. 70–75. doi: 10.2106/jbjs.J.01706.

Audenaert, E. et al. (2012) ‘Imageless versus image-based registration in navigated arthroscopy of the hip: a cadaver-based assessment’, J Bone Joint Surg Br. 2012/04/25, 94(5), pp. 624–629. doi: 10.1302/0301-620x.94b5.28627.

Kobayashi, N. et al. (2018) ‘Computer-Assisted Hip Arthroscopic Surgery for Femoroacetabular Impingement’, Arthrosc Tech. 2018/06/06, 7(4), pp. e397–e403. doi: 10.1016/j.eats.2017.10.013.

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